【R18】悪役令嬢は婚約者に囲われる。 (婚約者×悪役令嬢 R18短編集)

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【終章】アンリマユ×リラ編

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(浮気者といえば…)

リラは仲が良かった男子生徒の一人を思い出す。
ヴァン侯爵は歴史ある侯爵家の男性で、女性を惹きつける妙な魅力がある人だった。
周りの男子生徒より頭一つ大きい背丈、貴族なのに鍛えられた腕は逞しくてちょっとイカつめの顔立ちなのに甘い表情で微笑みかける姿はまさに美丈夫だった。


(でも、あれは近づいちゃいけないタイプの人だよね…)

記憶の中にあるヴァンはあくまで友人として節度ある距離を保ってくれた。が、歳はリラと同じはずなのに女慣れした怪しい空気と遊び以上の関係を求めた女性に対する冷たさがリラには恐ろしいものに見えた。

沼男というのはきっとああいう男性のとこを言うんだろう。

来る者拒まず去る者追わずみたいな顔をしておいて、寂しいなら寂しい者同士で慰め合おうかと女性を誘う。
けれどそれはあくまで遊びとして同意した相手とだけ。
彼の相手になった女の子たちが彼から離れてもなお狂信的に彼に尽くしていることがなおのことリラの恐怖を煽った。


(……ヴァンの婚約者さんは、無事だったのかな…)

ある日、血相を変えたヴァンが自分を呼び止めた。
置き手紙だけを置いて失踪した婚約者を探したいと言う彼の顔は必死で、学園で女性をもて遊ぶ人なのに婚約者のことはそんなに必死になるんだと驚いた記憶がある。

ヴァンの婚約者はちょっと変わった人で貴族らしい女性ではない。
いつも変わらない貧相な服を着ていて化粧も髪飾りも普段は気にも止めてないような女性だった。
浮気ばかりしていたんだから捨てられて当然だと思うのに、彼があまりに必死な顔をしているものだから力になりたいと思っていまう。
それに彼が婚約者に服や髪飾りを贈り特別扱いしているのは、リラも分かっていた。


(貴族のお嬢様が突然家を出て無事に済むなんて思えない)

彼女は知らないかもしれないけど、この世界の治安は女性一人で生きていけるほど良くないよ。
陽が明るいうちはいいけどさ、
人の多いところと、暗いところは気をつけないと。
特に国境を跨ぐ港町や、暗い路地裏は食にありつけない孤児でも攫って金に変えちゃうようなこわい人たちの場所だからさ。


(……あれから、ヴァン様も学園に来てないな)


自分が示した施しは正しかったのか、
もはや覗くことに罪悪感もなくなったリラは夜に水晶を覗くことを心に決めてその日の授業を聞いていた。






ーーーーーーーー






「リラ、最近体調が悪いですか?」
「へ?」

学園から帰るなり神子に呼び止められたリラはギョッとした。
身体に違和感なんてないのに、神子さまに言われると自分を疑ってしまう。
だって熱を出す前も風邪をひいたときも自分が不調に気がつくより前に神子さまは変化に気がついて世話をしてくれたから。
立ち止まって一度考えても、やはり身体はいつも通りでリラは首を傾げて神子は怪訝そうな顔をしていた。


「あなたの神聖力が以前より落ちています。身体に不調はありませんか?」
「………ぁ」
「…何か思い当たることでも?」

思い当たるというか……。
以前は水晶を使うのは日に長くても10分程度だった。
誰かのなくしものを探すのに、
誰かの好きな人の贈り物を決めるのに、
けれど最近は夜の″覗き見″がすっかり習慣化して水晶に自分の聖力を注ぐ時間が前と比べ物にならないくらい長くなってしまった。

(いや、言えないよこんな理由。)

人の性行為覗いて自慰に浸るために水晶使ってました。
なんて、立証ができないから犯罪行為にならないしてもアウト過ぎる。


「最近、ちょっと夜更かししちゃったから寝不足なのかもしれないです」
「夜更かし…?」
「はい、勉強に遅れないようにしようと思って」
「……そうですか」


ひい。誤魔化せた?誤魔化せたかなコレ。
神子さまはなんか神妙な顔をしてるけど、別に神聖力なんて寝て起きたら回復してるものだし
最近は確かに使い過ぎたのかもだけど、水晶使うのを控えたらすぐに取り戻すよね。

「ご心配かけちゃってすみません神子さま」
「……リラ」
「はい?」
「………、いいえ。」

不意に首を横に振った神子に、リラは不思議そうな顔をする。


「無理はしないでくださいね」

「…?……はい!」


少し眉を顰めて微笑んだ彼の本心を知らないまま、
リラは無邪気に笑った。








感想 1

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