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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(前編)
閑話.エルフさんと主様
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一羽の鳥が空の旅から自身の主の下へと戻りその肩に止まった。
その鳥の主はエルフィーネというメイド服を着たエルフの娘であった。
エルフィーネは自身の使い魔である鳥の足から結ばれた手紙を受け取る。
手紙を一瞥すると登っていた木の上から飛び降り、屋敷の方へと駆けて行った。
「あら、フィー。そんなに急いでどうしたの?」
「アネス、ご主人様はどこ?皇都からの伝言が届いたんだけれど」
「まだ工場に籠ってるわ…行くならちゃんと声をかけてあげなさい?
あれでも一応隠してるつもりなんだから」
「え、ええ…わかってるわ」
エルフィーネも自分の主が隠れて作っている物の正体を薄々感づいているため思わず耳を赤らめてしまう。
そして目の前のアネスもソレは同様で、いつも何だかんだ言って優しい彼女の瞳が一段と穏やかであった。
まったく…いつも女性の胸元ばかり見ている穢れた弟とは大違いだ。
「そう言えば例の物…結局どうだったんですか?」
「う~ん、思わしくないわね…システィーと一緒に対策を練ってるんだけれど。
外して人格を切り離す事は出来ても失われた記憶はどうにもならないのよ…」
「そうですか…」
アネスの話に一瞬で嫌な気分になってしまう。
だが、今は手紙を主に渡す事が先決である。
アネスと別れてエルフィーネは工場へと向かった。
工場に着くと扉をノックし大きな声で主に入室の許可を求める。
「ご主人様、皇都から手紙が届きました」
「ああ、ありがとう。入ってきていいよ」
主の入室許可を受け耳をピョコピョコさせながら工場へと入っていく。
そして、主の傍へと近寄っていくのだが…
途端にその顔を曇らせていくのだった。
「………なんでウルがここに?」
エルフィーネの視線の先には狼の獣人であり、同じメイド仲間であるウルが主の膝枕で眠っていた。
「最近構ってあげられなかったからね…寂しかったみたいだから」
「むー」
「フィーも来る?」
主がポンポンと空いている膝の上を叩くと、途端にパァと嬉しそうな顔に変わりその膝の上に飛びついた。
ウルと一緒にエルフィーネの頭も撫でてもらい思わず耳がピョコピョコと動いてしまう…
しばらくその天国を堪能していたのだが、ふと主が訊ねた。
「そう言えば皇都から手紙があるんだっけ?」
「…あっ」
慌てて本来の目的を想い出し、立ち上がるエルフィーネ。
届けられた手紙を主に手渡した。
主はその手紙を読むと、ゆっくりとウルの頭を膝の上から離しアイテムストレージから出した枕の上に頭をのせた。
そして、身体が冷えないよう掛け布団も掛けた上で立ち上がった。
「これから皇都に行ってくる」
「作業の方はよろしいのですか?わざわざ直々に出向かなくても良いと思うのですが…」
「うーん、ケヴィンが一人で働かされて怒ってるみたいだからね」
「怒らせておけばいいじゃないですか…良い薬です」
大事な主を取られて頬を膨らませるエルフィーネ。
主のほうは苦笑いしつつも話を進めた。
「最初から僕一人で行くつもりだったのが人が増えるだけだよ。
アネスとシスティー…それとドーラにも準備をお願いして来てくれるかい?」
「かしこまりました」
主の命令を受け部屋から出ようとするエルフィーネだったが「あ、ちょっと待って」と声をかけられ制止した。
「君たちとの結婚式は最後になってしまうからね、埋め合わせというわけではないけれど…」
そう言うと、主は先程まで作っていたであろうソレをエルフィーネの指へとはめた。
………
突然の事で一瞬呆然とするエルフィーネであったが…
「受け取ってくれるかい?」
「嬉しい…大事にしますね、ヒイロ様!!」
ちなみにこの後ウルの指に既に指輪がはめられていた事で自分が一番最初ではなかった事を知りウルと喧嘩になるのだが…
まあ、いつもの事である。
その鳥の主はエルフィーネというメイド服を着たエルフの娘であった。
エルフィーネは自身の使い魔である鳥の足から結ばれた手紙を受け取る。
手紙を一瞥すると登っていた木の上から飛び降り、屋敷の方へと駆けて行った。
「あら、フィー。そんなに急いでどうしたの?」
「アネス、ご主人様はどこ?皇都からの伝言が届いたんだけれど」
「まだ工場に籠ってるわ…行くならちゃんと声をかけてあげなさい?
