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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(前編)
5.フレポジ夫人と子爵夫妻
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『お帰りなさいませケヴィン様!』
『今帰った』
『ああ、待っている間中ケヴィン様の事が心配で心配で…何も手につきませんでした』
『俺も生死のやり取りをしている時の思い浮かべたのは君の事だけだったよ…』
『でも私…この会えない時間の中でケヴィン様の事を愛しているって事がわかりましたわ!』
『ふ…俺の心は産まれた時からずっと君だけの物だったけどな』
『ケヴィン様…ステキ、抱いて!!』
『今夜は寝かさないぜ、マイハニー!!』
うむ、我ながら完璧な台本である。
帰宅時に新妻からどう出迎えてもらうかシミュレーションするケヴィン。
そんなケヴィンの後ろから死屍累々の男達が歩いている。
魔物討伐も無事終わり、周囲に残敵がいないか確認のためしばらく残って魔物狩りを行っていたケヴィン達。
帰り道にケヴィン一人でサッサと帰っても良かったが、凱旋の際に討伐した獲物を自慢したいだろうと思い付き合っていた。
帰ったら避難民たちの前で討伐した事を自慢しそのまま女を口説くという算段である。
勿論、実際倒したのはケヴィンなのだが、番だったため片方を討伐している間村を荒らされないために引きつけ役を頼んだのだ。
死ぬ気で頑張った彼らに多少のご褒美があっていいだろう。
魔物はケヴィンの持つマジックバックの中に収納してある。
討伐したのはケヴィンである事は間違いないため男爵から持って帰っていいと言われた。
別にケヴィンとしたらこんな小物普通であれば貰う事など無いのだが…
今回は新妻に自慢したり、後ろのモテない野郎どもが嫁取の為に手柄を見せつけるのが本来の目的なのでありがたく頂戴してきたのである。
オラガ村に戻ってくると…おや?
エルシャに任せきりだったため流石に混乱しているだろうなぁ~などと思っていたのだが…
村の雰囲気は終始和やかというか、むしろ人が多くなって活気が良くなっているような?
そんなケヴィン達を村の子供達が見つけて駆け寄ってくる。
「あ、ケヴィンお兄ちゃんやっと帰ってきたぁー!!」
「ケヴィン!!あんたあんなお姫様に仕事押し付けて今までどこほっつき歩いてたんだい??」
「遅いわよ!!どうせ向こうで飲んだくれてたんじゃないの?お姫様がいなかったらどうなってたか!」
「いやーケヴィンが次の領主だからこれからどうなるかと思ってたがあんなお姫様が来てくれたんなら安泰だな!」
魔物討伐を労う言葉を次々と浴びせて来る村人たち…
いつも通りで何よりである。
………
……
…
そんなわけで帰ってきた自宅なのだが…
「はて?」
てっきりエルシャが出迎えてくれるかと思っていたのだが…
一人寂しく玄関をくぐり中へと進んで行くと、聞こえてきたのがリビングからの声。
「いやいやルフィアちゃんも人が悪い、そうならそうと早く言ってくれればいいのに」
「本当に、こんな素敵な子が来るのなら何も文句なんて言わないのに侯爵様も意外とイタズラ好きなのね」
「いやーあのケヴィンがこんないい子と結婚できるなんて夢のようだ」
「ええ、あの子ったら色んな女の子を連れて来て結婚するって言ってくるのに最後にはフラれちゃうんだから」
「しかし、すまないねぇ結婚式に出られなかったなんて」
「そうそう、カバーチェ男爵に捉まっちゃってね…しばらく泊っていけって。
娘さんが目にかけてた部下と結婚したのが本当に嬉しかったみたい」
「アネスからケヴィンが結婚したと聞いた時には本当に驚いたよ」
「そうねぇ…てっきりいつものケヴィンの強がりだと思って皆で笑い話にしてたのだけれど…」
中から聞えて来る両親のマシンガントーク。
