エデン~鳥籠編~

不知火美月

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第2章

第5話 北寄りの中央の森

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茂みに隠れて何分ぐらいだろうか。

ワイバーンの鳴き声や羽音どころかプレイヤーの悲鳴や気配さえも感じない。

ここに残っているのはもう俺だけなのか?

『お前にそんな価値ねーよ!』

「うるさい黙れ!」

じっとしている暇なんかない。情報だ。明らかに奴らよりも情報が足りない。なんでもいい情報が欲しい。

立ち上がろうと腰を上げると右膝と左の二の腕に痛みを感じた。見てみると鋭い岩が刺さっている。

さっき転がった時に刺さったのか。

それほど大きな傷ではないが痛みでとても木に登れそうにない。仕方なく元の場所に再び腰を下ろすしか無かった。

何をやっているんだ俺は…

このままだと傷が化膿して手足が使い物にならなくなるな。獣は来ないようだが、水や食料がなければいずれ死…

俺はどうして生きている?あの時死んだはずだ。

空には鉄格子。やはり鳥籠の中だ。

ここに居るという事は奴らに復讐する事もできる。

砂利地にワイバーン、グランドツリーに向かって走ったから北の森寄りの中央の森が現在地というところか。

俺の呪いが神様に通じたか?いや、無信仰者の俺が都合のいい時だけ神にすがるなんて図々しいにも程が

視界の隅に何か写った気がした。目を凝らすと2メートル程先に黄色く光るモノが見える。

脚をひきづって近寄るとそれは小さな白い花をつけた草だった。見た目は単なる雑草だが縁取るようにして全体から光を放っている。

どうせこのケガだ警戒するだけ無駄だろう。

光る草に手を伸ばし掴み取ると掌にすっぽり収まるくらいの一枚の葉になった。

一体何が起こったんだ!?

明らかに形が変わっているし、シュガーの時と同様葉の上に〈薬草〉の文字が浮かんでいる。

文字通りこれが〈薬草〉ならこのケガを治せるのか?

そんな馬鹿な… 

だが他に選択の余地は無い…

「もうこの際一か八か!生きるか死ぬかだ!!」

地面に座り込み、光る葉を見据えると葉をぐっと口の中へ押し込み、ゴクッと胃へ落とし込んだ。

すると身体中が一気に発熱し始めた。

「マジかよ!これ毒草だったのか!?ヤバイぞどんどん体温が上がってる。」

「このまま、また死ぬのか俺は…」

コトッ。

「ん?」

右尻辺りに何が転がった音がして見ると先の尖った石が転がっていた。よく見ると尖った先には血が付いている。

「まさか!?」

急いで右膝を確認するとさっきまで刺さっていた石は無く、それどころか傷跡1つ確認する事が出来なかった。

「こんな事って!」

次いで左二の腕も傷は確認出来ず、破れた服と血のシミだけが残っているばかりだった。

「まるでゲームみたいだ…うっ、」

『勝手に触るなよ!』

『ごめん、ちょっとやってみたくて』

『まぁ、ちょっとくらいならいいけどな。ちゃんと聞いてからにしろよ。』

『はーい。』

『ほら、そこ!そいつらを倒してから進むとやりやすいんだって!』

『やだよ!可愛そうだもん。攻撃してこないのに倒すなんてダメ!』

『面倒くさいなぁ…ゲームは戦うのが楽しいんだよ!』

『違うもん、色んなところに行けるのが楽しいの!大っきくなったらぜーったい、探検家になってドラゴンとかユニコーンに乗って大冒険するもんねー!』

『はいはい、そうですか。』

またか…変な記憶ばっかり思い出して、肝心なところが全然分からない。俺は一体どこの誰で、どうしてこんな所に来たのか。また、どこからどうやって来たのか。

こんな時間も場所もバラバラな記憶では拉致があかないぞ。

頭痛が治ると、体温も正常に戻っていた。

外傷だけで無く体力も回復するのか。

シュガーもこんな便利なアイテムがあるなら教えてくれればいいものの。

いや、もしかするとプレイヤーのみのアイテムなのかもしれないな。

『なんだ、丸腰かよ。』

まだ他にも有るのかもしれない。探してみるか。

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