追放令嬢とフレポジ男:婚約破棄を告げられ追放された侯爵令嬢はあてがわれたド田舎の男と恋に落ちる。

唯乃芽レンゲ

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1章:オラガ村にやってきた侯爵令嬢

23.追放令嬢とガキンチョ

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「わっ!ケヴィン兄ちゃんが女連れてる!またフラれるんじゃねーの?」
「昨日けっこんしたんじゃないんだっけ?」
「えー、あれまた嘘なんじゃねーの。うちのとーちゃんも何かの間違えって言ってたぜ」

 男の子たちに言いたいこと言われてプルプル震えるケヴィン。
ここまでナメられる逆に清々しさすらある…

「ドやかましいわこのクソガキども!!」

これに大人気なく怒鳴り散らすケヴィンは馬車から降りて男の子たちを追いかけ始めてしまった。
しかし、笑顔で「わー!」と離れて距離を取るも男の子たちの悪口は止まらない。

「やーいやーい、"百戦百敗"のケヴィン!!」
「クソガキ黙りやがれ!!昨日結婚できたの見てなかったのか!」

 "百戦百敗"とは何ぞ?と疑問に思いつつも、ケヴィンが男の子達を追いかけまわし鬼ごっこが始まってしまった。
その様子を眺めていると今度はエルシャが女の子達のターゲットにされてしまう。

「わー!本当にお姫様だ!!」
「えー?お姫様なのにケヴィンお兄ちゃんと結婚したの?」
「あれは偽装よギソウ、本当はカッコいい王子様がやってくるんだから」
「うちのお姉ちゃんもあり得ないって言ってた!」

コッチはこっちで酷い言われようだ…

「ねえねえ、お姫様はどこの国のお姫様なの?」
「サレツィホール侯爵家ですよ」

突然の質問であったが、実際に姫であったエルシャは動揺もなく答えるが、どうやら少女たちの想像とは違ったらしい。

「えー妖精の国じゃないの?」
「あたしハーケーンのお姫様かと思った!」
「それはコーディちゃんでしょ?」
「ケヴィンお兄ちゃんってコーディちゃんの事好きだったんじゃないの?」
「違うわよ、あのお姫様はヒイロお兄ちゃんの恋人だもん」
「えーもしかして三角関係?」
「ヒイロお兄ちゃんとコーディちゃんの関係をケヴィンお兄ちゃんが邪魔をしてるんじゃない?」
「でもアネスお姉ちゃんもヒイロお兄ちゃんのこと好きだったよね?」
「ドロドロよドロドロ!」
「きゃー!」

 キャッキャと他人の恋バナで盛り上がり始める女の子達…無慈悲である。
ヒイロと言うのがどうやらあの節操な…コホン、アネスの婚約者と言う人なのだろう。
アネス、システィーナに加え新たにコーディちゃんまで登場。
このコーディちゃんがアネス達の結婚が遅れた原因でなければもっと人数が増える事になるのだが…

しかし…ハーケーン皇国のお姫様??

 ここフレポジェルヌ領が"王国の爪の先"と言われているのは伊達ではなく、間違いなく国境のある土地である。
そして、その隣の国というのがハーケーン皇国でありそれは紛れもなく事実だ。
だがしかし、だからと言って交流があるはず…とはならない。

その理由と言うのはこの村からもハッキリと見える広大なロアヌ山脈…


 神話の時代…大地に絶望と破滅を司る邪神が降り立った。
その邪神の眷属に付き従う千の悪魔と人間達の戦争…
悪魔の一匹である邪竜に万の兵が焼き払われたという。
なす術もない人間達の世界は破滅へと向かうかにみえた。

 そこに神界より降り立ち人間を救済したのが女神ロアリス…
女神は<スキル>の加護を人間に与えその軍勢を引き連れ悪魔たちに立ち向かったのだ。
そしてロアル山脈はその戦の際に女神が作った防壁と言われている。

別名"ロアリスの絶壁"

 高さもさることながらその距離はフレポジェルヌ領の南西から北北東に伸び、王国と皇国を完全に遮っている。
そしてその山脈の終点である北の土地がセイルーン教国となっているのだ。

 つまりハーケーンと行き来をするという事はこの過酷なロアヌ山脈を踏破しなければならない…
既にその時点で偉業と言っても良いほどの話であり現実的ではないのだ。
だからこそハーケーンのお姫様と言われ違和感しか湧かないのだが…

コーディ…コーディ………コーデリア皇女殿下?
ハーケーンのお姫様で合致してしまう聞き覚えのある名前が頭に浮かんでしまったが慌てて頭を振った。
そんなわけあるかという話である。
例え彼女がもうすぐ結婚できる歳になるとか婚約の噂を聞いた事があるとか…
そうであってもまさかである…

………
………
………

 まさかではあるが…ふとエルシャの頭の中にシスティーナの顔が浮かんできた…
このドタバタで聞く暇もなかったが、何故彼女がここに?
セイルーン教国はロアヌ山脈の終点に位置している…つまり直線距離で言えばハーケーン皇国よりも遠いのだ。
あの人柄によりいつの間にか普通に受け入れてしまっていたが彼女がここにいること自体明らかにおかしい。

もしや?

 そう思い女の子達にもう少し詳しい話を聞こうとした時である。
エルシャの視界に女の子達から少し離れた所でしょんぼりしている二人の少女達が映ったのだ。

その少女達とはエメとエル…
あの結婚式の時にエルシャの手を引いてくれた天使たちであった…
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