6 / 20
第2章
第6話 水を求めて
しおりを挟むそれにしても暑いな…
歩いているうちに3枚程薬草を拾う事ができたが、暑さで喉が渇いてきた。
流石にこんな所に井戸は作ってないよなぁ。
東の森には川が流れてると言っていたが何の情報も無しに知らない土地に行くのは危険すぎる。
他のプレイヤーはどうしているんだ?
こんなに歩いても1人も出くわさないなんて…
一度上に登ってみるか。
太く立派な蔓が巻きついた登りやすそうな大木を上ってゆく。
木登りも大分板についてきたな。
途中の枝が混み合った所まで登ると木の葉が一枚青く光っている。
これは、アイテムか!
千切ると〈迷彩〉の文字が浮き上がった。
〈迷彩〉?青く光っているし回復アイテムじゃないのか。あと考えられるとしたら効果アイテムか装備アイテムかトラップアイテムって可能性も…
「とりあえず食べてみるか。」
口に入れようとするが入らない。例えるなら磁石の反発のように阻まれてしまう。
他にも握りつぶしたり、叩きつけたり、破ろうとしたりしたがことごとくダメだった。
「開け!ゴマ!」
「これもダメか。あと葉っぱといえば…まぁ違うだろうけど。」
昔絵本で狐や狸が頭に葉っぱを乗せて変化するなんてシーンが描かれていて、みんなで真似をして遊んだような。お?これも記憶か?
ぽんっ!
「うわ!何だ!?爆発した!?」
葉を頭に乗せた途端、全身を覆うほどの真っ白な煙が吹き出した。
煙はすぐに消えたが、服装が兵士の様な迷彩服へと変貌していた。
「〈迷彩〉ってそのままかよ。」
そういえば奴らもこんな服装をしていた気がする。
「これ、何が違うんだ?動きやすいし通気性も上がったみたいではあるが。」
これなら水が出てきてくれた方が遥かにマシだった気がするのだが。
ガサガサッ
地面の方から草を踏みつける音が聞こえる。
そっと枝陰から見下ろすと、ワイバーンが1匹獲物を探しているのか鼻を動かしながら辺りを伺っている。
見つかったらランチだな。
そういえば、コイツらは水分をどう補給しているんだ?
見た事も無いモンスターだが、生き物に変わりはないのだから水分が少なからず必要な筈だ。
飛び立つ様子も無いしついていってみるか。
木の上からワイバーンの後をつけて大分経つが全く此方に気づく様子は無い。
もしかしてこの服のお陰なのか?
中央の森の中だが、大分西の森に近づいてきている気がする。ファーストウルフまで出てきたら厄介だな…
そろそろついて行くのを諦めようかと思った時、ワイバーンが足を止めた。
気づかれたか!?
咄嗟に身を隠すが、目があった訳でもないしと向き直すとワイバーンが見当たらない。
どこへ行った!?
全身の血が引いて手や足先が冷たく凍りつく。
震える腕にぐっと力を込めてワイバーンを探すと前方の少し背の低い木に取り付いてガサゴソと何やら探っている。
喉に詰められた栓が外れ押さえ込まれていた空気が外へと吐き出される。
知らないうちに肩に力が入っていたのか、さっきよりも体が軽く感じた。
近づいてみるとワイバーンは何かを食べているようだ。
木の実…いや、果実か!
大きな実を1つ、また1つと口いっぱいに頬張っている。見たこともない果実だが、果汁をたっぷり蓄えているようで、それはワイバーンの大きな口でも収まりきらず口元から溢れ出ては地面に滴り落ちている。
その様子を見て喉が自然と音をたて、体が猛烈な乾きを訴えてくる。
このままここで生唾を飲んでいたらワイバーンに全て食べ尽くされてしまうかもしれない。
満を持して取りに行く事に決めた。
ワイバーンとは果樹を挟んで反対側で少し距離を取って地面に降りた。
幸い食事に夢中でこちらに気づく気配はない。
今のうちに距離を詰めておこう。
周囲の草木に隠れながら後1メートルという距離まで近づいた時、思いもよらない問題に直面する。
「あれ、絶対届かないよな。」
近くで見ると案外背丈がある果樹で果実は上の方にたわわに実っている。
登れば簡単に取れるが、確実にワイバーンに気づかれるだろう。
クソ~、ここまできて諦められるかよ!
そうしているうちにもワイバーンは実を貪りながら上へ上へと登っていく。
「アイツ、マジで全部食べるんじゃないか?そんなに食ったら腹下すぞ!何個か残して損は無いって!」
ギシッギシギシ
ん?あの木さっきより低くなってないか?