エルシャの顔が引きつっているだろう事は見なくても分かる。
しかし、こんな所で立ち聞きしていても始まらないので諦めてリビングへと入って行く。
「戻ったぞ~」
「!!!ケヴィン様っ!申し訳ありません、出迎えもせずに!」
そう言って慌てて立ち上がりケヴィンの下へと駆け寄ってくるエルシャ。
感動である…装備を付けたままでなかったら思いっきり抱きしめている所だ。
村人たちにズタズタにされたメンタルがみるみる内に回復していく。
「そうだ、帰りに村の様子を見て来たんだが随分いい働きだったみたいだな、皆褒めてたぞ」
「そうでしたか…若輩者が随分出しゃばった物言いをしてしまったので心配でしたが」
「ハハハッ、それでか。姫様姫様って皆喜んでたぞ…この分なら俺は隠居してこの領は全部エルシャに任せて良さそうだな」
「ケヴィン様?嫡男としての自覚を持ってください…」
「はい…」
和やかな会話がケヴィンのちょっとした冗談でエルシャのトーンが途端に冷えついてしまう。
残念ながらエルシャの中ではこの軽薄な夫ならやりかねないと思われていた…
分が悪いと感じたケヴィンは慌てて両親へと話題を振る。
「二人も帰ってたのか…結婚式はどうだった?」
「とっても素敵な結婚式だったわ」
「うんうん、幸せそうで何よりだよ。ただ自分の息子の結婚式に出られなかったというのは残念だけれどね」
「本当に申し訳ございません、義父様、義母様」
エルシャのような美人でしっかり者が嫁として義父様、義母様と呼んでくる…
これに喜ばない親などいるのだろうか。
思わず二人は顔を綻ばせてしまう。
「ああーいいのよぉ、ケヴィンの結婚式は何度もやってるから気にしないで」
「そうそう、結婚式を成功させてくれたってだけで嬉しいんだから」
うーん…
ホッとして良いのか悪いのか判断に困る返答である。
「ところで皆で何の話をしてたんだ?」
「!そうでした…ケヴィン様、少し困った事になってしまいまして…」
そう言って沈んだ顔のエルシャ…
それとは対照的に「気にする事無いのに」とのほほんとしている両親。
エルシャの方の表情を信じるべきなのは明白であった。
『今帰った』
『ああ、待っている間中ケヴィン様の事が心配で心配で…何も手につきませんでした』
『俺も生死のやり取りをしている時の思い浮かべたのは君の事だけだったよ…』
『でも私…この会えない時間の中でケヴィン様の事を愛しているって事がわかりましたわ!』
『ふ…俺の心は産まれた時からずっと君だけの物だったけどな』
『ケヴィン様…ステキ、抱いて!!』
『今夜は寝かさないぜ、マイハニー!!』
うむ、我ながら完璧な台本である。
帰宅時に新妻からどう出迎えてもらうかシミュレーションするケヴィン。
そんなケヴィンの後ろから死屍累々の男達が歩いている。
魔物討伐も無事終わり、周囲に残敵がいないか確認のためしばらく残って魔物狩りを行っていたケヴィン達。
帰り道にケヴィン一人でサッサと帰っても良かったが、凱旋の際に討伐した獲物を自慢したいだろうと思い付き合っていた。
帰ったら避難民たちの前で討伐した事を自慢しそのまま女を口説くという算段である。
勿論、実際倒したのはケヴィンなのだが、番だったため片方を討伐している間村を荒らされないために引きつけ役を頼んだのだ。
死ぬ気で頑張った彼らに多少のご褒美があっていいだろう。
魔物はケヴィンの持つマジックバックの中に収納してある。
討伐したのはケヴィンである事は間違いないため男爵から持って帰っていいと言われた。
別にケヴィンとしたらこんな小物普通であれば貰う事など無いのだが…
今回は新妻に自慢したり、後ろのモテない野郎どもが嫁取の為に手柄を見せつけるのが本来の目的なのでありがたく頂戴してきたのである。
オラガ村に戻ってくると…おや?
エルシャに任せきりだったため流石に混乱しているだろうなぁ~などと思っていたのだが…
村の雰囲気は終始和やかというか、むしろ人が多くなって活気が良くなっているような?
