おとぎ話の結末

咲房

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アラビアンナイト

緑の葡萄

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 どのくらい経ったのだろう、隣が沈んだ気配で目が覚めた。
 いつの間にかベッドから起き出していたりぃが戻ってきたみたいだ。僕は寝返りを打ち、温もりを求めて寄り添った。
 りぃの手が頬に掛かった髪を後ろに流した。大きな手に優しく触れられて、気持ちがいい。
 ここで過ごしてきた時間はたった一日の気もするし、ずっと昔からこうだった気もしている。
 ずっとこうしていたい……また微睡みかけていたら、

「起きて?晶馬くん……」
「びゃっ」

 耳に吐息混じりに声を掛けられて首筋がざわっとなった。
 びっくりしたぁ。
 発情期ヒートのりぃは色気が半端ない。熱に浮かされた気だるげな声が艶っぽくて、何気ない会話でも腰に響く。
 りぃはゆるくバスローブを着ていた。シャワーを浴びたらしく、胸筋には滴がまだ残っている。まだ半分濡れている髪を後ろに掻き上げて額を露わにしていて、いつもと違って大人の男の人みたい。色っぽ過ぎる…………うん?
 ふと見ると弛んだバスローブの合わせ目から薄く色付いた乳首が覗いていた。隙間からチラリと見えるそれに気付いたら、張り付いたようにそこから目が離せなくなった。
 固くツンとしてる……可愛い。舐めたらどんな味がするかな……

「冷た!」

 いきなり唇にヒヤリとした何かが当てられた。びっくりして胸元から目を剥がして唇を見れば、それは艶やかな緑のブドウだった。
 りぃがクスクスと笑っている。イタズラ大成功って顔だ。乳首、わざと見せたね?
 その果実は僕が知るより縦長で、皮ごと食べられる外国産の種なしブドウだった。
 たわわに実った房から一粒もがれて口に当てられると、ヒヤリと冷たく、プルリとしていた。

「くち開けて?」

 少しだけ開けたら弾力のある実がつるりと押し込まれた。薄い皮をプツッと噛み切ると瑞々しい香りが鼻を抜け、酸味が混じった甘い果汁が口いっぱいに広がった。咀嚼してぷりっとした歯ごたえと溢れ出る甘い汁を味わい、ゴクリと飲み込んだ。
 冷たい果汁が喉を通っていく。
 二個目、三個目と続けて唇に押し当てられ、夢中になって咀嚼して飲み込んだ。
 そうか、僕はのどが乾いてたのか。
 せっせと餌を運ばれるヒナのように口を開けて食べた。

「美味しい?」

 うんうん。すごく美味しい。

「味見させて」

 味見?

 また押し当てられた粒を条件反射で口に入れて皮を噛んだら、果汁が口いっぱいに広がった。
 するとりぃが舌を差し込んできて、僕の口の中の果汁をすすり、口付けしたままこくりと飲んだ。
 そのまま舌の上にあったブドウ越しに舌を絡め、唾液と混ざりあった果汁を再び嚥下した。

「ん……」

 僕の口の中にあった果肉は、僕の舌とりぃの舌で転がされた後、りぃの口へと奪われていった。

「はぁっ、」
「ほんとだ、美味しい」

 果肉を咀嚼したりぃが、甘いね……と口周りをぺろりと舐めた。

 はぁ、はぁ……

 うん、りぃの舌、甘かった。
 果汁はりぃの舌で混ぜられてワインのように僕を酔わせた。りぃの舌に翻弄されて息が上った僕は、彼の唇の上で翻る舌をぼんやりと見ていた。
 フラリと伸び上がり、舌を追って口内に侵入する。
 あった。ブドウより広くて、柔らかくて暖かい果実。

「んぅ……」

 触れて味わっていると絡め取られてきつく吸われ、舌が痺れた。

 クチュッ、クチュッ

 濡れた音が口の中から頭に直接聞こえる。鼻で息をしたらりぃのフェロモンが牙を剥いて僕に襲い掛かった。
 クラクラする。
 ワインとフェロモンと耳奥に聞こえる水音。僕の脳はとろんと溶けた。

 今度はりぃがブドウを咥えて顔を寄せた。唇の合わせ目で歯で割ろうとしたら、ブドウはツルリとりぃの口の中に落ちていった。追いかけたら、先にりぃが口の中で割ったので、舌を絡めて果肉と汁を分け合いっこした。
 りぃがそのうち一粒の果肉をぐしゃりと手で潰して、僕の胸に擦り付けた。

「つめた……あ、んんっ……ひゃっ」

 弾力のある果肉で胸の突起を引っ掻くようにくるくると捏ねられ、痛いくらいに感じて仰け反った。乳首はツンと固く尖り、周りは汁でぬらぬらと光っている。
 りぃがべたべたになったそこを今度は舌で舐め始めた。

「あっ、あんっ」

 粒を撫で上げられるたびに甘い声が出る。りぃが綺麗に舐め終わり、唇を舐めた。

「おいし。晶馬くんもする?」
「はぁ、はぁ……うん。するぅ」

 同じように胸に塗ると思っていたら、りぃは股間で果肉を潰した。
 僕、そこをぺろぺろしていいの?
 くったりとなった僕はのろのろと這って吸い付くように股間に顔を寄せた。
 弓なりに反ったりぃの分身をぺろりと舐めると、分身はピクリとノックした。
 あ、感じた?
 ふふっ。もっと舐めてみる。