そうか!!ワイバーンの重みでしなってるのか!
これなら取れるかもしれない!
ギシギシギシ
ほらほら、上の実の方が赤く熟れて美味そうだぞ~。
いい子だ、登れ~、登れ~。
ギシギシガサガサッギシ
もう少し…もう少し…。
薄桃色にふっくら膨らんだ実が今にも落ちんばかりにフワリフワリと揺れている。
パキ、ガサガサガサガサ、ギシシッ
「今だ!!」
草陰から飛び出ししなり曲がった木の枝葉に隠れつつ、頭くらいある果実を3つ摘み取り、すかさず草陰まで戻る事が出来た。
「ありがとな、お前について来て正解だったぜ。」
果樹に夢中なワイバーンに別れを告げて森の奥へ身を隠す事にした。
「そろそろいいかな?」
果樹からも大分遠ざかっただろうし、あまり進むと西の森に入りそうだ。
その時、一際大きな大木が目に入った。
大木の根元は地面に行き場を無くしたのか立派な根が地上に這い出している。
根と根の隙間に体を滑り込ませると中はちょっとした空間になっていた。
これは丁度いいシェルターになりそうだな。
小石や砂を手で払い飛ばし果実を置くと、隣に腰を下ろした。
「はぁ~。」
自然と吐き出された息に自分が疲れていた事を実感する。
そういえば、全然休憩を取っていなかったな。
隣から果実の甘い良い香りがする。
思わず垂れそうになった涎を拭うと、1つ掴み取り表面を服で拭ってかぶりつく。
甘く爽やかな果汁が口いっぱいに広がり、喉を通って体中に染み渡っていく。
「これは美味い!アイツが夢中になるのも分かるな!食感は林檎で、味は桃といったところか。これだけ果汁を蓄えていれば水分補給に使えそうだ。」
綺麗に平らげると中から大きな種子が1つ出てきた。
種子は硬く食べられそうにないため残り2つの隣に転がすと、だんだん眠気が襲ってきた。
大の字で寝転がってみると分厚い根肌が顔に見える。
「静かだな。」
隙間々から入り込む光が夜空の様に美しく輝き、土の香りが干したての布団の香りと重なって、疲れた体と怯える心を包み込んでいった。
隣から果実の甘い良い香りがする。
思わず垂れそうになった涎を拭うと、1つ掴み取り表面を服で拭ってかぶりつく。
甘く爽やかな果汁が口いっぱいに広がり、喉を通って体中に染み渡っていく。
「これは美味い!アイツが夢中になるのも分かるな!食感は林檎で、味は桃といったところか。これだけ果汁を蓄えていれば水分補給に使えそうだ。」
綺麗に平らげると中から大きな種子が1つ出てきた。
種子は硬く食べられそうにないため残り2つの隣に転がすと、だんだん眠気が襲ってきた。
大の字で寝転がってみると分厚い根肌が顔に見える。
「静かだな。」
隙間々から入り込む光が夜空の様に美しく輝き、土の香りが干したての布団の香りと重なって、疲れた体と怯える心を包み込んでいった。
ザザザッ、フゥーフゥー。ィーー!
コツッ。
「う!な、何だ?痛え~。」
額に衝撃を受けて目を覚ました。
上から小石が落ちてきたのか、どれくらい寝てたんだ?
ザザッザザザザ。
何かいる!獣か!?もしかして果実の香りを嗅ぎ付けてきたか!?
根の隙間から外を覗くが生き物の姿は確認出来ない。
どうする、外に出るか?ここで様子を見た方がいいか?果実を外に放れば気をひく事が出来るかもしれないが…
あれこれ考えているうちに外は静かになっていた。
「行ったのか?」
このシェルターに守られたのだろうか?
だが、また戻ってくる可能性はある。運が悪ければ仲間を引き連れてくるかもしれない。
「仕方ない、移動するか。」
数分考えて移動する事に決めた。
体についた土埃を払い落とし、果実を2つ抱えて木の根から這い出す。
暗い所で目が慣れてしまったのか、外はとても明るく感じた。
日差しの反射に目を細めつつも、周囲を警戒してまずは、この大木の周辺を歩いてみる事にした。
さっきの音は何だったのだろう…
ワイバーンやファーストウルフの足音とはまるで違っていた。もしや新しい獣か?
「こんな事なら、シュガーにもっと聞いておくんだった。」
ここを曲がれば丁度半周か、そろそろ別の場所へ移動してもいいだろう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。
古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。
頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。
「うおおおおお!!??」
慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。
基本出来上がり投稿となります!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる