【R18. 1/29完結】元同期の天才魔術師に″処女は抱かない″と言われたので処女を捨てたらキレられました。

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元同期の天才魔術師に″処女は抱かない″と言われたので処女を捨てたらキレられました。

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「で、いつになったら抱いてくれんの?」
「…お前ね……」

今回の遠征も無事に帰還した元同期の祝いに酒場で盃を交わし、開口一番言われた言葉にハイドは頭が痛くなった。
10年前に女遊びの話を″キモい″と吐き捨てたあの純粋なベルちゃんは何処へやら。麦酒を男前に一気飲みして木杯をカンッと気持ちよくテーブルに叩きつけたベルは頬を赤く染めることもなく言い放った。
ベルの威勢がいい気風になんだなんだと周りの客の視線が集める。この光景に見慣れた常連客は″なんだいつものやつらか″と笑うと二人をアテに酒を煽った。

「俺は処女は抱かないの!こんなとこでんな話するな童貞女!」
「女に童貞とかないから!なんで⁉︎いいじゃん一回くらい‼︎私が次も無事に帰るとは限んないんだからさぁ⁉︎  あ、おかわりください」
「んな理由ならなおさら嫌だわ!死に準備に俺を入れないでくんない⁉︎」

やんややんやと男女だというのに色っぽい空気もなく言い合う二人はこの店の常連だった。
男の方はやたらと綺麗な顔をした最年少の王宮魔術長で、二十四の歳で議会の爺共と遣り合う肝の据わった男らしい。
女の方は軍の魔術師部隊の人間で、いつも生傷が絶えないが快活に笑う飲みっぷりのよさが酒場の男達に密かに人気があった。

「いいじゃねぇかにいちゃん‼︎いい女が迫ってんだからたまにはよー‼︎」

酒に酔った男からの野次にハイドの眉間の皺が深くなる。
相対してベルは「いい女なんて~」と口元を緩めて顔を赤らめた。

「調子のんな馬鹿女。いい女なんて女抱きたい時の適当な口説き文句なんだよ」
「んな⁉︎そ、んなことよく言えるよね⁉︎そりゃー散々女遊びしてる天才様からしたらそうかもしんないけど、みんながみんなアンタみたいなクソ男じゃないし」
「お前抱かれたいっつった口でよく俺のことクソ呼ばわりできるね」

舌の根も乾かぬうちに悪口にシフトする速さに思わず突っ込んでしまった。
はー、男の野次に感化されて顔赤くしちゃって、ほんと馬鹿。
俺がどんな気持ちで毎回断ってやってるか、少しは感謝してほしいねホント。
10年前から、この女に恋をしている。
こいつだけは大切にしたくて、女遊びもあの頃からすっぱり辞めた。
コイツが所属する魔術師部隊の環境が改善されるように議会のクソ爺共に掛け合ったり、魔術長になって魔道具を開発したおかげで人間が爆弾になんてならない環境にようやく整った。
後は家の仕舞いを付けて、研究気質のクソ親共を田舎の別荘に隔離したら俺は家を継ぐ。

そしたら、世間一般的な″家族″なんてのをこいつとつくりたい。

(人の気も知らないで、)

モテ男の俺が右手で自分を慰めてるとか笑い話にもならないっしょ。いや言わないけど。
いつからかベルから好意を口にされることが増えてここ5年は会う度にこんな話をされている。男友達みたいにケラケラと笑いながら酒を煽っている顔に照れはなく、むしろ恒例行事をこなしたような爽快感さえある。ふざけんな。今すぐ抱き潰してやろうかこいつ。


はあ、

大きくため息を吐いたハイドを、ベルは悩ましげに見ていた。




ハイドは、女性に人気がある。
そりゃこの顔で、最年少魔術長で、貴族の男だし。寄り付かない訳ないとは思う。性格はクソだけど。
ハイドが私とこうして飲んだり、面倒を見てくれるのは単にあの地獄の魔術師候補時代に生き残った同期が私しかもう居ないからだ。
ハイドは女より友達を優先するくらい、一度仲良くなった人間に対しては情が深い奴だから。
だからこれだけ私がアタックしても適当にいなして笑えるんだろう。

「またやってるよ、身分知らずの勘違い女」
「ハイド様も迷惑してるのに」

酒場の喧騒に混じって微かに女性の話し声が聞こえる。
分かってるよ、無相応なんて、そんなこと。

いつからだろう、この厄介な男に恋をしてしまった。
女なんて星の数ほど抱いてるだろう性格最悪のクソ男なのに。
魔獣討伐で力を貸してくれて、私の魔術練習を馬鹿にしながらも手伝ってくれて、魔術回路の回転を早めるならどうすればいいとか、指摘をするときは素直に言うし、上手く出来れば褒めてくれる。
たぶん、私が生き残れたのはハイドのおかげ。

でも、私ももう24。貴族社会でどうかは知らないけど、市民感覚だと少し″行き遅れ″に差し掛かる歳だ。
生憎魔術師なんて命が幾つあっても足りないような仕事だから、生涯を共にするパートナーには悲しい思いをさせるかもしれないけど。
でもやっぱり私は″家族″に憧れがある。

温かい家庭、温かいご飯、温かいお風呂。
そこで笑ってる、お母さん、お父さん、こども。




(……だから、いい加減バカみたいなこの恋も終わりにしたいんだよ。)

女遊びが激しいハイドならすぐに手を出すかと思ったのに、
意に反してハイドは何年も私の″抱いて″を無視し続けた。
そんなに、私には魅力がないのか。
栄養不足だった割に、胸は育ったつもりなんだけどな。

(最後に思い出くらい、くれてもいいじゃん)

抱いてくれたらもうこんな面倒なやり取りもしないし、
すっぱり諦めてあんたの望む友人になるよ。
処女は嫌いかもしれないけど、
でも初めての男はあんたがいいから。




(……処女を捨てたら、抱いてくれる?)









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