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元同期の天才魔術師に″処女は抱かない″と言われたので処女を捨てたらキレられました。
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しおりを挟む次の休日、彼の言う通り私は処女を捨てることにした。
と言っても、
「いだだだだだだだっ‼︎‼︎」
あまりの痛みに叫び声を上げて、力任せに入れた張り型を引き抜く。ずる、と思ったより簡単に引き抜けた男根を模した木製張り型には血膜がべっとりとついていて「ひっ」と声が出た。
股は熱を持ったようにジンジンと痛むし、これは「処女捨てたから抱いてー」とはすぐいかないかもしれない。
ていうか処女膜って内臓に繋がってたんだ。
こんなに痛いと思わなかったんだけど。
「……」
張り型を見て息を吐く。
女が快楽を得るために特化した性道具なだけあって、先端に妙な膨らみと胴部分に凹凸がある。実際の男性の逸物が本当にこんな感じなのかは分からないけど、入れた女がこんな悲鳴あげてたらハイドも集中できないよね。
決めた。
今回の休暇期間にハイドに抱かれるつもりだったけど、
明日からの遠征の間にこれで練習して慣らしておこう。
そんで遠征から帰ったらハイドに告白しよう。
あっちからしたら遠征先の私の動向なんて知るはずないし、
理由は適当に酒場であったイケメンに手解きしてもらったとかでいいでしょ!
もう処女じゃないから抱いてほしい。って言ったら流石のハイドもちょっとくらい靡いてくれるんじゃない?
なんて、
ハイドの恐ろしさをまだ知らない私は、
彼の地雷を踏み抜いていることも知らないで
呑気なことを考えていた。
——————
前回会ってから数週間。
今回の遠征もキツかった。
軍の兵士との共同任務で魔道具が配られているとはいえ魔術師の数が圧倒的に足りてない。それもこれもあの地獄の幼少期、魔力がある子どもが無惨にも能力のない馬鹿な大人たちの手で爆弾として消費されてしまったから。
魔力が足りないなら少ない魔力で発現出来るようになればいい。
攻撃力が足りないなら致命傷になる位置を狙って仕留めたらいい。
どれもこれも、戦場で生き延びる術なんて大人は教えてくれなくて自分で見つけた。
蟲のように駆けずりながらチマチマと魔獣に攻撃して、裂傷が出来ればその傷口を徹底的に責める。
卑怯な戦い方だと、なにも知らない兵士から責められた。
魔術師ならば後方で陣を組み、魔獣に痛みを与えず一瞬で葬れと。
ならアンタも剣でバシバシ斬り付けてないで、痛みもなく一瞬で魔獣の首を叩き切ってみろよ。
後方で固まる魔術師がどれほど魔獣の囮に使われているかも知らないで。まじこの職場クソ。
「動きながら魔術発現出来るようになれって言ったよね?」
「……はぁ」
「魔力持ちの人間が何人も固まってたら″餌″として魔獣に狙われる。だからアンタらに動きながら使えるように練習しとけって私、言ったはずなんだけど」
「でも今回も別に被害ないし」
「それは前線の兵士が食い止めたからでしょ?」
固まって何人もで強力な陣を組むと発現までの時間はその場を動けなくなる。魔力を半端に流した状態で魔力源である人間が欠けると操作が効かなくなって魔力暴走するからだ。
そうやって囮にされたもの、
餌になってしまったもの、
暴走の爆発に巻き込まれて死んだもの、
散々、この目で見てきた。
「いいじゃん、私らの前には兵士がいるんだから」
……。
目の前で、未熟な魔術師達を庇った兵士が肩から魔獣の斬撃を受けてどくどくと血を流していた。
看護兵が手当をして命に別状はないらしいが、それを見ておいてそんなことを言えるのかと絶句してしまった。
