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実家に帰省しました
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『僕・・・?』
僕は特に何もした覚えがないのに、と目を丸くしていると、雪兎がふと真剣な顔になる。
「初めはすごく綺麗な人だと思ったんだ。瞳が真っ直ぐで、打算とかそういうの全然無いみたいな純粋な瞳に惹かれた。初めてそんな人に出逢えたんだ。クラスメイトの大きな声に肩を震わせる遥の事を守りたいって思った。でも・・・俺はいつも遥に守られてばっかりだ。変なカツラや瓶底眼鏡に引かれても仕方なかっただろうに、顔を隠したいのを察してくれて忠告してくれたり、新入生歓迎会の時は危険に巻き込んでしまったのに助けてくれたりね」
そう苦笑した雪兎は、グラスを机に置いたのち僕の手をそっと取って優しく両手で包み込んだ。
「それになにより、テスト勉強を一緒にした時、知識は武器だって教えてくれた。誰かと一緒に歩むために知識をつけるっていう選択もあるって知った時、そんな考え方があるんだって衝撃を受けたんだ。俺ね、勉強しようとすると、どんな時でも勉強する事を強要して父のようになれ、常にサンチェスの名にふさわしくあれ、って洗脳のように囁き続ける母を思い出しちゃってね・・・。だから勉強自体嫌いになったし、今まで言われるがまま生きてきたから目標も何も無くて、反抗心ばっかりが先立って母が喜ぶだけなら勉強する意味も無いって思ってた。でもさ、遥の話を聞いて俺、反抗するばっかりじゃなくて、ちゃんと自分の頭で先の事を考えようって思えたんだ。俺、学園を卒業した後も遥や皆と一緒に居たい。俺の父は手広く事業をやっているでしょう?だから後継になれば遥の・・・皆の力になれるだろう?俺にも夢ができたんだ。すごく大変だろうけど、これからちゃんと頑張る。それで皆と同じ景色を見ていたい。最終的に母の思い通りかと思うと正直思う所はあるけど、遥のおかげで色々吹っ切れたしね。気にしないことにしたよ。それに後継になってしまえば母くらいどうとでもなるしね」
『えっと・・・雪兎は僕が雪兎を助けてばっかりって言うけど、僕は雪兎の元気な所に救われてたよ?それに僕、桜華学園に入るまで学校に友達って1人も居なかったんだ。だから初めて会った時、すぐ声かけてくれて、友達になってくれて、嬉しかったんだよ。僕の方がお礼を言いたいくらいなのに。勉強会の時はそのまま思った事を言っただけだしね。でも雪兎が夢を持てたなら僕も嬉しいし、応援する!一緒に頑張ろうねっ』
僕がおにぃの秘書になりたいって思ったのも、おにぃの力になりたいって思った事がきっかけだったもんなぁ。今では秘書の勉強も楽しいし、とっかかりはなんでもいいと思うんだよね。ちゃんと勉強をしてれば別の道に進みたくなっても土台ができてるから楽だと思うし。
雪兎の夢には僕も入れてくれてるみたいだし、その夢が叶うように僕も頑張らなくちゃだねっ!
