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14.巫覡の磐座編
68風発の誘い水 ①
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「……リーゼ」
雷奈が声を震わせた。その後ろで、氷架璃と芽華実も絶句している。
「本当に……これで行くとか」
「そう言ってるじゃない。もうみんな行っちゃってるんだから、私達も早く行くわよ」
彼女はそういうと、軽やかに階段を下りきってしまった。
人間三人は顔を見合わせる。考えていることはだいたい同じだった。
(――この世界の文明が分からない……)
フィライン・エデンに渡った雷奈達が連れてこられたのは、ワープフープがある丘のふもとだった。いつも町に向かう時にも、長い階段で丘を下りていくが、そちらではない。正反対の方向に、同じように階段が設置されており、雷奈たちは初めて丘の、いわば裏側へやってきたのだった。
少し歩けば町に出る表とは違い、裏は木立に挟まれた三叉路があるのみだ。舗装されていない田舎道、といったところか。建物は見当たらない。しいて言うなら、下りてくる途中で段丘に大きな日本家屋が見えた。お屋敷といってもいい規模の家が、見間違いでなければ二軒。あとは、ふもとの三叉路を右に少し進んだところにある、今相対している「扉」くらいだ。
その扉は、建物に立てつけられたものではない。高さ二メートルほどの、石造りのドームの断面にはめ込まれているような形だった。地下防空壕の入り口のようにも見える。扉は古ぼけていて、ずっと昔からここにぽつんと鎮座してきたことがうかがえた。
「この先に、風中家が所有している車両があるから、それで行くわよ」
リーゼは、いつの間にか手にしていた鍵でその扉を開錠した。錆びた音と共に扉が開く。想像を裏切らず、扉の向こうに会ったのは部屋ではなく、地下へと続く簡素な階段のみだった。壁は人間界の地下道のように整備されてはおらず、地面の断面がそのままむき出している。
リーゼは「車両」と言ったが、フィライン・エデンには人間界における自動車のような乗り物は存在しないはずだ。何かの比喩だろうか。だが、飛壇と北部地方の間辺りに位置するという聖域までは、かなりの距離があると見える。やはり何かに乗っていくのだろう、と雷奈たちは予想していた。
扉を閉めてしまうと、外の光は一切入ってこなくなる。だが、リーゼが壁のスイッチを押すと、天井に取り付けられた電球が予想よりも明るく中を照らしてくれた。
それでも念のため、足元に注意を向けながら地下へと降りていく。そして、階段の中間ほどまで下り、向かう先に目をやる余裕が出てきた時――それが見えて思わず雷奈が発した言葉こそ、確認とも疑念とも非難ともつかぬその一言だった。
「本当に……これで行くとか」
氷架璃と芽華実も同感だった。目を、というよりリーゼの正気を疑った。
階段を下りた先に見えたもの。
それは、奥へと続く三本の線路。数メートル先から奥は電球がないからか暗く、線路の先は見えない。
そして、中央の線路の上、手前側の端にぽつんと置かれた――一台のトロッコだった。
観光地で見るようなトロッコ列車ではない。土砂を運ぶのに使うような、ただの蓋のない四角い箱だ。しかも、木製。大きさにして、人間が三、四人乗り込める程度ではあるが、そもそも乗り物の用途として設計されたものには見えない。
けれど、リーゼはさも当然のように答える。
「そう言ってるじゃない。もうみんな行っちゃってるんだから、早く行くわよ」
雷奈たちは、えも言えぬ表情で顔を見合わせた。
フィライン・エデンは人間界の技術や文化を取り入れて発展してきた。そのおかげで、例えばパソコンはある。今は亡きチエアリ検出センサーなどの精密機器も開発可能だ。見たことはないが、時空震を計測するスパコンらしき機械まで存在するらしい。
なのに、長距離移動用車両が――これか。
「聖域はね、地図にない場所なんだ」
