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香る音楽
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「る子? る―子っ?! おい! きいてんの」
助手席からボ―っと巴祢留の顔を見ているる子に向かって巴祢留が言う。
ハッと我に帰るる子。
「ン、ごめんなさ~い、巴祢留……と、なんだっけ?」
「ンも―、困った子だよ、る子。またかい?」
「はい」
「ン。でもさ、そんなゆったりとしたる子がオレは好きなんだよ」
「う、うん」頬を薄桃色に染めるる子。
(あたしあたしあたし! しゃきっとしなくっちゃ!)力士が気合いを入れるために自分の体をはたくみたいにほっぺを叩くる子。
(ベースの奏でにうっとりしている場合じゃないわ)
る子は……なぜだか分からないが、愛し合っている巴祢留の声音を聴いていると、あの弦楽器のベースの音色が聴こえ出し、巴祢留の言葉が聞き取れなくなるのだ。
「あのね、る子」「はいっ!!」兵隊のようにきびきびしているる子。
「ちょ、待て。どしたの、る子」
「はい、今度こそ大好きな巴祢留のお話を聴き逃さないように頑張っているところよ」
「ぉ、ぉう」
「巴祢留!! はやく!」
(え)
(聞こえてるうちに早く言ってよ~)と祈るようにる子。
「あ、あのね、牛丼食べたいなーって思ったの。せっかくのデートなのにさって、なんかこう~、る子? ン―牛丼に罪はないが……牛丼食べたい!!」
多少息を止め、まばたきも少なめにし、やっと聞き取れた大切なダーリン巴祢留の言いたかったこと。
「もちろん、良いわよ! 牛丼のお店に連れて行ってください」
「うん!」
る子と巴祢留は付き合い出してまだ1カ月ぐらい。仕事で多忙な巴祢留は忙しさにかまけ、る子をデートに誘ってやれないことを申し訳なく感じている。
る子は……男性とお付き合いをするのが初めてだ。そして、先に述べたような超常現象に巻き込まれ、愛って大変、と悩ましい今日この頃。しかし、この現象は起こる時と起こらない時がある。自分で考えるにる子は、巴祢留へのときめきがマックスになるとこの現象が起こっているように感じられる。
*
(嬉しいな! 巴祢留と牛丼のお店には初めてきたわ)わくわく♪ わくわく♪
「オレは~、牛丼大盛りにしよっ。る子は?」
「あたしは並盛の牛丼」「オッケー」
お店に入ってからも巴祢留に超ときめいている筈だが、巴祢留からベースの音は聴こえず、る子には巴祢留の喋っている言葉がちゃ~んと届く。
「あ! きたきた! 食べようぜ、る子っ」幸せそうな巴祢留。
ここまで満点の笑顔、これまで巴祢留から出たことないかも。よっぽど牛丼が好きなのね。
「いただきま―す」ふたり仲良く手を合わせお食事。
巴祢留の食べるお顔も愛おしい。パクパクしながら見つめ合う。
!!
(あれッ!?)
もぐもぐゴックンしたあとの巴祢留の口が何か動いている、え! なに、言葉が分かんない! 聴こえるのは
「モ―――― モ―――― モ――――」
「ヒッ」う、牛の鳴き声じゃ――――――ん。今すぐ帰りたい。逃げたい。こわい。ちょっとしたホラー。
もう食べられません!
巴祢留が「モーモー」言ってる! これまでずっとベースだったのに、何なんだろ?
る子は、余りにも巴祢留が嬉しそうに笑っているので、うんうんと笑って適当に相槌を打った。
その相槌は間違っていなかったらしく、巴祢留の表情はさらに歓びに満ち、巴祢留はモーモー鳴きまくっている。
やだ~!!! 怖すぎる! ンも――――――!