そんなケヴィン達を村の子供達が見つけて駆け寄ってくる。
「あ、ケヴィンお兄ちゃんやっと帰ってきたぁー!!」
「ケヴィン!!あんたあんなお姫様に仕事押し付けて今までどこほっつき歩いてたんだい??」
「遅いわよ!!どうせ向こうで飲んだくれてたんじゃないの?お姫様がいなかったらどうなってたか!」
「いやーケヴィンが次の領主だからこれからどうなるかと思ってたがあんなお姫様が来てくれたんなら安泰だな!」
魔物討伐を労う言葉を次々と浴びせて来る村人たち…
いつも通りで何よりである。
………
……
…
そんなわけで帰ってきた自宅なのだが…
「はて?」
てっきりエルシャが出迎えてくれるかと思っていたのだが…
一人寂しく玄関をくぐり中へと進んで行くと、聞こえてきたのがリビングからの声。
「いやいやルフィアちゃんも人が悪い、そうならそうと早く言ってくれればいいのに」
「本当に、こんな素敵な子が来るのなら何も文句なんて言わないのに侯爵様も意外とイタズラ好きなのね」
「いやーあのケヴィンがこんないい子と結婚できるなんて夢のようだ」
「ええ、あの子ったら色んな女の子を連れて来て結婚するって言ってくるのに最後にはフラれちゃうんだから」
「しかし、すまないねぇ結婚式に出られなかったなんて」
「そうそう、カバーチェ男爵に捉まっちゃってね…しばらく泊っていけって。
娘さんが目にかけてた部下と結婚したのが本当に嬉しかったみたい」
「アネスからケヴィンが結婚したと聞いた時には本当に驚いたよ」
「そうねぇ…てっきりいつものケヴィンの強がりだと思って皆で笑い話にしてたのだけれど…」
中から聞えて来る両親のマシンガントーク。
エルシャの顔が引きつっているだろう事は見なくても分かる。
しかし、こんな所で立ち聞きしていても始まらないので諦めてリビングへと入って行く。
「戻ったぞ~」
「!!!ケヴィン様っ!申し訳ありません、出迎えもせずに!」
そう言って慌てて立ち上がりケヴィンの下へと駆け寄ってくるエルシャ。
感動である…装備を付けたままでなかったら思いっきり抱きしめている所だ。
村人たちにズタズタにされたメンタルがみるみる内に回復していく。
「そうだ、帰りに村の様子を見て来たんだが随分いい働きだったみたいだな、皆褒めてたぞ」
「そうでしたか…若輩者が随分出しゃばった物言いをしてしまったので心配でしたが」
「ハハハッ、それでか。姫様姫様って皆喜んでたぞ…この分なら俺は隠居してこの領は全部エルシャに任せて良さそうだな」
「ケヴィン様?嫡男としての自覚を持ってください…」
「はい…」
和やかな会話がケヴィンのちょっとした冗談でエルシャのトーンが途端に冷えついてしまう。
残念ながらエルシャの中ではこの軽薄な夫ならやりかねないと思われていた…
分が悪いと感じたケヴィンは慌てて両親へと話題を振る。
「二人も帰ってたのか…結婚式はどうだった?」
「とっても素敵な結婚式だったわ」
「うんうん、幸せそうで何よりだよ。ただ自分の息子の結婚式に出られなかったというのは残念だけれどね」
「本当に申し訳ございません、義父様、義母様」
エルシャのような美人でしっかり者が嫁として義父様、義母様と呼んでくる…
これに喜ばない親などいるのだろうか。
思わず二人は顔を綻ばせてしまう。
「ああーいいのよぉ、ケヴィンの結婚式は何度もやってるから気にしないで」
「そうそう、結婚式を成功させてくれたってだけで嬉しいんだから」
うーん…
ホッとして良いのか悪いのか判断に困る返答である。
「ところで皆で何の話をしてたんだ?」
「!そうでした…ケヴィン様、少し困った事になってしまいまして…」
そう言って沈んだ顔のエルシャ…
それとは対照的に「気にする事無いのに」とのほほんとしている両親。
エルシャの方の表情を信じるべきなのは明白であった。
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