呆気にとられる雷奈達の後ろで、アワの苦笑交じりの声がする。
「だから、実はボクも、お母さんさえ、地上からの詳しい道のりは知らない。流清家も同じトロッコをもっていて、ボク達もいつもそれに乗っていくから、知らなくても行けちゃうんだよ」
マジか、という顔で振り返る三人。けれど、逆にいえば――アワはいつもこれに乗って行って帰ってきているのである。そう考えると、そこはかとなく原始的なこの乗り物でも――厳密には乗り物ですらない物体でも――少なくとも無理難題ではないことはわかる。
雷奈達も階段を降りきると、トロッコに近づいてまじまじと見てみる。本当に、ただの箱に車輪が生えているだけだ。エンジンも何もついていない。芽華実がおずおずとリーゼに尋ねる。
「これ……動力源はどうなってるの? ここから結構走るんでしょう?」
「三十分くらいは走るわね。走り始めだけ風術や水術の推進力を使うけど、あとは電力かしら」
さあ乗って、と促され、雷奈たちはおっかなびっくりトロッコに乗り込んでいく。
電力。聞きなじみのあるエネルギーでほっとするが、次の瞬間には疑問がわく。バッテリーもモーターも何もないトロッコが、どうやって電力で走るのだろうか。
座席も何もない箱の中にしゃがみ込み、頭だけ乗り出して、きょろきょろとその外壁を見回す三人。やはりただの木の箱にしか見えない。
「ああ、電力で動くのは、トロッコの方じゃなくて、レールの方よ」
雷奈たちの心中を察したか、そう言ったリーゼは、いつのまにか猫の姿になっていた。軽やかにジャンプし、トロッコの後方にすぽんと収まる。主体姿のリーゼは、フーやウィンディとよく似た白猫で、耳からはやはりピンクのイヤリングが垂れ下がっている。
「レールが動くと?」
振り返って訪ねた雷奈に答えたのは、同じく主体化してリーゼの隣に収まったアワだ。
「……上りの時だけね」
リーゼと同じく進行方向とは反対、つまり降りてきた階段側を向いて、伸びあがってトロッコのふちに手をかけた姿勢のアワ。なぜか、その背中の毛は少しだけ逆立っていた。
ん? と雷奈は思う。
上りの時だけ、レールが動く。どこかで見たような構造だ。
それに、上り以外の時はどうやって進むのか。
そこまで考えて――見つけた答えに、さあっと青ざめる。
「さ、行くわよ。しっかりつかまって」
「ちょ、待っ……リーゼ!」
雷奈が止めようとする。だが、その時にはリーゼは手元に風の塊を生み出していた。それを発射することによる反発力を初速とするのだろう。
四の五の言っている暇はない。雷奈は慌ててトロッコのふちをつかんだ。雷奈と背中合わせになるように並んだ氷架璃と芽華実も、同じ結論に至り、こわばった顔でふちに手をかけ、しがみつく。
「吹き荒べ、烈颯」
透明感のある、真っすぐな風のような声が、唱えた。
刹那、大きく空気が唸ったかと思うと、風術の余波が頬を叩いた。同時、トロッコが見えざる手に押されたように前進する。
レールの上を真っすぐに、ゆっくりと進んでいく。最後の電球の下を通り過ぎると、その先は一気に暗くなり、進行方向のレールは見えなくなる。
――ただし、先のレールが見えないのは、暗くなったためではない。
上りの時だけ電気エネルギーを使う乗り物は、人間界にもある。その乗り物は、上り以外の時は何を動力源にするのかといえば――位置エネルギーである。
その名を、ジェットコースターという。
――線路が、視界から消えた。
「わああああああああっ!?」
「ギャァァァァァァ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
三者三様の声を尾のように引いて、三人と二匹を乗せたトロッコは、垂直にも近い下り坂を猛スピードで駆け下りていった。
感覚的には「落下した」と言っても差し支えない速度と角度。あっという間に下りるところまで下りる。だが、勾配が緩んでもなお、トロッコは恐ろしい速度で進み続けた。
ガタガタガタガタ!
バリバリバリバリ!