二の句が出ない間に後輩たちは「おつかれさまでした」と前から去ってしまう。
面倒くさそうに欠伸をして談笑する後ろ姿に、もう何も言えなかった。
…遠征から戻ると、門の前に人影があった。
兵士と魔術師を待つ何人かの家族や恋人。
その中に、今一番会いたいやつもいた。
「え、あれ、魔術長じゃん!」
「えぇ!うそハイド様っ⁉︎」
ザワザワと後輩達が色めき立つ。ああ、ハイドのカリスマは凄いなぁ。直属じゃなくてもこんなに尊敬されてるんだ。
私じゃなくて、ハイドがあの子たちの先輩だったなら、上手く説得出来てたんだろうなぁ…。
悔しいような、苦しいような、苦い気持ちが喉に詰まって彼の顔を真っ直ぐ見れなかった。
いつもと違う様子に首を傾げたハイドが、カツカツと靴底を慣らして列に近づく。一層大きくなる周りの声が彼の威厳を表しているようで、惨めな気持ちになった。
「…おかえり、ベルちゃん」
彼の温かい声が頭上から降り注ぐ。
遠征終わりの酒場できくいつもの声に安心すると共に、
なんでこんな場所で待ってんの。別に家族でも恋人でもないくせに。と理不尽な怒りが込み上げる。
「元気なさそうだけど、なんかあった?」
「……べつに、なにも」
「怪我した?それとも病気?ハイドお兄さんが看病したげよっか?」
「いつ兄になったのよ」
ふへ、ベルの顔が弛んだのを見てハイドも微笑む。
口数が少ないのは彼女が何か思い悩んでいる証拠。不機嫌なときの気の引き方なんて10年の付き合いでは慣れたものだった。
ベルの手を引いて列から出る。
「…酒でも飲みに行こうか、腹へったでしょ?」
家族や恋人が迎えに来ているというのに、ザワザワと集まる妙な視線。こちらを恨めしそうな目で見ているのは彼女と同じ魔術師のコートを着た人間達だった。
列から離れ、ベルの荷物を手に持つ。
相変わらず珍しく浮かない顔をしているけど、遠征帰りの彼女が追い詰められているのは今に始まったことじゃない。
酒を飲みながら愚痴でもなんでもゆっくり聞いてやろう。
そう思いながら、夕焼け空、タイル張りの路面を並んで歩いた。
「ねぇ、抱いてよハイド」
「…お前ね……、それ、外でする話じゃないでしょ?女の子なんだから、身体は大事にしないと」
「…誤魔化さないで」
いつになく、真剣な声だった。
「…ベル?」
「……抱いてほしい、今回は冗談じゃないから。本気で、言ってるから、だから、お願い。」
ゆらりと、夕焼けに照らされて彼女の赤い目が燃えて見えた。
あ、本気だ。とすぐに分かった。
何がベルをそこまで追い詰めたのかは知らないけど、大方あの魔術師連中に男経験がないことでも笑われた?
(あー、どうしよ。)
先日正式に家督を継いで、家の問題が漸く片付きそうなとこなんだよね。泣き出しそうな彼女を今すぐ抱きしめて言葉の通りベッドに連れていってやりたいのは山々なんだけど。散々押し殺した俺の恋心が″ふざけんな″と叫んでる。
抱きたいよ。好きな女が抱いていいよって自ら言ってんだもん。でもそれじゃ駄目なわけ。ちゃんと家族になりたいなら、順番を間違えずに彼女に婚約を願い出る環境を作って、婚約を取り付けて、夫婦になってからそういう行為をしないといけないわけ。
「俺は、処女は抱かないよ。」
この断り文句もあと何回だろう。
俺がプロポーズするときこいつはどんな顔をするんだろう。
喜んでくれたらいい、なんで黙ってたと怒られてもいい、たまには顔を赤く染めて照れてくれてもいい。
お前の反応ならなんだって嬉しいから、だからあと少しだけ———、
「処女じゃないよ」
………は?
「私、もう処女じゃないから、だから抱いてほしい」
「あ″?」
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