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それぞれの明日
秘薬・2〈 side.淳也 〉
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二階のカフェテリアに日野晶馬を呼び出して藤代と別れろと迫ったが、強情を張るので強行手段に出ることにした。ウチの秘蔵の惚れ薬を飲ませてやる。
僕の後ろにいた奴に羽交い締めにさせて顎を掴み、にぃっと笑って誰にも聞こえないように囁いた。
「これは惚れ薬さ。相手にはあんたに相応しい下衆を用意しといてあげたよ。素直に離れとけばそんなのと番わなくて済んだのにね」
うちの秘薬はとても強力で、一度飲んだらその相手と二度と離れられなくなる。
そう、まるで運命の番のようにね。
日野が口を引き結び、顔を逸らして顎の手から逃れようとしたので更に強い力で上を向かせて唇をこじ開けた。
「どうする?あの人諦める?」
キッと睨み返す日野。あーあ、残念だね。そんな顔しても何も出来ないじゃん。
「そ。じゃあ新しい相手とお幸せに」
心底楽しくなり、笑いながら紙コップを傾けていった。縁から薬入りのコーヒーがタラタラと零れていく。
ふふ、ふふふ……。これであの稀少種は僕のものだ。
バッ
その瞬間、誰かの手が日野の口を覆った。唇に触れる寸前だったコーヒーがその手に阻まれて床に流れる。もう一方の手が僕の手の上から紙コップを掴んだ。
「誰だ、お前!離せ、邪魔するな!」
「おイタが過ぎたね」
そいつは日野を羽交い絞めから逃すと、腕を後ろ手に捻り上げて僕を拘束した。今度は逆に紙コップが僕の口に当てられる。
「やめろ、やめ、うっ、やめろ!」
口を閉じて抵抗しても細身の老人とは思えない強さで器用にこじ開けられる。
どんなに抗ってもびくともしない。抗えずに口に含まされ、飲み下しを強要された。
ゴクッ
コーヒーが胃に落ち、しばらくしてからやっと体を解放された。すぐに嘔吐いたが、もう液体は出てこなかった。
「ゲエッ、ゲエッ」
「よくこんな古い薬を飲もうと思ったよね。僕ならお腹壊すのが怖くて飲めないよ」
「なっ、」
先祖代々の秘宝を鼻で笑われてカッとなる。
「いいことを教えてあげようか。その薬は本物だよ。惚れ薬なんてなま優しいものじゃない、互いを運命の鎖で縛る薬だ。おめでとう。お前にも運命の相手が出来たんだよ」
「え」
老人は柔和な顔で祝福を述べたが、目はゾッとするように冷たかった。
その人ならざる雰囲気に、それが真実だと本能が理解した。
「望まぬ者が運命の相手だった悲劇は、君もよく知ってるよね」
知っている。高村と日野だ。ボロボロになっていく日野を僕は可哀そうにと嗤っていた。
そんなバカな!冗談じゃない、もう一本はどうしようもないクズに飲ませている。あんなのと番ったら破滅する!
「さて、薬の始末も終わったし、私はもう行くよ。いいタイミングで君の迎えも来た事だしね」
老人が去ると、後ろから僕を呼ぶ声がした。
「淳也さん、まだっすか~。いつになったらヤリ放題のΩと会わせてくれるんすか」
「ひっ」
「あれ、あんた……何だよ、そういう事かよ」
「来るな!俺を見るな!向こうに行ってろ!」
「つれないな。アンタと俺の仲だろ」
「ふざけるな、こっちに」
グイッと引かれて思わず奴の顔を見てしまった。
「来る、な……」
その瞬間、俺は恋に落ちた。
僕の後ろにいた奴に羽交い締めにさせて顎を掴み、にぃっと笑って誰にも聞こえないように囁いた。
「これは惚れ薬さ。相手にはあんたに相応しい下衆を用意しといてあげたよ。素直に離れとけばそんなのと番わなくて済んだのにね」
うちの秘薬はとても強力で、一度飲んだらその相手と二度と離れられなくなる。
そう、まるで運命の番のようにね。
日野が口を引き結び、顔を逸らして顎の手から逃れようとしたので更に強い力で上を向かせて唇をこじ開けた。
「どうする?あの人諦める?」
キッと睨み返す日野。あーあ、残念だね。そんな顔しても何も出来ないじゃん。
「そ。じゃあ新しい相手とお幸せに」
心底楽しくなり、笑いながら紙コップを傾けていった。縁から薬入りのコーヒーがタラタラと零れていく。
ふふ、ふふふ……。これであの稀少種は僕のものだ。
バッ
その瞬間、誰かの手が日野の口を覆った。唇に触れる寸前だったコーヒーがその手に阻まれて床に流れる。もう一方の手が僕の手の上から紙コップを掴んだ。
「誰だ、お前!離せ、邪魔するな!」
「おイタが過ぎたね」
そいつは日野を羽交い絞めから逃すと、腕を後ろ手に捻り上げて僕を拘束した。今度は逆に紙コップが僕の口に当てられる。
「やめろ、やめ、うっ、やめろ!」
口を閉じて抵抗しても細身の老人とは思えない強さで器用にこじ開けられる。
どんなに抗ってもびくともしない。抗えずに口に含まされ、飲み下しを強要された。
ゴクッ
コーヒーが胃に落ち、しばらくしてからやっと体を解放された。すぐに嘔吐いたが、もう液体は出てこなかった。
「ゲエッ、ゲエッ」
「よくこんな古い薬を飲もうと思ったよね。僕ならお腹壊すのが怖くて飲めないよ」
「なっ、」
先祖代々の秘宝を鼻で笑われてカッとなる。
「いいことを教えてあげようか。その薬は本物だよ。惚れ薬なんてなま優しいものじゃない、互いを運命の鎖で縛る薬だ。おめでとう。お前にも運命の相手が出来たんだよ」
「え」
老人は柔和な顔で祝福を述べたが、目はゾッとするように冷たかった。
その人ならざる雰囲気に、それが真実だと本能が理解した。
「望まぬ者が運命の相手だった悲劇は、君もよく知ってるよね」
知っている。高村と日野だ。ボロボロになっていく日野を僕は可哀そうにと嗤っていた。
そんなバカな!冗談じゃない、もう一本はどうしようもないクズに飲ませている。あんなのと番ったら破滅する!
「さて、薬の始末も終わったし、私はもう行くよ。いいタイミングで君の迎えも来た事だしね」
老人が去ると、後ろから僕を呼ぶ声がした。
「淳也さん、まだっすか~。いつになったらヤリ放題のΩと会わせてくれるんすか」
「ひっ」
「あれ、あんた……何だよ、そういう事かよ」
「来るな!俺を見るな!向こうに行ってろ!」
「つれないな。アンタと俺の仲だろ」
「ふざけるな、こっちに」
グイッと引かれて思わず奴の顔を見てしまった。
「来る、な……」
その瞬間、俺は恋に落ちた。
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