鼓膜を突き破るような凄まじい音が、本能的な不安だけでなくもっと実質的な恐怖で殴りかかってくる。
「オイィィィ! すげえ音してんだけど、これぶっ壊れたりしないよな!?」
「大げさね。人間界の『ジェットコースター』とかいうのと同じでしょ。それはそう簡単に壊れるものなのかしら?」
「ジェットコースターがこんなボロい木製の箱じゃあるかボケェェェ!」
氷架璃の悪態さえ、次の瞬間には後方の彼方。天井の低い地下トンネルを、相変わらず危なっかしい音とぐらつきで爆走し続ける。
入口の電球ほどの輝度はないが、壁に取り付けられた明かりがかろうじて視界を担保していた。見上げた天井も、左右の壁も、地中むき出しの粗削りだ。崩落したらまず助からないだろう中を、怖じもせずトロッコはひた走る。
最初の崖のような下り坂で、相当な位置エネルギーを運動エネルギーに変えたらしい。小さな上り坂があっても、トロッコはノンストップで乗り越えていく。小さく上って、下って、上って、下って。下にどけられない岩石でもあったのだろうか、なぜか波打つように上りと下りを繰り返す路線に、早くも目が回りそうになっていた。
かと思えば、ぐんっと大きなカーブ。遠心力で車体が傾き、雷奈たちの肌に冷や汗が走る。
「リーゼ! 傾いとる! 傾いとるって!」
「重心を! 誰かこっち側に寄れ! バカヤロー、主体のアワじゃ軽すぎる!」
「っていうか、リーゼ、あれ!? なんかレール途中で破損しとらん!?」
「こんなスピードで脱線なんて想像したくないんだけど……!?」
「うおおお火花出たぞ!? 大丈夫かこれ!?」
「ちょ、ふ、伏せて! 天井から木の根が!」
「リーゼ! 風中家の地下道の整備どうなってるんだい!?」
「また業者に発注しなきゃねぇ……」
――などと騒ぎ立てながら走り続けること、何分だろうか。雷奈達の体感ではもう十分な時間走り続けたように思えるが、まだまだ出口は見えてこない。
言わずと知れた、某有名冒険洋画を再現しているような状況だ。あれは見ているから楽しめるのであって、いざ体験してみるとたまったものではない。アミューズメント好きでジェットコースター耐性のある氷架璃でさえ、この心もとない木箱での疾風怒濤のアクションは絶叫に値した。
しばらく走り続けるうちに、さすがにトロッコの速度が落ちてきた。そのころには、雷奈達は恐怖と叫んだ疲労でぜえぜえ喘いでいた。
ふいに、レールからカチッと何かを踏んだような音がした。モーター音が響きだす。トロッコの頭が持ち上がり、そのままぐんぐんと一定の速度で進みだした。いつの間にか目の前に迫っていた上り坂を、動くレールに運ばれて上っているのだ。リーゼの言っていた電力による仕掛けだろう。
なお、この状況で「上り始める」ということは、「位置エネルギーを蓄える」ことと同義であるわけで。
「あと何回かあるわよ」
リーゼがそう言うと同時に頂点に達したトロッコの次の挙動は、言うまでもない。
「うきゃぁぁぁぁっ!?」
「ノォォォォォォ!」
「いやぁぁぁぁぁっ!」
こうして、雷奈たちは引き続き喉を酷使し続けた。
風に等しい速度での猪突猛進。
上下左右の激しい揺れと衝撃。
待ったなしの急カーブと、そのたびに傾く車体。
そんな過激な刺激のオンパレードにさらされ尽くして、幾ばくか。目の前にそびえたったのは、今までで一番長く高い上り坂だった。
ご多分に漏れず、車輪がカチリとスイッチを踏むと、カタカタカタ、とレールが動きだす。同時、トロッコは上へ上へといざなわれていく。その穏やかな速度に身を任せながらも、雷奈たちは気が気でなかった。
上るということは、そのぶん下るということだ。ここまででさんざん体験してきた経験則が、次の衝撃を予感させてその身を震わせる。
上って、上って、上り切って――レールは平坦な道を進み、そして止まった。
「……」
「……」
「……止まった……?」
「到着よ」
リーゼはぴょこんとレールの上に飛び降りると、再び人間の姿になった。
出発時と同じく、トロッコは線路の端で静止しており、左右を見れば、残り二本のレールにも同じようにトロッコが止まっていた。前方に目をやれば、上り階段、そして扉が見えた。よく見通せると思ったら、天井の電球も乗り場と同じくらいの明るさを放っていた。