「いい加減にしてよ!! もうッもう! 巴祢留っ、黙ってっ!!」(あ……あたしったら)
恐怖のあまりにブチ切れてしまったる子。
周りのお客さんがる子の大声に驚きじろじろ見ている。
当然(巴祢留に怒られる!)と淋しくなったる子。しゅん。うつむき……チラッ。ところが…… みると巴祢留は泣き出した。
「まただ……」「え? またってなにが?」今は明確に巴祢留の人間の言葉がきこえる。
「オレのせいだよ、る子」
「な、なんのこと」
「良いんだよ、気にしないでそのまんま言って。オレの言葉が聴こえなくなるんだろ? ごめん、妬かせるつもりはない。前の彼女もそうだった。 動物園に行った時は『もう良いからゴリラの真似は! うるさい!!』って真似なんてしてないのに言われたし、『ハーなに言ってんのかわかんね、鈴の音しかしねーわ』これは神社へ行った時さ……自分が何かに祟られているんだ、きっと」
(ああ、なんてこと。そうだったのね……かわいそうな巴祢留)
勇気を出してる子は正直に伝えた。
「ええ、実はそうなの。車に乗っている時はベース、ここへやってきたら牛だったわ」
「やだよね、こんな男……いいんだ、これ以上る子を苦しめたくはない」
「なに言ってんの? そのまんまでいいわ! あたし、巴祢留がコケコッコ―とかポロッポーポロッポ―って鳩語になったって、愛してる! なんなら、鳩に変身したって愛してる!!」
「ぶわぁああああ!」大声で激しく感涙する巴祢留。
*
それから5年の月日が流れた。
今でもラブラブな巴祢留とる子。
きのうは映画館でデートしている途中、素敵なシーンで耳元に巴祢留のセクシーな唇が近づいてきた。
(巴祢留もこのシーンに感極まっているのね、なにを言うかしら……)とドキドキしつつ待っていると
「ブバッ! ブビ――――――!! ブワ! ブブブブッブ~!」と派手で臭そうなおならの音が口から聴こえた。
今や巴祢留のことを理解しているる子は(ああ、おならをガマンしてるんだな~)と思った。
助手席からボ―っと巴祢留の顔を見ているる子に向かって巴祢留が言う。
ハッと我に帰るる子。
「ン、ごめんなさ~い、巴祢留……と、なんだっけ?」
「ンも―、困った子だよ、る子。またかい?」
「はい」
「ン。でもさ、そんなゆったりとしたる子がオレは好きなんだよ」
「う、うん」頬を薄桃色に染めるる子。
(あたしあたしあたし! しゃきっとしなくっちゃ!)力士が気合いを入れるために自分の体をはたくみたいにほっぺを叩くる子。
(ベースの奏でにうっとりしている場合じゃないわ)
る子は……なぜだか分からないが、愛し合っている巴祢留の声音を聴いていると、あの弦楽器のベースの音色が聴こえ出し、巴祢留の言葉が聞き取れなくなるのだ。
「あのね、る子」「はいっ!!」兵隊のようにきびきびしているる子。
「ちょ、待て。どしたの、る子」
「はい、今度こそ大好きな巴祢留のお話を聴き逃さないように頑張っているところよ」
「ぉ、ぉう」
「巴祢留!! はやく!」
(え)
(聞こえてるうちに早く言ってよ~)と祈るようにる子。
「あ、あのね、牛丼食べたいなーって思ったの。せっかくのデートなのにさって、なんかこう~、る子? ン―牛丼に罪はないが……牛丼食べたい!!」
多少息を止め、まばたきも少なめにし、やっと聞き取れた大切なダーリン巴祢留の言いたかったこと。
「もちろん、良いわよ! 牛丼のお店に連れて行ってください」
「うん!」
る子と巴祢留は付き合い出してまだ1カ月ぐらい。仕事で多忙な巴祢留は忙しさにかまけ、る子をデートに誘ってやれないことを申し訳なく感じている。
る子は……男性とお付き合いをするのが初めてだ。そして、先に述べたような超常現象に巻き込まれ、愛って大変、と悩ましい今日この頃。しかし、この現象は起こる時と起こらない時がある。自分で考えるにる子は、巴祢留へのときめきがマックスになるとこの現象が起こっているように感じられる。
*
(嬉しいな! 巴祢留と牛丼のお店には初めてきたわ)わくわく♪ わくわく♪
「オレは~、牛丼大盛りにしよっ。る子は?」
「あたしは並盛の牛丼」「オッケー」
お店に入ってからも巴祢留に超ときめいている筈だが、巴祢留からベースの音は聴こえず、る子には巴祢留の喋っている言葉がちゃ~んと届く。
「あ! きたきた! 食べようぜ、る子っ」幸せそうな巴祢留。
ここまで満点の笑顔、これまで巴祢留から出たことないかも。よっぽど牛丼が好きなのね。
「いただきま―す」ふたり仲良く手を合わせお食事。
巴祢留の食べるお顔も愛おしい。パクパクしながら見つめ合う。
!!
