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6話
6話「罪深きお茶漬け」【1/3】
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目の前を転々と流れる夜の明かり。右から左へ、沿線のお店や民家の賑やかな明かりが流れては消えてまた現れる。つり革を掴み滅多に見るこのない都会の夜の景色を流し見る私の横には彼女、榊 奈央さんがいる。目的は最後の話し合い、先週の自転車事故に関する示談の話し合いだ。そのような話をファミレスや居酒屋のテーブルでする訳にもいかず、向こうからの場所の提案も無かったので、私達はまたお互いに最初に対面した私の家に向けて進路を取っている。
話すことは無い、会話という意味でも話題という意味でも。着古したダウンと角の擦れたリュックサックにラー油の香りを漂わせる女と、スーツにジャケットばっちしメイクで身を固めた敏腕キャリアウーマン(死語)とでは、たとえ隣り合っていても傍目で知り合いだと思う人ようなほとんどいないだろう。それにその印象は殆ど事実だ。初対面でないというだけで私は彼女とは知り合いでも友達でも……ましてや、恋人でもない。ただの加害者と被害者の関係、やられた側に大いに温情を掛けてもらっている情けない人間でしかない。勝手にその生き様に憧れて、勝手に淡い気持ちを抱かれて、そして勝手に相手に怒っているだけのそんなどうしようもない人間だ。そんな奴がこんな立派な人の隣に立つことが許されている。これだけでもこの社会は平等だと言えるだろう、少ないとも形だけは。
「ウッく───」
載っている電車はさっきのバスよりも揺れる気がした。こんな日常的な乗り物にすら乗り慣れず、接し方も分からないナリに必死につり革を握りしめていても足元からの振動で体勢を崩しかけて思わず声が漏れる。幸い帰宅時間帯の隙間で車内には大分余裕があったから誰かにぶつかることは無かった。誰かの足を踏んでしまうようなことが無くて良かったと今は心から思えている。
「……」
「あっ──」
こういう人の足を。よろめいた私に静かに差し出されていた手の平に気づいたのは、それが申し訳なさそうに引っ込められた後だった。頭1つ分以上高いところから私を見下ろしていたあの瞳は、ただ純粋に私を心配してくれていたものだったと思う。私はこの瞬間にまた、私を活かそうとしてくれる人の善意を踏みにじったのだ。
あぁ……嫌んなる
「───まもなく磐田駅に停車します。お降りの方は……───」
「……次で降ります」
返事は無い、私も求めてはいない。あと数時間もすれば何の関係も無くなる者同士、これ以上余計なやり取りはしないという事……なのかな……?
速度が落ちてレールの上を走る振動が強く伝わってくる。いつの間にか電車の外には明かりが減って乗客もかなり少なくなっていた。浜松から磐田まで40分近い時間、その時間が一瞬に感じられるほどに私は私の頭の中に引きこもり、あぁでも無いこうでもないと問答を繰り返していたらしい。ガタンと最後の揺れが終わってドアが開くと家路を急ぐ人達が点々と外に流れ出していく。私は榊さんと一緒にあたかも”普通の人間”のように孤独な冬の空の下に歩き出した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
駅の外に出た私の視界に飛び込んできたのは煌びやか、たくさんのイルミネーションの光だった。駅前の広場には大きなクスの木が植えられていてその木を中心に数えきれないほどの電飾が、柵や他の街路樹を飾り立てている。夜、日が落ちてから電車に乗り込むことがほとんどなかった私にはその光景はとても珍しく映り、気が付くと歩調はとてもゆっくりとした速さに変わっていた。榊さんはそんな私の隣で歩調を合わせてくれている。そのことに私が気付いたのは次の日の朝の事だったんだけど……。
「……綺麗?」
「……まぁ、そうですね……」