「や……やっと着いたか……」
「な、なんで最後、上って終わったのかしら……」
「そりゃ、あれっちゃろ……帰りも同じように初速度つけるためっちゃろ……」
「……うおぉ……」
当然訪れることとなる復路の恐怖に、早くも精神を削られ、三人は憂鬱な大息を吐いた。
だが、今はそうも言っていられない。ひとまず、三人もトロッコから降りた。そのままへたりこみそうになってしまうが、リーゼがすいすいと階段を上っていってしまうので、慌ててその後を追う。アワも雷奈達側のペースでいるのを見ると、何度も来ているとはいえ、この交通手段がかなり苦手なようだ。
「さあ、ここからが本番よ」
扉に手をかけたリーゼが、振り返らずに言う。
「もっとも、まずは――この先の景色を、あなた達人間が認識できるかが問題だけどね」
そして、きしむ音を立てながら――扉を開いた。
外の光があふれ出す。冬の柔らかな陽も、薄暗闇に浸りきった目には応えた。視界を真っ白く満たす光に、雷奈たちは反射的に目をつぶった。
次にまぶたを上げた時――目の前に広がった光景に、雷奈の口からそれを端的に表す言葉が零れ落ちた。
「……森が」
「あら、見えるのね。やっぱり認識阻害の術式は二家以外のフィライン・エデンの猫に適用されるものだったってことね」
リーゼがどこか得意そうにアワを振り返る。アワはといえば、「はいはい」と軽くあしらう顔で頷いていた。
地下から出てきた雷奈たちを迎えたのは、視界いっぱいに広がる森林だった。聖域とはいえ、特に境界が引かれているようには見えない。ただ道路一つ分ほどの距離を挟んですぐに、背の高い針葉樹の群れがそびえたっていた。冬だというのに青々と葉を広げているところ見るに、常緑樹だろう。
山ではない。森は、平地に展開していた。だからこそ、一目では規模をつかむことはできず、どこまでも続く茫漠な地に感じられた。事実、右を見ても左を見ても、木々の終点が視認できなかった。
「ここが、聖森領域だよ」
雷奈たちの後ろから前に歩み出たアワが、高さ二十メートルはあろう木々を見上げて言った。
「ここからじゃ見えないけど、中央に向かって二十分くらい歩いたところで、巨大な岩石洞窟――巫覡の磐座にたどりつく。もっとも、それは直線距離を進んだ場合だ。でも、今回はそうはいかないんでしょ、リーゼ」
「ええ」
イヤリングを風に揺らして、リーゼは答える。
「他の二台のトロッコがこちら側にあった。つまり、風中家はすでに聖域入りしているわ。十中八九、家族総出でね」
雷奈たちはどこまでも奥へ続く森を見つめた。
「この中に……ウィンディや、他の家族が……」
「広い森だもの、分散して配置されているはずよ。流清家がどこから入ってきても、磐座へは通さないように。フーの禊への介入を邪魔されないように、ね」
「流清家はもう到着してんのか?」
「流清家側のトロッコを見たら一目瞭然だろうけど、まあ来てると考えるのが筋だろうね。風中家はすでに来ていることだし、それを止めるためならもう到着していないと」
アワはちらりと、左後方をうかがった。
つられて雷奈達も振り返ると、出てきた地下道とは別に、もう一つ同じような扉が離れたところに存在していた。あちらが流清家のトロッコなのだろう。
「……もしかしたら、もう衝突は始まっているのかもしれないな」
「それなら、急ぎたいところね。でも、まだ理論武装できていない私達が彼らに見つかるわけにはいかない。だから慎重に進んで、適宜迂回する必要がある。だから直線距離で行けるとは限らないのよ」
フーが夢を見ていたことの証明が出来上がっていれば、それを鉢合わせた流清家や風中家にぶつけてもよかったのだが、いかんせん難題だ。
言外に急かされた気がして、雷奈はフル回転の頭を抱えて「面白い夢見たことばメールしてきたとか……いや、ばってん履歴がなか……」などとぼやいている。
「……こんなことなら、ボクとリーゼだけで来た方がよかったかい? 神判の間が閉まっていることの確認なら、ボクたちだけでもできたでしょ」
「いいえ。それだと、神判の間を確認する動機がないでしょう。フーの無実という結論があるからこそ、神判の間の閉扉が根拠としてが浮上してくるんだから。それこそ、両家への言い訳が立たないわよ」