「遥・・・!ありがとう、嬉しいよ!それでね、これからはきちんとしようと思っていて・・・。2学期からはカツラと瓶底眼鏡を止めようと思うんだ。性格を作るのもやめる。そのままの自分で戦って父に認めさせる。今日はその第1歩にしようと思って参加したんだよ。遥に会えたのは予想外だったけど、会えてよかったし、俺の話を聞いてくれて本当に嬉しかった。・・・それでね、隆哉や颯汰や律にだけは先に伝えたいと思っていて・・・今度一緒に会うだろう?その時話をしようと思っているんだけど、流石に少し反応が怖くてね。遥が側にいてくれたら勇気が出るんだ・・・一緒にいてくれるかい?」
雪兎の眉がしょぼんと下がり、握った手にぎゅっと力が入る。あんなに無鉄砲だったのに、なんだか可愛く感じてしまって思わずふふっと笑ってしまった。
『もちろんだよ!でもあの3人だったら大丈夫だと思うよ。皆にとっても雪兎は大事な友達だもん』
「ありがとう遥・・・。本当に遥は格好良いなぁ。俺、いつかちゃんと遥を守れるような男になるから。だからその時は・・・」
「すみません、そろそろ遥を返してもらいますね」
雪兎がキリッと顔を引き締め、言葉を止めてゴクリと喉を鳴らした瞬間、僕の手を掴んでいた雪兎の手をペイっと外したおにぃにグイッと抱きしめられた。
『びっくりしたぁ・・・!もう時間?気付かなかった、ごめんおにぃ。雪兎も驚かせてごめんね。さっき何か言いかけてたよね?』
「・・・いや、大丈夫。この続きは俺が成長してから、かな」
おにぃに抱きしめられたまま雪兎に視線を移すと、少し困ったような、切なそうな顔で笑みそう言われた。
「ほら、雪兎くんは大丈夫だって。では、うちの遥をこれからも友達としてよろしく頼むよ」
『うーん・・・、本当に大丈夫?』
「あ、あぁ、本当に大丈夫だよ。次会えるのは皆で遊ぶ時だね。楽しみにしているよ」
雪兎はおにぃを見た瞬間ヒクリと口元を引き攣らせてたけど、僕に視線を向けて笑ってくれた。おにぃ、僕が見た時は笑ってたんだけど、どうして雪兎は怖いもの見ちゃったみたいな顔してたんだろう?不思議。
『そっか、わかった!僕も楽しみにしてるね!』
まぁいっか、と思い直してじゃあまたね、と雪兎に手を振り、おにぃとパーティー会場を後にした。
今日は色々あったなぁー・・・。知らない人達との挨拶回りは緊張して疲れちゃったけど、雪兎の事がたくさん知れて良かった。僕ももっと気を引き締めて頑張らないとだねっ!
僕は特に何もした覚えがないのに、と目を丸くしていると、雪兎がふと真剣な顔になる。
「初めはすごく綺麗な人だと思ったんだ。瞳が真っ直ぐで、打算とかそういうの全然無いみたいな純粋な瞳に惹かれた。初めてそんな人に出逢えたんだ。クラスメイトの大きな声に肩を震わせる遥の事を守りたいって思った。でも・・・俺はいつも遥に守られてばっかりだ。変なカツラや瓶底眼鏡に引かれても仕方なかっただろうに、顔を隠したいのを察してくれて忠告してくれたり、新入生歓迎会の時は危険に巻き込んでしまったのに助けてくれたりね」
そう苦笑した雪兎は、グラスを机に置いたのち僕の手をそっと取って優しく両手で包み込んだ。
「それになにより、テスト勉強を一緒にした時、知識は武器だって教えてくれた。誰かと一緒に歩むために知識をつけるっていう選択もあるって知った時、そんな考え方があるんだって衝撃を受けたんだ。俺ね、勉強しようとすると、どんな時でも勉強する事を強要して父のようになれ、常にサンチェスの名にふさわしくあれ、って洗脳のように囁き続ける母を思い出しちゃってね・・・。だから勉強自体嫌いになったし、今まで言われるがまま生きてきたから目標も何も無くて、反抗心ばっかりが先立って母が喜ぶだけなら勉強する意味も無いって思ってた。でもさ、遥の話を聞いて俺、反抗するばっかりじゃなくて、ちゃんと自分の頭で先の事を考えようって思えたんだ。俺、学園を卒業した後も遥や皆と一緒に居たい。俺の父は手広く事業をやっているでしょう?だから後継になれば遥の・・・皆の力になれるだろう?俺にも夢ができたんだ。すごく大変だろうけど、これからちゃんと頑張る。それで皆と同じ景色を見ていたい。最終的に母の思い通りかと思うと正直思う所はあるけど、遥のおかげで色々吹っ切れたしね。気にしないことにしたよ。それに後継になってしまえば母くらいどうとでもなるしね」
『えっと・・・雪兎は僕が雪兎を助けてばっかりって言うけど、僕は雪兎の元気な所に救われてたよ?それに僕、桜華学園に入るまで学校に友達って1人も居なかったんだ。だから初めて会った時、すぐ声かけてくれて、友達になってくれて、嬉しかったんだよ。僕の方がお礼を言いたいくらいなのに。勉強会の時はそのまま思った事を言っただけだしね。でも雪兎が夢を持てたなら僕も嬉しいし、応援する!一緒に頑張ろうねっ』
僕がおにぃの秘書になりたいって思ったのも、おにぃの力になりたいって思った事がきっかけだったもんなぁ。今では秘書の勉強も楽しいし、とっかかりはなんでもいいと思うんだよね。ちゃんと勉強をしてれば別の道に進みたくなっても土台ができてるから楽だと思うし。
雪兎の夢には僕も入れてくれてるみたいだし、その夢が叶うように僕も頑張らなくちゃだねっ!