(あれッ!?)
もぐもぐゴックンしたあとの巴祢留の口が何か動いている、え! なに、言葉が分かんない! 聴こえるのは
「モ―――― モ―――― モ――――」
「ヒッ」う、牛の鳴き声じゃ――――――ん。今すぐ帰りたい。逃げたい。こわい。ちょっとしたホラー。
もう食べられません!
巴祢留が「モーモー」言ってる! これまでずっとベースだったのに、何なんだろ?
る子は、余りにも巴祢留が嬉しそうに笑っているので、うんうんと笑って適当に相槌を打った。
その相槌は間違っていなかったらしく、巴祢留の表情はさらに歓びに満ち、巴祢留はモーモー鳴きまくっている。
やだ~!!! 怖すぎる! ンも――――――!
「いい加減にしてよ!! もうッもう! 巴祢留っ、黙ってっ!!」(あ……あたしったら)
恐怖のあまりにブチ切れてしまったる子。
周りのお客さんがる子の大声に驚きじろじろ見ている。
当然(巴祢留に怒られる!)と淋しくなったる子。しゅん。うつむき……チラッ。ところが…… みると巴祢留は泣き出した。
「まただ……」「え? またってなにが?」今は明確に巴祢留の人間の言葉がきこえる。
「オレのせいだよ、る子」
「な、なんのこと」
「良いんだよ、気にしないでそのまんま言って。オレの言葉が聴こえなくなるんだろ? ごめん、妬かせるつもりはない。前の彼女もそうだった。 動物園に行った時は『もう良いからゴリラの真似は! うるさい!!』って真似なんてしてないのに言われたし、『ハーなに言ってんのかわかんね、鈴の音しかしねーわ』これは神社へ行った時さ……自分が何かに祟られているんだ、きっと」
(ああ、なんてこと。そうだったのね……かわいそうな巴祢留)
勇気を出してる子は正直に伝えた。
「ええ、実はそうなの。車に乗っている時はベース、ここへやってきたら牛だったわ」
「やだよね、こんな男……いいんだ、これ以上る子を苦しめたくはない」
「なに言ってんの? そのまんまでいいわ! あたし、巴祢留がコケコッコ―とかポロッポーポロッポ―って鳩語になったって、愛してる! なんなら、鳩に変身したって愛してる!!」
「ぶわぁああああ!」大声で激しく感涙する巴祢留。
*
それから5年の月日が流れた。
今でもラブラブな巴祢留とる子。
きのうは映画館でデートしている途中、素敵なシーンで耳元に巴祢留のセクシーな唇が近づいてきた。
(巴祢留もこのシーンに感極まっているのね、なにを言うかしら……)とドキドキしつつ待っていると
「ブバッ! ブビ――――――!! ブワ! ブブブブッブ~!」と派手で臭そうなおならの音が口から聴こえた。
今や巴祢留のことを理解しているる子は(ああ、おならをガマンしてるんだな~)と思った。
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