「あー……そっか」
アワは頭をかいた。かきながら、ちらとリーゼを見る。
リーゼが聞いたというフーの寝言の内容を素直に口にできれば、こんな回りくどいことをせずに済むのだが。緘口しなければならないとは、いったいどんな寝言だったのやら。
リーゼはそれには一切触れるつもりがないらしく、雷奈達をぐるりと見まわして言った。
「それじゃ、行きましょう。私が先頭に立つから、アワちゃんは殿に」
「了解」
「えっと、入り口はどこになるのかしら。道は……」
「道なんてないわよ。自然の杜だもの」
芽華実を遮って、リーゼがスマホを取り出し、方位磁針アプリを立ち上げた。
そして、赤い針の指す方へ、足を踏み出す。
「ただ北へ向かって進むのみ。絶対にはぐれないでね」
雷奈が声を震わせた。その後ろで、氷架璃と芽華実も絶句している。
「本当に……これで行くとか」
「そう言ってるじゃない。もうみんな行っちゃってるんだから、私達も早く行くわよ」
彼女はそういうと、軽やかに階段を下りきってしまった。
人間三人は顔を見合わせる。考えていることはだいたい同じだった。
(――この世界の文明が分からない……)
フィライン・エデンに渡った雷奈達が連れてこられたのは、ワープフープがある丘のふもとだった。いつも町に向かう時にも、長い階段で丘を下りていくが、そちらではない。正反対の方向に、同じように階段が設置されており、雷奈たちは初めて丘の、いわば裏側へやってきたのだった。
少し歩けば町に出る表とは違い、裏は木立に挟まれた三叉路があるのみだ。舗装されていない田舎道、といったところか。建物は見当たらない。しいて言うなら、下りてくる途中で段丘に大きな日本家屋が見えた。お屋敷といってもいい規模の家が、見間違いでなければ二軒。あとは、ふもとの三叉路を右に少し進んだところにある、今相対している「扉」くらいだ。
その扉は、建物に立てつけられたものではない。高さ二メートルほどの、石造りのドームの断面にはめ込まれているような形だった。地下防空壕の入り口のようにも見える。扉は古ぼけていて、ずっと昔からここにぽつんと鎮座してきたことがうかがえた。
「この先に、風中家が所有している車両があるから、それで行くわよ」
リーゼは、いつの間にか手にしていた鍵でその扉を開錠した。錆びた音と共に扉が開く。想像を裏切らず、扉の向こうに会ったのは部屋ではなく、地下へと続く簡素な階段のみだった。壁は人間界の地下道のように整備されてはおらず、地面の断面がそのままむき出している。
リーゼは「車両」と言ったが、フィライン・エデンには人間界における自動車のような乗り物は存在しないはずだ。何かの比喩だろうか。だが、飛壇と北部地方の間辺りに位置するという聖域までは、かなりの距離があると見える。やはり何かに乗っていくのだろう、と雷奈たちは予想していた。
扉を閉めてしまうと、外の光は一切入ってこなくなる。だが、リーゼが壁のスイッチを押すと、天井に取り付けられた電球が予想よりも明るく中を照らしてくれた。
それでも念のため、足元に注意を向けながら地下へと降りていく。そして、階段の中間ほどまで下り、向かう先に目をやる余裕が出てきた時――それが見えて思わず雷奈が発した言葉こそ、確認とも疑念とも非難ともつかぬその一言だった。
「本当に……これで行くとか」
氷架璃と芽華実も同感だった。目を、というよりリーゼの正気を疑った。
階段を下りた先に見えたもの。
それは、奥へと続く三本の線路。数メートル先から奥は電球がないからか暗く、線路の先は見えない。
そして、中央の線路の上、手前側の端にぽつんと置かれた――一台のトロッコだった。
観光地で見るようなトロッコ列車ではない。土砂を運ぶのに使うような、ただの蓋のない四角い箱だ。しかも、木製。大きさにして、人間が三、四人乗り込める程度ではあるが、そもそも乗り物の用途として設計されたものには見えない。
けれど、リーゼはさも当然のように答える。
「そう言ってるじゃない。もうみんな行っちゃってるんだから、早く行くわよ」
雷奈たちは、えも言えぬ表情で顔を見合わせた。