「ん……はぁっ」

 りぃ、気持ちいいんだ。嬉しい。
 膨らんだりぃの分身はずしりと重く、片手に納まらなかったので両手で包んだ。太くて固い芯の周りを薄い皮膚がおおって、そこに血管と筋が浮き出ている。立派にエラが張って先っぽも綺麗な曲線を描いている。おっきいなあ。それにこんなとこまでも芸術的。
 しっとりとした分身からはフェロモンが溢れていた。ブドウの匂いと混ざった甘い芳香が鼻をくすぐる。
 誘われて周りを被う柔らかな皮を舐める。固い芯も、つるりと丸い尖端も、血管のぼこぼこも窪みの曲線も、余すところなく舌で辿る。
 ぼく、これ好きだ。おいしい。りぃの吐息が気持ち良さそうで嬉しい。

「はぁ……食べないの?」

 ずっとぺろぺろしていたら、うっとりとしたりぃが薄目で聞いた。
 たべてもいいの?
 舐めながら見上げると、目が合ったりぃは、う、と呻いた。言葉の代わりに舐めてた分身がいいよ、とノックする。
 僕はかぷりと食いついた。口いっぱいに頬張ってちゅうちゅうと吸い付く。なのに全然口に納まりきらない。
 りぃの、大きいよ。
 全部食べようと奥まで咥えたら嘔吐えづきそうになった。

「無理しないで。充分気持ちいいよ……」

 りぃが髪を梳くように僕の頭を撫でながら呟く。やだ、もっと食べる。咥えたままイヤイヤをして何度も奥まで往復させた。

「はぁ……いい子。晶馬……私の晶馬」

 気だるげに力を抜いて僕に身を預けてくれる。こんな姿、絶対誰も見たことないよね。僕だけの特等席だ。
 潤んだ瞳と上気した頬。うっとりと気持ちよさそうな表情。田中くんはりぃをエッチなことしそうにないって言ってたけど、こんなに色っぽくてエッチだよ。
 でも僕だって先輩として憧れてた時は高潔な人に見えて、性交なんて生々しい想像は出来なかった。
 清廉で美しい天上人。その高貴なオーラと優しい人柄に惹き付けられ、行く先々に人が集まる。
 頭が良くて優しい、尊敬する僕の先輩。大好きな僕の先輩。その先輩と僕は今……

 ……あれ?

 僕、今何してるっけ?
 えっ、ちょっと待って、この口の中にあるものはいったい……

「晶馬……私の可愛い小鳥……」

 脳髄が蕩ける甘い声。上気した頬で汗とフェロモンを振りまく無防備な肢体。茫洋とした目で紡がれる睦言。
 かーっと頭に血が上った。

 エッチの最中じゃないか!
 ど、ど、どうしよう

 とりあえず先輩の息子さんを口からゆっくりと出し、先輩が羽織っていたバスローブで唾液まみれの息子さんをそっと拭いた。

「晶馬……?」

 ギクリ。
 恐る恐る目線を向けると、夢見るように茫洋としていた先輩の目が僕を見た。
 だんだんと焦点が合ってくる。

「……晶馬くん?」
「……はい」

 先輩が目をぱちぱちさせた。

「正気に戻っちゃったんだ……そうか、今日で七日目か。もうすぐ発情期ヒートが終わるんだね」

 いたたまれない。こんな時に理性が戻ってくるなんて。
 僕はベタベタしてる自分の胸と半勃ちになっていた自分の息子をシーツで隠した。
 色っぽ過ぎる先輩のお姿も直視出来ずにぎくしゃくと目を逸らす。
 可愛い……って微笑まれて、ますます赤くなる。
 もうホント。ホントいたたまれないです。
 お願いです、こっち見ないで下さい。

「でもちょうど良かった、お願いがあったんだ」
「お願い?」

 今?
 先輩はにっこりと笑った。

「うなじを噛ませて欲しい。噛みながら入れたい」
「えっ」

 まだするの?うなじ噛みながらって……
 そういえば身体中に甘噛みされたり吸われたりであちこちにキスマークが付いてるけど、うなじは噛まれていない。
 うなじはつがいになる時に噛む大切な場所だ。そしてすっごくデリケート。この発情期ヒート中にも軽くキスされたけど、それだけで体中が震えた。

「お願い」
「んっ」

 頬をさらりと撫でられただけなのに強い刺激に感じる。頭ははっきりしたのに、体はまだ発情中らしい。
 無理だ。
 こんな状態で噛まれたら頭おかしくなる。
 僕は首筋を両手で覆っていやいやと首を振った。

「お願い、晶馬くん」

 じっと見つめられる。絶対ムリ。固い意思でふるふると断る。
 綺麗な顔が近づいてきた。

「……」

 ふるふる。断固として断る。

「お願い……」

 先輩の綺麗な瞳が僕を見つめている。

 断固として……
 断固と……

 負けた。
 先輩の本気のお願いに僕が敵うはずがない。僕はしぶしぶ手を外して後ろを向き、四つん這いになってベッドに頭を付けた。

「ありがとう……大切にする」

 ん?大切にする?
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