それが予想外の初撃を向こうから放たれた私が縮み上がりながら必死に返した言葉だ。本当は綺麗だった。明かりも、飾りも、それに囲まれた大きな木も。それだけじゃない、バスから見えた森も博物館の静かな通路もお腹を減らした後の担々麺だって綺麗に見えた。でも私はそうは言わない。言えなかったのか言わなかったのかも分からない程に自分の心に自信が持てない。だから似た様に自分の気持ちを話さない人を見ると、無性に腹が立つんだろう……、私と違って、自分の意見を言葉に出来るだろう人が言わないから、多分余計に。
「そう、良かった……」
「……何でです?」
「……やったんだ、私……、ここの飾りを」
そう言った彼女の顔を隣から覗き見たとき、時間も空間もその瞬間に世界から切り取られたように動きを止めて、私の瞳には彼女の心が映り込んでいた。
「飾りって……ここの?全部?」
「いや流石にそれは……。市の職員さん達と一緒に、去年のモノよりも一段と大きくするお手伝いをしたの。ここに来て最初の仕事で」
「でも営業部長って──」
ありのまま頭に浮かんだ疑問が自然と口から零れ落ちる。煌めく光の川に沿って星空よりも明るい大樹の下を歩きながら私の前を進み、背中越しに彼女はまた話してくれた。出来るだけ隠そうとしても漏れ出てしまう程、今度はとても嬉しそうな声で。
「……アレはね、半年前のヤツ。今は本社から出向して、ここの市役所の地域振興課にいるんだ」
「そんな、なんで!?」
「やりたいことが分かったの」
そう言って彼女はまた微笑んだ。誤魔化しや剥き出し好意からじゃない自分自身の笑顔。自身の生きる理由を語ったのだと思うその時の彼女の顔を、私はようやく……綺麗だと思った。彩られた木の影の下、寒さで澄み切った夜空の下で初めて心から私に笑ってくれた彼女を。
「……聞いても、良いですか?」
「これから最後の話し合いをするのに?」
「それは……」
「そんな大層な話じゃない。ただ単に私は、トばされた先で新しい楽しみを見つけただけの女で、貴方が気を遣うような立派な人間じゃないってことを言いたかったの」
「……そんなこと」
そんな訳がない。幾ら立っている地面が同じでも、そこのたどり着くまでの道しか人は見てなんかいないんだ。
「遣ってなかったって言うなら、何でこの間の事、警察に言わなかったの?」
「関係ないでしょ───」
「アナタがどう思ったか知りたいだけなの!それが嫌悪ならそう言って欲しい。じゃないと私は……誤魔化しがきかないの、自分の中にいきなり湧き出たこの気持ちに」
立ち止まり、次第に声が小さくなっていっても彼女は振り返らなかった。私が恐れると?私が嫌悪すると思っているから?
「アナタを見て、初めて見た時……心が動いたのが分かった。今までと全く違う世界が私の中にこじ開けられて……訳も分からず有り余る気持ちの通りに行動してしまって、気付いたらあの始末。軽蔑されて当然のとこだと思ってる。でも……」
その言葉を最後に少しずつ饒舌になってきていた榊さんの口が止まる。肩が震えて息遣いは荒くなり、高まる心臓の音がこっちにまで聞こえてくるようで……正直、見ていられなかった。だから私は前に進む。彼女の脇を抜けて1歩、また1歩。人2人分くらいの距離にまで離れたところで振り返り彼女に向き直った。今度は彼女が顔を背ける。今までは身勝手で浮ついた気持ちからだと思っていた彼女の言葉が、今ではとても臆病に聞こえた。私と同じ、比較を恐れる小さな声に。
「最後にするつもりでした。貴方と話して、ぐちゃぐちゃになりそうな自分の心が嫌で。でも、もしあなたも同じ気持ちだって言うなら、そちらから話してくれませんか?私の償いがその後でも構わないのであれば……」
「……そうだね」
その一言、私の身勝手な申し出に対する彼女の返事。人の気配の無いこの広間で私と榊さんの2人は小さく、そして遠く離れている。でも私には思えたのだ。夜を彩るあの光景を眺めていた彼女の顔を見て、分かり合って終われるのかもしれないと……。
「貴方に謝らなきゃいけない」
「……なんです?」
私の問いに榊さんは自身の右手を差し出した。そこには手の甲から肘の少し手前くらいにまで包帯がしっかりと巻かれている。そして彼女はそれの縁に反対の手の指を差し込んでグイグイとその包帯を解き始めたのだ!