フィライン・エデンは人間界の技術や文化を取り入れて発展してきた。そのおかげで、例えばパソコンはある。今は亡きチエアリ検出センサーなどの精密機器も開発可能だ。見たことはないが、時空震を計測するスパコンらしき機械まで存在するらしい。
なのに、長距離移動用車両が――これか。
「聖域はね、地図にない場所なんだ」
呆気にとられる雷奈達の後ろで、アワの苦笑交じりの声がする。
「だから、実はボクも、お母さんさえ、地上からの詳しい道のりは知らない。流清家も同じトロッコをもっていて、ボク達もいつもそれに乗っていくから、知らなくても行けちゃうんだよ」
マジか、という顔で振り返る三人。けれど、逆にいえば――アワはいつもこれに乗って行って帰ってきているのである。そう考えると、そこはかとなく原始的なこの乗り物でも――厳密には乗り物ですらない物体でも――少なくとも無理難題ではないことはわかる。
雷奈達も階段を降りきると、トロッコに近づいてまじまじと見てみる。本当に、ただの箱に車輪が生えているだけだ。エンジンも何もついていない。芽華実がおずおずとリーゼに尋ねる。
「これ……動力源はどうなってるの? ここから結構走るんでしょう?」
「三十分くらいは走るわね。走り始めだけ風術や水術の推進力を使うけど、あとは電力かしら」
さあ乗って、と促され、雷奈たちはおっかなびっくりトロッコに乗り込んでいく。
電力。聞きなじみのあるエネルギーでほっとするが、次の瞬間には疑問がわく。バッテリーもモーターも何もないトロッコが、どうやって電力で走るのだろうか。
座席も何もない箱の中にしゃがみ込み、頭だけ乗り出して、きょろきょろとその外壁を見回す三人。やはりただの木の箱にしか見えない。
「ああ、電力で動くのは、トロッコの方じゃなくて、レールの方よ」
雷奈たちの心中を察したか、そう言ったリーゼは、いつのまにか猫の姿になっていた。軽やかにジャンプし、トロッコの後方にすぽんと収まる。主体姿のリーゼは、フーやウィンディとよく似た白猫で、耳からはやはりピンクのイヤリングが垂れ下がっている。
「レールが動くと?」
振り返って訪ねた雷奈に答えたのは、同じく主体化してリーゼの隣に収まったアワだ。
「……上りの時だけね」
リーゼと同じく進行方向とは反対、つまり降りてきた階段側を向いて、伸びあがってトロッコのふちに手をかけた姿勢のアワ。なぜか、その背中の毛は少しだけ逆立っていた。
ん? と雷奈は思う。
上りの時だけ、レールが動く。どこかで見たような構造だ。
それに、上り以外の時はどうやって進むのか。
そこまで考えて――見つけた答えに、さあっと青ざめる。
「さ、行くわよ。しっかりつかまって」
「ちょ、待っ……リーゼ!」
雷奈が止めようとする。だが、その時にはリーゼは手元に風の塊を生み出していた。それを発射することによる反発力を初速とするのだろう。
四の五の言っている暇はない。雷奈は慌ててトロッコのふちをつかんだ。雷奈と背中合わせになるように並んだ氷架璃と芽華実も、同じ結論に至り、こわばった顔でふちに手をかけ、しがみつく。
「吹き荒べ、烈颯」
透明感のある、真っすぐな風のような声が、唱えた。
刹那、大きく空気が唸ったかと思うと、風術の余波が頬を叩いた。同時、トロッコが見えざる手に押されたように前進する。
レールの上を真っすぐに、ゆっくりと進んでいく。最後の電球の下を通り過ぎると、その先は一気に暗くなり、進行方向のレールは見えなくなる。
――ただし、先のレールが見えないのは、暗くなったためではない。
上りの時だけ電気エネルギーを使う乗り物は、人間界にもある。その乗り物は、上り以外の時は何を動力源にするのかといえば――位置エネルギーである。
その名を、ジェットコースターという。
――線路が、視界から消えた。
「わああああああああっ!?」
「ギャァァァァァァ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
三者三様の声を尾のように引いて、三人と二匹を乗せたトロッコは、垂直にも近い下り坂を猛スピードで駆け下りていった。
感覚的には「落下した」と言っても差し支えない速度と角度。あっという間に下りるところまで下りる。だが、勾配が緩んでもなお、トロッコは恐ろしい速度で進み続けた。
ガタガタガタガタ!
バリバリバリバリ!
鼓膜を突き破るような凄まじい音が、本能的な不安だけでなくもっと実質的な恐怖で殴りかかってくる。
「オイィィィ! すげえ音してんだけど、これぶっ壊れたりしないよな!?」
「大げさね。人間界の『ジェットコースター』とかいうのと同じでしょ。それはそう簡単に壊れるものなのかしら?」
「ジェットコースターがこんなボロい木製の箱じゃあるかボケェェェ!」
氷架璃の悪態さえ、次の瞬間には後方の彼方。天井の低い地下トンネルを、相変わらず危なっかしい音とぐらつきで爆走し続ける。
入口の電球ほどの輝度はないが、壁に取り付けられた明かりがかろうじて視界を担保していた。見上げた天井も、左右の壁も、地中むき出しの粗削りだ。崩落したらまず助からないだろう中を、怖じもせずトロッコはひた走る。
最初の崖のような下り坂で、相当な位置エネルギーを運動エネルギーに変えたらしい。小さな上り坂があっても、トロッコはノンストップで乗り越えていく。小さく上って、下って、上って、下って。下にどけられない岩石でもあったのだろうか、なぜか波打つように上りと下りを繰り返す路線に、早くも目が回りそうになっていた。
かと思えば、ぐんっと大きなカーブ。遠心力で車体が傾き、雷奈たちの肌に冷や汗が走る。
「リーゼ! 傾いとる! 傾いとるって!」
「重心を! 誰かこっち側に寄れ! バカヤロー、主体のアワじゃ軽すぎる!」
「っていうか、リーゼ、あれ!? なんかレール途中で破損しとらん!?」
「こんなスピードで脱線なんて想像したくないんだけど……!?」
「うおおお火花出たぞ!? 大丈夫かこれ!?」
「ちょ、ふ、伏せて! 天井から木の根が!」
「リーゼ! 風中家の地下道の整備どうなってるんだい!?」
「また業者に発注しなきゃねぇ……」
――などと騒ぎ立てながら走り続けること、何分だろうか。雷奈達の体感ではもう十分な時間走り続けたように思えるが、まだまだ出口は見えてこない。
言わずと知れた、某有名冒険洋画を再現しているような状況だ。あれは見ているから楽しめるのであって、いざ体験してみるとたまったものではない。アミューズメント好きでジェットコースター耐性のある氷架璃でさえ、この心もとない木箱での疾風怒濤のアクションは絶叫に値した。
しばらく走り続けるうちに、さすがにトロッコの速度が落ちてきた。そのころには、雷奈達は恐怖と叫んだ疲労でぜえぜえ喘いでいた。
ふいに、レールからカチッと何かを踏んだような音がした。モーター音が響きだす。トロッコの頭が持ち上がり、そのままぐんぐんと一定の速度で進みだした。いつの間にか目の前に迫っていた上り坂を、動くレールに運ばれて上っているのだ。リーゼの言っていた電力による仕掛けだろう。
なお、この状況で「上り始める」ということは、「位置エネルギーを蓄える」ことと同義であるわけで。
「あと何回かあるわよ」
リーゼがそう言うと同時に頂点に達したトロッコの次の挙動は、言うまでもない。
「うきゃぁぁぁぁっ!?」
「ノォォォォォォ!」
「いやぁぁぁぁぁっ!」
こうして、雷奈たちは引き続き喉を酷使し続けた。
風に等しい速度での猪突猛進。
上下左右の激しい揺れと衝撃。
待ったなしの急カーブと、そのたびに傾く車体。
そんな過激な刺激のオンパレードにさらされ尽くして、幾ばくか。目の前にそびえたったのは、今までで一番長く高い上り坂だった。
ご多分に漏れず、車輪がカチリとスイッチを踏むと、カタカタカタ、とレールが動きだす。同時、トロッコは上へ上へといざなわれていく。その穏やかな速度に身を任せながらも、雷奈たちは気が気でなかった。
上るということは、そのぶん下るということだ。ここまででさんざん体験してきた経験則が、次の衝撃を予感させてその身を震わせる。
上って、上って、上り切って――レールは平坦な道を進み、そして止まった。
「……」
「……」
「……止まった……?」
「到着よ」
リーゼはぴょこんとレールの上に飛び降りると、再び人間の姿になった。
出発時と同じく、トロッコは線路の端で静止しており、左右を見れば、残り二本のレールにも同じようにトロッコが止まっていた。前方に目をやれば、上り階段、そして扉が見えた。よく見通せると思ったら、天井の電球も乗り場と同じくらいの明るさを放っていた。
「や……やっと着いたか……」
「な、なんで最後、上って終わったのかしら……」
「そりゃ、あれっちゃろ……帰りも同じように初速度つけるためっちゃろ……」
「……うおぉ……」
当然訪れることとなる復路の恐怖に、早くも精神を削られ、三人は憂鬱な大息を吐いた。
