エデン~鳥籠編~

不知火美月

文字の大きさ
8 / 20
第2章

第8話 滞在拠点

しおりを挟む

とまぁ、何だかんだでトトこと、傷だらけだったワイバーンと行動を共にする事になった訳だが。

「キー!キー!」

「ダメだ!散々試したろ?中には入れないんだ!トトは外、俺は内!」

俺たちは最初に見つけたこのシェルターを拠点になんとか生活を続けていた。

人間が生活する上で最低限必要な物は、〈衣、食、住〉の3点と言われている。

まずは〈衣〉だが、これはアイテムの効果なのか汚れや破損は数時間程度で元に戻るのを確認したので解決した。

次に〈住〉は運良くも木の根がシェルターの役割りを果たしてくれている。ファーストウルフなら何とか入れなくも無いが、〈迷彩〉の効果で俺の存在は薄くなっている上、トトが木の根元を寝ぐらにしている為そうそう寄り付く事は無い。

最後に〈食〉だが、これが一番厄介だと思っていた。ここに着いてまず考えたのが食の問題だ。唯一の食料だった果実は全て使ってしまっていたからだ。

栄養と水分をいかにして手に入れるか。

俺はシェルターへ向かう道中からずっとこの議題で頭を悩ませ続けていた。

あの果樹を見たのは一度きりでそう沢山生えているものではなさそうだ。周りを見回しても他に食べられそうな物は無い。

トトに乗れば井戸まででもそう時間はかからないとも考えたが、あのじゃじゃ馬をコントロールするには時間がかかるだろう。

「キー!」

「こら、今はお前を相手にしている暇は無いんだ。あっちで遊んでこい!」

「キー!キー!」

「ったく、お前は呑気でいいなぁ。シェルターに入ってゆっくり考えるとするか。」

トトといえば、道中に戯れつかれた際、頭の所に文字が浮かび上がっている事に気付いた。

星印と〈ワイバーン〉。

これは、シュガーの時と同じだ。

何か一定の条件を満たすと仲間にするシステムでもあるのだろうか?

「いや今はそんな事考えている場合じゃないだろ!」

シェルターに潜り込むと、少し土埃が舞っている。鼻を押さえて手でホコリを掻き分けながら状態を確認する。

特に変わった様子は…

足下でキラリと何かが輝いた気がしてしゃがみ込み、少し辺りの土を払うと白く光る物が一つ転がっている。

拾い上げて見ると、

「〈桃林〉?」

木の実のようだが、白く光っている。

何のアイテムだ?白色は初めてだ。

〈桃林〉なんて聞いたことも無いし…

此処では暗くてよく分からない一旦外に出てみるか。

陽の下に出して見ると、やはり木の実のようだ。こんな物前に来た時は落ちていなかったと思うんだが?

「キー!」

「トト!今は忙しいんだ、ん?これが気になるのか?」

トトは木の実を見るなり舌をチョロチョロとさせて確かめる仕草をした。

ジュルリ…。

「こらこら!食べちゃダメだぞ!?」

「キィーーー!」

「ちょっ!うわぁあ!!」

トトに突進された勢いで〈桃林〉は宙を舞い、地面へと落ちた。

「トト!黒板の音は出すなって言ってるだろ!!」

「!!シャーーー!!」

後方に飛び退いてこちらに威嚇するトト。

「ん?一体何があるって」

振り向くと同時に地面が強く発光した!

「な、何だ!?!?」

慌てる俺の襟元をトトが後ろへ引くと、見る見るうちに光源から木が生え出した。

それはあっという間に立派な木となり、甘い香りを周囲に撒き散らしながら、大きな花をいくつも咲かせた。

「ん?この香り何処かで」

「ジュルリ…」

花は萎み、丸く熟した果実が山のように実った。

「あれはあの時の!!」

「キィーーーーー!!」

耳障りな音を立てながら勢いよく気に飛びつくトト。

いけない!このままじゃ全部食べ尽くされる!!

「トト!!待て!ストーップ!!」

全く聞く耳を持たない。

仕方ない!

果実を何個かちぎり取ってはシェルターまで持っていき、蓄える事ができた。

「ふー、よし!これくらいあれば当分保つかな。」

バキン!!!!

さっきまで立派に立っていた木は無惨な姿へと変貌していた。

「トト!」

「キュイ?」

「どうするんだよ、木を倒したらもう実らないんだぞ。」

「キュイ?」

「はぁ~。」

トトの胃袋を満足させるのに1日にあの木一本なんて無理な話だぞ!

ワイバーンは雑食と言っていたが、トトが狩をしてきたのは見た事がない。群れではなく単独で、しかも負傷していたところを見ると何か訳があるのだろうが…

「ベジタリアンってやつか?なんて。」

取り敢えず、俺も腹ごしらえをしないと。

シェルターに戻って1つ果実を食べる。

やっぱり美味いなこれ。

食べ終えると種が1つ残った。

そういえば、この果実種が入ってたな。

前も出てきたが硬くて食べられそうになくて、

「あーーー!」

よく見るとさっきの木の実と同じ形状大きさ。

そうか、さっきのはコイツの種だったんだな!

だが白く光ったり文字も見えない。

取り敢えず下に置いて、じっと観察して見る事にした。

数時間後……

「ん、眩しい……」

疲れが溜まっていたのか、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

見ると予想通り、光る木の実〈桃林〉が出来ていた。

なるほど、種を乾燥させるとアイテムになる訳か!

さっきの果実は桃林という種類で、コイツを地面に投げると木が生える。

「これで、〈食〉問題もめでたく解決かぁ!」

両手を上げて後ろに倒れ込む。

やはり気、体力共に疲れているみたいだ。

一眠りするとするか……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...