あれでも一応隠してるつもりなんだから」
「え、ええ…わかってるわ」
エルフィーネも自分の主が隠れて作っている物の正体を薄々感づいているため思わず耳を赤らめてしまう。
そして目の前のアネスもソレは同様で、いつも何だかんだ言って優しい彼女の瞳が一段と穏やかであった。
まったく…いつも女性の胸元ばかり見ている穢れた弟とは大違いだ。
「そう言えば例の物…結局どうだったんですか?」
「う~ん、思わしくないわね…システィーと一緒に対策を練ってるんだけれど。
外して人格を切り離す事は出来ても失われた記憶はどうにもならないのよ…」
「そうですか…」
アネスの話に一瞬で嫌な気分になってしまう。
だが、今は手紙を主に渡す事が先決である。
アネスと別れてエルフィーネは工場へと向かった。
工場に着くと扉をノックし大きな声で主に入室の許可を求める。
「ご主人様、皇都から手紙が届きました」
「ああ、ありがとう。入ってきていいよ」
主の入室許可を受け耳をピョコピョコさせながら工場へと入っていく。
そして、主の傍へと近寄っていくのだが…
途端にその顔を曇らせていくのだった。
「………なんでウルがここに?」
エルフィーネの視線の先には狼の獣人であり、同じメイド仲間であるウルが主の膝枕で眠っていた。
「最近構ってあげられなかったからね…寂しかったみたいだから」
「むー」
「フィーも来る?」
主がポンポンと空いている膝の上を叩くと、途端にパァと嬉しそうな顔に変わりその膝の上に飛びついた。
ウルと一緒にエルフィーネの頭も撫でてもらい思わず耳がピョコピョコと動いてしまう…
しばらくその天国を堪能していたのだが、ふと主が訊ねた。
「そう言えば皇都から手紙があるんだっけ?」
「…あっ」
慌てて本来の目的を想い出し、立ち上がるエルフィーネ。
届けられた手紙を主に手渡した。
主はその手紙を読むと、ゆっくりとウルの頭を膝の上から離しアイテムストレージから出した枕の上に頭をのせた。
そして、身体が冷えないよう掛け布団も掛けた上で立ち上がった。
「これから皇都に行ってくる」
「作業の方はよろしいのですか?わざわざ直々に出向かなくても良いと思うのですが…」
「うーん、ケヴィンが一人で働かされて怒ってるみたいだからね」
「怒らせておけばいいじゃないですか…良い薬です」
大事な主を取られて頬を膨らませるエルフィーネ。
主のほうは苦笑いしつつも話を進めた。
「最初から僕一人で行くつもりだったのが人が増えるだけだよ。
アネスとシスティー…それとドーラにも準備をお願いして来てくれるかい?」
「かしこまりました」
主の命令を受け部屋から出ようとするエルフィーネだったが「あ、ちょっと待って」と声をかけられ制止した。
「君たちとの結婚式は最後になってしまうからね、埋め合わせというわけではないけれど…」
そう言うと、主は先程まで作っていたであろうソレをエルフィーネの指へとはめた。
………
突然の事で一瞬呆然とするエルフィーネであったが…
「受け取ってくれるかい?」
「嬉しい…大事にしますね、ヒイロ様!!」
ちなみにこの後ウルの指に既に指輪がはめられていた事で自分が一番最初ではなかった事を知りウルと喧嘩になるのだが…
まあ、いつもの事である。
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