「えっ、あ……へぇぁ!?」
狼狽する事しかできない私の前で榊さんは包帯を解き続ける。腕の周り、そして手首と力づくで毟り取られた真新しい包帯がどんどん垂れ下がって行き、あっという間に彼女の封じられていた右手が露わになった。そこには指と手の甲の間、ちょうど「拳」に当たる位置に青あざがうっすらと広がり、手首の周りの無数の小さな擦り傷切り傷が今はかさぶたに守られている。
「そんな、私は……」
「違うの、違うんだよ……源さん」
その言葉で私はうつむきかけた顔を起こして彼女を見つめ直す。そして痛々しい手首を左手で押さえながら、榊さんは言った。
「この傷……あの事故のじゃないの」
「……はへあ?」
「え?」
音だけで聞いたのならば怪奇すぎるやり取り。ひた隠しにしてきたのだろう事実が向こうから暴露され、驚きと混乱と安心が入り混じった私の濁った疑問符に対し、榊さんはいかにも納得のいかないといったように聞き返してきた。もし彼女の言った事が本当なら納得がいかないのはお互い様だとしても質問の優先権は圧倒的にあるはず。何!?なんなの?どういうことなの!と有りのままに問いただすべきシチュエーションになりかけているはずだけど、その勢いに私はしっかりとした自意識でブレーキを掛けた。この場合はしっかりと……ちゃんと、間違いのない「事実」彼女から聞きたいがために。
「じゃあ、どうしたんですか?その手」
「……お、怒らないの?」
「怒ってます。でもそれ以上に、本当にあなたの身に起こった事実を聞きたいだけです」
輝きの影になる彼女の小さな顔の中で2つの瞳は真ん丸と私に向かって開かれている。彼女は瞬きと深呼吸を1回ずつ行って心を整え、いよいよその口を開いた。いったいどうして……私を……。
「彼氏と喧嘩したの」
「帰ります」
話すことは無い、会話という意味でも話題という意味でも。着古したダウンと角の擦れたリュックサックにラー油の香りを漂わせる女と、スーツにジャケットばっちしメイクで身を固めた敏腕キャリアウーマン(死語)とでは、たとえ隣り合っていても傍目で知り合いだと思う人ようなほとんどいないだろう。それにその印象は殆ど事実だ。初対面でないというだけで私は彼女とは知り合いでも友達でも……ましてや、恋人でもない。ただの加害者と被害者の関係、やられた側に大いに温情を掛けてもらっている情けない人間でしかない。勝手にその生き様に憧れて、勝手に淡い気持ちを抱かれて、そして勝手に相手に怒っているだけのそんなどうしようもない人間だ。そんな奴がこんな立派な人の隣に立つことが許されている。これだけでもこの社会は平等だと言えるだろう、少ないとも形だけは。
「ウッく───」
載っている電車はさっきのバスよりも揺れる気がした。こんな日常的な乗り物にすら乗り慣れず、接し方も分からないナリに必死につり革を握りしめていても足元からの振動で体勢を崩しかけて思わず声が漏れる。幸い帰宅時間帯の隙間で車内には大分余裕があったから誰かにぶつかることは無かった。誰かの足を踏んでしまうようなことが無くて良かったと今は心から思えている。
「……」
「あっ──」
こういう人の足を。よろめいた私に静かに差し出されていた手の平に気づいたのは、それが申し訳なさそうに引っ込められた後だった。頭1つ分以上高いところから私を見下ろしていたあの瞳は、ただ純粋に私を心配してくれていたものだったと思う。私はこの瞬間にまた、私を活かそうとしてくれる人の善意を踏みにじったのだ。
あぁ……嫌んなる
「───まもなく磐田駅に停車します。お降りの方は……───」
「……次で降ります」
返事は無い、私も求めてはいない。あと数時間もすれば何の関係も無くなる者同士、これ以上余計なやり取りはしないという事……なのかな……?
