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運命のつがい
運命との出逢い
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この世界には男女の性別だけでなく、α、β、Ωという第二の性がある。人口の大半はβであり、Ωは一割ほど、αはΩよりやや少ないくらいの割合だ。
知能と身体能力が高いαはエリート、世界の人口の大半を占めるβは一般人、発情期があり小柄な者が多いΩは劣等種と見做されていて社会的地位が低い。それは平等を謳われる現代でも変わらず、会社などでΩが出世して重要なポストに就くことはなかった。
しかし、ヒエラルキーで下位の筈のΩは、上位のαを魅了する。αとΩは個々に匂いを持っていて、発情期になるとΩは匂いのもとである濃厚なフェロモンを発し、αの理性を奪うのだ。
だがそれは、Ωが番を得るための自然の摂理だ。Ωには子供を生むための生殖機能が備わっており、αとならば発情期の性交によって子供が生めるのである。
Ωは、αにうなじを噛まれて番となる。誰かと番になるその日まで、発情期に濃厚な香りの網を蜘蛛のように広げて周りのαを捕らえ続けるのだった。
そんなαとΩだが、彼らにはこの広い世界の何処かに自分だけの〈運命の番〉が存在しているという。
それは一目見ただけで分かる、惹かれずにいられない魂の半身。
だが相手に巡り会える確率など滅多にありもせず、大抵の人は出会わないまま他の人と恋をして番ってしまう。すると、もしすれ違ってもフェロモンが互いを認識できずに運命の相手だと分からない。
世界中でたった一人、まだ見ぬ自分を待っている相手。
きっと一生出会えない。だけどどこかにいる相手。その人への想いはほろ苦い甘さを含む。
そんな相手との偶然の出会いは現代のおとぎ話と呼ばれ、番のいない α、Ω の憧れであった。
大学生の僕、日野 晶馬もおとぎ話に憧れている1人だ。
性種はΩなんだけど、痩せ気味の体と地味めな顔があまりΩっぽくないらしく、発情期もまだ来たことがないのから、現在は抑制剤の必要もなくて気楽に大学生活を送っている。
だけどΩである以上、発情期も来るし子供も生まれる。その相手が心も体も惹かれ合うという運命の番だったらどんなに幸せなことだろう。
でもそんなことはありえないからおとぎ話なんだよね……と憧れを抱きつつも半ば諦め、学生生活を送っていたら、ある日、学食でとある人を見た途端、
「えっ?」
痺れが走り、目が釘付けになった。
相手もこちらをみて同じように固まったが、途端に眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように呟いた。
「うわ、やべ。会っちまった。俺オッパイ大好きなのに男かよ、クソッ。しかもなんだよ、陰気くせえ。お前ホントにΩ?こんなんが俺の番とか、ありえないだろ」
「あ……え?……え?」
いきなりのことに呆然としていると、男はじろじろと僕を観察して一方的に喋りまくった。
「出会っちまったもんは仕方がない。お前、発情期まだ来てないだろ、匂いが違うもんな。来たら呼べ、相手してやるよ。運命の相手とヤるのは最高にイイらしいからな。楽しみにしてるぜ」
それから僕に携帯を出させると、手早く連絡先を登録し、
「それまでは近づくなよ。視界に入ったらどうしてもガン見しちまう。万が一にも他のΩに勃たなくなったらやべえからな」
それだけ話すと、用はないとばかりに元にいた集団に戻っていった。
そこにはαの人達が集っていて、これまたΩと分かるアイドル似の可愛い人達や、小柄でグラマラスな人達なんかがいて、とても煌びやかだった。
いきなりの展開に僕の頭の中は真っ白だった。だけど、その集団の中に藤代先輩を見つけてハッとなる。
――見られた!
こんなところを見られるなんて!まさか、話は聞こえてないよね。ヒートの相手の予約なんて、聞かれてたら恥ずかしくて死んじゃう!
藤代先輩は、ゼミの合同飲み会で顔を合わせたことのある先輩だが、学年が違うからあまり接点はない。驚いた表情でこっちを見てた藤代先輩にいたたまれなくなって、僕は学食から逃げ出した。
知能と身体能力が高いαはエリート、世界の人口の大半を占めるβは一般人、発情期があり小柄な者が多いΩは劣等種と見做されていて社会的地位が低い。それは平等を謳われる現代でも変わらず、会社などでΩが出世して重要なポストに就くことはなかった。
しかし、ヒエラルキーで下位の筈のΩは、上位のαを魅了する。αとΩは個々に匂いを持っていて、発情期になるとΩは匂いのもとである濃厚なフェロモンを発し、αの理性を奪うのだ。
だがそれは、Ωが番を得るための自然の摂理だ。Ωには子供を生むための生殖機能が備わっており、αとならば発情期の性交によって子供が生めるのである。
Ωは、αにうなじを噛まれて番となる。誰かと番になるその日まで、発情期に濃厚な香りの網を蜘蛛のように広げて周りのαを捕らえ続けるのだった。
そんなαとΩだが、彼らにはこの広い世界の何処かに自分だけの〈運命の番〉が存在しているという。
それは一目見ただけで分かる、惹かれずにいられない魂の半身。
だが相手に巡り会える確率など滅多にありもせず、大抵の人は出会わないまま他の人と恋をして番ってしまう。すると、もしすれ違ってもフェロモンが互いを認識できずに運命の相手だと分からない。
世界中でたった一人、まだ見ぬ自分を待っている相手。
きっと一生出会えない。だけどどこかにいる相手。その人への想いはほろ苦い甘さを含む。
そんな相手との偶然の出会いは現代のおとぎ話と呼ばれ、番のいない α、Ω の憧れであった。
大学生の僕、日野 晶馬もおとぎ話に憧れている1人だ。
性種はΩなんだけど、痩せ気味の体と地味めな顔があまりΩっぽくないらしく、発情期もまだ来たことがないのから、現在は抑制剤の必要もなくて気楽に大学生活を送っている。
だけどΩである以上、発情期も来るし子供も生まれる。その相手が心も体も惹かれ合うという運命の番だったらどんなに幸せなことだろう。
でもそんなことはありえないからおとぎ話なんだよね……と憧れを抱きつつも半ば諦め、学生生活を送っていたら、ある日、学食でとある人を見た途端、
「えっ?」
痺れが走り、目が釘付けになった。
相手もこちらをみて同じように固まったが、途端に眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように呟いた。
「うわ、やべ。会っちまった。俺オッパイ大好きなのに男かよ、クソッ。しかもなんだよ、陰気くせえ。お前ホントにΩ?こんなんが俺の番とか、ありえないだろ」
「あ……え?……え?」
いきなりのことに呆然としていると、男はじろじろと僕を観察して一方的に喋りまくった。
「出会っちまったもんは仕方がない。お前、発情期まだ来てないだろ、匂いが違うもんな。来たら呼べ、相手してやるよ。運命の相手とヤるのは最高にイイらしいからな。楽しみにしてるぜ」
それから僕に携帯を出させると、手早く連絡先を登録し、
「それまでは近づくなよ。視界に入ったらどうしてもガン見しちまう。万が一にも他のΩに勃たなくなったらやべえからな」
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いきなりの展開に僕の頭の中は真っ白だった。だけど、その集団の中に藤代先輩を見つけてハッとなる。
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