「遥・・・!ありがとう、嬉しいよ!それでね、これからはきちんとしようと思っていて・・・。2学期からはカツラと瓶底眼鏡を止めようと思うんだ。性格を作るのもやめる。そのままの自分で戦って父に認めさせる。今日はその第1歩にしようと思って参加したんだよ。遥に会えたのは予想外だったけど、会えてよかったし、俺の話を聞いてくれて本当に嬉しかった。・・・それでね、隆哉や颯汰や律にだけは先に伝えたいと思っていて・・・今度一緒に会うだろう?その時話をしようと思っているんだけど、流石に少し反応が怖くてね。遥が側にいてくれたら勇気が出るんだ・・・一緒にいてくれるかい?」
雪兎の眉がしょぼんと下がり、握った手にぎゅっと力が入る。あんなに無鉄砲だったのに、なんだか可愛く感じてしまって思わずふふっと笑ってしまった。
『もちろんだよ!でもあの3人だったら大丈夫だと思うよ。皆にとっても雪兎は大事な友達だもん』
「ありがとう遥・・・。本当に遥は格好良いなぁ。俺、いつかちゃんと遥を守れるような男になるから。だからその時は・・・」
「すみません、そろそろ遥を返してもらいますね」
雪兎がキリッと顔を引き締め、言葉を止めてゴクリと喉を鳴らした瞬間、僕の手を掴んでいた雪兎の手をペイっと外したおにぃにグイッと抱きしめられた。
『びっくりしたぁ・・・!もう時間?気付かなかった、ごめんおにぃ。雪兎も驚かせてごめんね。さっき何か言いかけてたよね?』
「・・・いや、大丈夫。この続きは俺が成長してから、かな」
おにぃに抱きしめられたまま雪兎に視線を移すと、少し困ったような、切なそうな顔で笑みそう言われた。
「ほら、雪兎くんは大丈夫だって。では、うちの遥をこれからも友達としてよろしく頼むよ」
『うーん・・・、本当に大丈夫?』
「あ、あぁ、本当に大丈夫だよ。次会えるのは皆で遊ぶ時だね。楽しみにしているよ」
雪兎はおにぃを見た瞬間ヒクリと口元を引き攣らせてたけど、僕に視線を向けて笑ってくれた。おにぃ、僕が見た時は笑ってたんだけど、どうして雪兎は怖いもの見ちゃったみたいな顔してたんだろう?不思議。
『そっか、わかった!僕も楽しみにしてるね!』
まぁいっか、と思い直してじゃあまたね、と雪兎に手を振り、おにぃとパーティー会場を後にした。
今日は色々あったなぁー・・・。知らない人達との挨拶回りは緊張して疲れちゃったけど、雪兎の事がたくさん知れて良かった。僕ももっと気を引き締めて頑張らないとだねっ!
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