速度が落ちてレールの上を走る振動が強く伝わってくる。いつの間にか電車の外には明かりが減って乗客もかなり少なくなっていた。浜松から磐田まで40分近い時間、その時間が一瞬に感じられるほどに私は私の頭の中に引きこもり、あぁでも無いこうでもないと問答を繰り返していたらしい。ガタンと最後の揺れが終わってドアが開くと家路を急ぐ人達が点々と外に流れ出していく。私は榊さんと一緒にあたかも”普通の人間”のように孤独な冬の空の下に歩き出した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
駅の外に出た私の視界に飛び込んできたのは煌びやか、たくさんのイルミネーションの光だった。駅前の広場には大きなクスの木が植えられていてその木を中心に数えきれないほどの電飾が、柵や他の街路樹を飾り立てている。夜、日が落ちてから電車に乗り込むことがほとんどなかった私にはその光景はとても珍しく映り、気が付くと歩調はとてもゆっくりとした速さに変わっていた。榊さんはそんな私の隣で歩調を合わせてくれている。そのことに私が気付いたのは次の日の朝の事だったんだけど……。
「……綺麗?」
「……まぁ、そうですね……」
それが予想外の初撃を向こうから放たれた私が縮み上がりながら必死に返した言葉だ。本当は綺麗だった。明かりも、飾りも、それに囲まれた大きな木も。それだけじゃない、バスから見えた森も博物館の静かな通路もお腹を減らした後の担々麺だって綺麗に見えた。でも私はそうは言わない。言えなかったのか言わなかったのかも分からない程に自分の心に自信が持てない。だから似た様に自分の気持ちを話さない人を見ると、無性に腹が立つんだろう……、私と違って、自分の意見を言葉に出来るだろう人が言わないから、多分余計に。
「そう、良かった……」
「……何でです?」
「……やったんだ、私……、ここの飾りを」
そう言った彼女の顔を隣から覗き見たとき、時間も空間もその瞬間に世界から切り取られたように動きを止めて、私の瞳には彼女の心が映り込んでいた。
「飾りって……ここの?全部?」
「いや流石にそれは……。市の職員さん達と一緒に、去年のモノよりも一段と大きくするお手伝いをしたの。ここに来て最初の仕事で」
「でも営業部長って──」
ありのまま頭に浮かんだ疑問が自然と口から零れ落ちる。煌めく光の川に沿って星空よりも明るい大樹の下を歩きながら私の前を進み、背中越しに彼女はまた話してくれた。出来るだけ隠そうとしても漏れ出てしまう程、今度はとても嬉しそうな声で。
「……アレはね、半年前のヤツ。今は本社から出向して、ここの市役所の地域振興課にいるんだ」
「そんな、なんで!?」
「やりたいことが分かったの」
そう言って彼女はまた微笑んだ。誤魔化しや剥き出し好意からじゃない自分自身の笑顔。自身の生きる理由を語ったのだと思うその時の彼女の顔を、私はようやく……綺麗だと思った。彩られた木の影の下、寒さで澄み切った夜空の下で初めて心から私に笑ってくれた彼女を。
「……聞いても、良いですか?」
「これから最後の話し合いをするのに?」
「それは……」
「そんな大層な話じゃない。ただ単に私は、トばされた先で新しい楽しみを見つけただけの女で、貴方が気を遣うような立派な人間じゃないってことを言いたかったの」
「……そんなこと」
そんな訳がない。幾ら立っている地面が同じでも、そこのたどり着くまでの道しか人は見てなんかいないんだ。
「遣ってなかったって言うなら、何でこの間の事、警察に言わなかったの?」
「関係ないでしょ───」
「アナタがどう思ったか知りたいだけなの!それが嫌悪ならそう言って欲しい。じゃないと私は……誤魔化しがきかないの、自分の中にいきなり湧き出たこの気持ちに」
立ち止まり、次第に声が小さくなっていっても彼女は振り返らなかった。私が恐れると?私が嫌悪すると思っているから?