だが、今はそうも言っていられない。ひとまず、三人もトロッコから降りた。そのままへたりこみそうになってしまうが、リーゼがすいすいと階段を上っていってしまうので、慌ててその後を追う。アワも雷奈達側のペースでいるのを見ると、何度も来ているとはいえ、この交通手段がかなり苦手なようだ。
「さあ、ここからが本番よ」
扉に手をかけたリーゼが、振り返らずに言う。
「もっとも、まずは――この先の景色を、あなた達人間が認識できるかが問題だけどね」
そして、きしむ音を立てながら――扉を開いた。
外の光があふれ出す。冬の柔らかな陽も、薄暗闇に浸りきった目には応えた。視界を真っ白く満たす光に、雷奈たちは反射的に目をつぶった。
次にまぶたを上げた時――目の前に広がった光景に、雷奈の口からそれを端的に表す言葉が零れ落ちた。
「……森が」
「あら、見えるのね。やっぱり認識阻害の術式は二家以外のフィライン・エデンの猫に適用されるものだったってことね」
リーゼがどこか得意そうにアワを振り返る。アワはといえば、「はいはい」と軽くあしらう顔で頷いていた。
地下から出てきた雷奈たちを迎えたのは、視界いっぱいに広がる森林だった。聖域とはいえ、特に境界が引かれているようには見えない。ただ道路一つ分ほどの距離を挟んですぐに、背の高い針葉樹の群れがそびえたっていた。冬だというのに青々と葉を広げているところ見るに、常緑樹だろう。
山ではない。森は、平地に展開していた。だからこそ、一目では規模をつかむことはできず、どこまでも続く茫漠な地に感じられた。事実、右を見ても左を見ても、木々の終点が視認できなかった。
「ここが、聖森領域だよ」
雷奈たちの後ろから前に歩み出たアワが、高さ二十メートルはあろう木々を見上げて言った。
「ここからじゃ見えないけど、中央に向かって二十分くらい歩いたところで、巨大な岩石洞窟――巫覡の磐座にたどりつく。もっとも、それは直線距離を進んだ場合だ。でも、今回はそうはいかないんでしょ、リーゼ」
「ええ」
イヤリングを風に揺らして、リーゼは答える。
「他の二台のトロッコがこちら側にあった。つまり、風中家はすでに聖域入りしているわ。十中八九、家族総出でね」
雷奈たちはどこまでも奥へ続く森を見つめた。
「この中に……ウィンディや、他の家族が……」
「広い森だもの、分散して配置されているはずよ。流清家がどこから入ってきても、磐座へは通さないように。フーの禊への介入を邪魔されないように、ね」
「流清家はもう到着してんのか?」
「流清家側のトロッコを見たら一目瞭然だろうけど、まあ来てると考えるのが筋だろうね。風中家はすでに来ていることだし、それを止めるためならもう到着していないと」
アワはちらりと、左後方をうかがった。
つられて雷奈達も振り返ると、出てきた地下道とは別に、もう一つ同じような扉が離れたところに存在していた。あちらが流清家のトロッコなのだろう。
「……もしかしたら、もう衝突は始まっているのかもしれないな」
「それなら、急ぎたいところね。でも、まだ理論武装できていない私達が彼らに見つかるわけにはいかない。だから慎重に進んで、適宜迂回する必要がある。だから直線距離で行けるとは限らないのよ」
フーが夢を見ていたことの証明が出来上がっていれば、それを鉢合わせた流清家や風中家にぶつけてもよかったのだが、いかんせん難題だ。
言外に急かされた気がして、雷奈はフル回転の頭を抱えて「面白い夢見たことばメールしてきたとか……いや、ばってん履歴がなか……」などとぼやいている。
「……こんなことなら、ボクとリーゼだけで来た方がよかったかい? 神判の間が閉まっていることの確認なら、ボクたちだけでもできたでしょ」
「いいえ。それだと、神判の間を確認する動機がないでしょう。フーの無実という結論があるからこそ、神判の間の閉扉が根拠としてが浮上してくるんだから。それこそ、両家への言い訳が立たないわよ」
「あー……そっか」
アワは頭をかいた。かきながら、ちらとリーゼを見る。
リーゼが聞いたというフーの寝言の内容を素直に口にできれば、こんな回りくどいことをせずに済むのだが。緘口しなければならないとは、いったいどんな寝言だったのやら。
リーゼはそれには一切触れるつもりがないらしく、雷奈達をぐるりと見まわして言った。
「それじゃ、行きましょう。私が先頭に立つから、アワちゃんは殿に」
「了解」
「えっと、入り口はどこになるのかしら。道は……」
「道なんてないわよ。自然の杜だもの」
芽華実を遮って、リーゼがスマホを取り出し、方位磁針アプリを立ち上げた。
そして、赤い針の指す方へ、足を踏み出す。
「ただ北へ向かって進むのみ。絶対にはぐれないでね」
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