追放令嬢とフレポジ男:婚約破棄を告げられ追放された侯爵令嬢はあてがわれたド田舎の男と恋に落ちる。

唯乃芽レンゲ

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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(前編)

閑話.夜に舞う

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夜の街で一人の女が舞っていた…

「絶対に逃すな!」

 無粋にもその舞いを邪魔する男達の声…
否、女にとってその声は共演者でしかない。
月の光に照らされ、街の舞台に屋根から屋根へと優雅に飛び移る。

 女は逃亡者であり、追いかけてくるのは獲物達。
そして夜の闇は女にとって共犯者であった…

………
……


―――――――――――――――――――――――

 夜も更けそろそろ仕事を切り上げ寝室へ向かおうとした時…
どうやら急な来訪者が部屋に訪れたようだ。
男は行先を変え扉を開き、バルコニーへと出て行った。
そこにはバルコニーの手すりに座る一人の女…

「お久しぶりですね、コルディーニ第二皇子」
「私の記憶が確かならこちらには面識がないのだがな…?」
「あらそうでしたか?うっかりしてましたわ…」
「それであなたのような有名人が私に何の用かな?必要ならば人を呼ぶが…」
「あら、お気遣いなく…用を済ませればすぐに帰ります」

女は布に包まれていた腕輪を差し出しながら言った。

「少々厄介なものが出回っておりましたのでご忠告をと思いまして」
「それは?」
「わかりませんが、最近活動を強めている組織からお借りした物です。
そして持ち主はこれを盗った瞬間に廃人となりました…」

受け取ろうとしたコルディーニの手が止まり眉をしかめる。

「賢明です…」

そう言いながらバルコニーの床に布ごとその腕輪を置いた。

「そう言えば随分人気者になったようだな?」
「あら恥ずかしい…もうご覧になられたんですか?」
「公務が忙しくてな…何とか時間を作りたいが。こうやって仕事は増えていくものだ」
「それは申し訳ない事をしましたね」

そう言ってクスクスと笑いながら「それでわ…」と、月が雲に覆われる様に女は夜に溶けていった…

夜は再び静寂に支配される…
残された腕輪が鈍く妖しい闇色の輝きを放っていた。
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