「アナタを見て、初めて見た時……心が動いたのが分かった。今までと全く違う世界が私の中にこじ開けられて……訳も分からず有り余る気持ちの通りに行動してしまって、気付いたらあの始末。軽蔑されて当然のとこだと思ってる。でも……」
その言葉を最後に少しずつ饒舌になってきていた榊さんの口が止まる。肩が震えて息遣いは荒くなり、高まる心臓の音がこっちにまで聞こえてくるようで……正直、見ていられなかった。だから私は前に進む。彼女の脇を抜けて1歩、また1歩。人2人分くらいの距離にまで離れたところで振り返り彼女に向き直った。今度は彼女が顔を背ける。今までは身勝手で浮ついた気持ちからだと思っていた彼女の言葉が、今ではとても臆病に聞こえた。私と同じ、比較を恐れる小さな声に。
「最後にするつもりでした。貴方と話して、ぐちゃぐちゃになりそうな自分の心が嫌で。でも、もしあなたも同じ気持ちだって言うなら、そちらから話してくれませんか?私の償いがその後でも構わないのであれば……」
「……そうだね」
その一言、私の身勝手な申し出に対する彼女の返事。人の気配の無いこの広間で私と榊さんの2人は小さく、そして遠く離れている。でも私には思えたのだ。夜を彩るあの光景を眺めていた彼女の顔を見て、分かり合って終われるのかもしれないと……。
「貴方に謝らなきゃいけない」
「……なんです?」
私の問いに榊さんは自身の右手を差し出した。そこには手の甲から肘の少し手前くらいにまで包帯がしっかりと巻かれている。そして彼女はそれの縁に反対の手の指を差し込んでグイグイとその包帯を解き始めたのだ!
「えっ、あ……へぇぁ!?」
狼狽する事しかできない私の前で榊さんは包帯を解き続ける。腕の周り、そして手首と力づくで毟り取られた真新しい包帯がどんどん垂れ下がって行き、あっという間に彼女の封じられていた右手が露わになった。そこには指と手の甲の間、ちょうど「拳」に当たる位置に青あざがうっすらと広がり、手首の周りの無数の小さな擦り傷切り傷が今はかさぶたに守られている。
「そんな、私は……」
「違うの、違うんだよ……源さん」
その言葉で私はうつむきかけた顔を起こして彼女を見つめ直す。そして痛々しい手首を左手で押さえながら、榊さんは言った。
「この傷……あの事故のじゃないの」
「……はへあ?」
「え?」
音だけで聞いたのならば怪奇すぎるやり取り。ひた隠しにしてきたのだろう事実が向こうから暴露され、驚きと混乱と安心が入り混じった私の濁った疑問符に対し、榊さんはいかにも納得のいかないといったように聞き返してきた。もし彼女の言った事が本当なら納得がいかないのはお互い様だとしても質問の優先権は圧倒的にあるはず。何!?なんなの?どういうことなの!と有りのままに問いただすべきシチュエーションになりかけているはずだけど、その勢いに私はしっかりとした自意識でブレーキを掛けた。この場合はしっかりと……ちゃんと、間違いのない「事実」彼女から聞きたいがために。
「じゃあ、どうしたんですか?その手」
「……お、怒らないの?」
「怒ってます。でもそれ以上に、本当にあなたの身に起こった事実を聞きたいだけです」
輝きの影になる彼女の小さな顔の中で2つの瞳は真ん丸と私に向かって開かれている。彼女は瞬きと深呼吸を1回ずつ行って心を整え、いよいよその口を開いた。いったいどうして……私を……。
「彼氏と喧嘩したの」
「帰ります」
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