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【第二章】クリス×スカーレット編
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「これが、仮面舞踏会…」
噂でしか聞いたことのなかった秘密の夜会。皆が仮面で素性を隠し一夜の相手を求めて来場する、性を解消するための舞踏会。
(まさか、本当に存在するなんて…)
子を孕むにはここが最適だと思った。
クリス以外の人間に触れられると考えただけで鳥肌が立つけれど、ここなら私とバレずに相手を決められる。
目の前にある仮面舞踏会は自分が思っていたよりずっと低俗で性に赤裸々な場所だった。
壁やソファーの休憩場所に目をやれば部屋まで辿り着かなかった人たちがそこかしらで交わって、舞踏会の華やかなBGMには嬌声が混じって聞こえる。
わざわざ見せつけるようにそんな場所でしなくてもと思うが、他の人たちは何のことでもない素振りでワインを嗜んだり話しをしているので何も気にしてはいけないのだろう。
相手なんて誰でもいい。どうでもいい。
クリスでないのなら誰が相手でも私にとっては同じことだもの。できれば痛い思いはしたくないけど、一夜の我慢なら耐えよう。でも流石に親ぐらいの年齢はご遠慮願いたいわね。
じろじろと舐め回すような視線が身体に纏わりつく。
下品で、下劣で、クリスはきっとこんな場所近付くこともしないだろう。
(知られたくないな、こんなとこに出入りしたなんて)
私はきっと油断していた。
これまで何度もあの″真実の水晶″のせいで失敗してきたのに、
それでも学んでなかった。
だってクリスは女性が苦手で、私のことが大嫌いだから
こんな場所にいるはずがないと鷹を括っていた。
「こんばんは、お嬢さん。」
耳障りの良いテノール声に釣られ、振り向いてしまった。
ずっと話しかけられることに憧れてきたあの声にそっくりだったから。
「く、り…」
見間違えるはずがない、仮面で顔が隠れていても、髪色が帽子で隠れていても。
クリスにしか見えないその人は口端を歪めながら私の腕を掴んだ。
「なんでこんなところに居るのか、説明してもらおうか?」
クリスだ。
なんで、クリスがここにいるの?
腕がいたい。怒ってる。頭が熱い、ぐらぐらする。なのに、凄く寒い。全身から汗が噴き出すような感覚。
どうして、どうして、どうして、
「驚いた。あれほど俺のことが好きだと言っていたのに、嘘だったのか。」
(嘘じゃない、嘘なわけない、貴方が好きでずっとずっと狂いそうだった)
「俺が…女性を抱けないから、だから仮面夫婦か。ここで次の相手を見つけようと?」
(違う、全ては貴方を思ってしたことよ。貴方が幸せになるために、私が貴方の近くから居なくなるために)
「もしかしたら、もう次は決まっているのかもしれないな…。
でも流石にさ…、
用済みになったら捨てて。はいさよならなんて、
散々俺の人生をぶち壊しておいて
今更、虫が良すぎると思わないか?」
言葉が、言葉にならない。
見たことのない笑みをしたクリスが、私を見ている。
恐怖で喉が絞られてヒューヒューとか細い音しか鳴らさない。
あれほど憧れた真っ直ぐな青い瞳が、真っ黒に澱んで私を映す。
後退りした身体を抑えるように腰を支えられ身体が密着する。
あれほど憧れたのに、あなたの腕に抱かれることを夢見ていたのに、血の気が引いて足が震えてる。クリスが、怖い。
「逃げるのか、今更、俺から。」
「ごめ、クリス、ごめんなさい、わたし」
「…分かった。もう、何も言わなくていい。
さっさと部屋に行こうか。」
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