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推しの誘惑【完全版】

自撮り *

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 鷹城がぎゅっと真琴を抱きしめ、顔中にキスの雨を降らす。真琴はそれを受け止めながら、汗の流れる広い背中に手を回した。相手の汗と共に、愛用のフレグランスが立ち上り、彼の香りになる。魅惑的な甘い匂いに酔ってしまいそうだ。

「真琴……」
「ん……。せんせ……?」
「……めちゃくちゃ良かった……」

 ぼそぼそと鷹城が言った。真琴は快感の余韻でぼんやりしていたので、つい聞き逃してしまう。

「え、なんですか……?」
「めちゃくちゃ良かった。もう一回したい」

 鷹城が頭を起こして言った。鳶色の瞳がきらきらと輝いている。

「えっ……今なんて……?」
「足りないから、もっとヤらせて」

 にっこりと鷹城が笑い、身体を起こした。そしてまだ繋がったままのそこを揺らし始める。

(嘘でしょ!? 結構濃かったのに……っ)

「あん、あん……ま、待って、鷹城せんせい。おれ限界、ですって……っ、あっ」
「いやいや、無理でしょー……。こんなにかわいい俺だけのアイドル、手放せないよ。もっと啼かせたい」
「何言ってんの、ばかっ……。ひ、あん、ぁ……あぅっ」

 じたばたしたけれど、気持ちの良いポイントを即回復した男根でこつこつされると、ダメだった。すでにとろけている真琴は流されるままぐずぐずになっていく。

(くそう……やられた)

 ――でも、おれも感じまくっちゃったな。コスプレエッチって……すごい。

 など考えながら、愛しい恋人を見ると鷹城は何やらニヤニヤしている。まるでいたずらっ子のような表情に、真琴はいや~な予感がした。

「あん……ちょっと、何笑っているんですか?」
「ん? 実は撮影出来るように、機材も持ってきてるんだよね……。一眼カメラと、三脚と、マイクと、ライト。なあ、次はそれ使っちゃう?」
「はあっ!? だ、だだだ、だめです……っ」
「なんで? 自撮りAVやろうぜ」
「絶対にいやーっ……!」

 真琴の絶叫と、鷹城の笑い声が響いた。



☆~☆~☆~☆~☆



 翌月。鷹城の書いた初アイドルものの官能小説、『推しの誘惑』は無事に電子書籍でリリースされた。

 真琴似のヒロインの可愛いイラストが描かれたそれは、瞬く間にヒットし、月間ダウンロード数一位になった。それに勢いづいた〈美少女ブックス・デジタル〉の編集部が、特別に紙本{かみほん}化すると、増刷に次ぐ増刷でとんでもないことになり、即続編が決まった。

 レビューに寄ると『アイドルのマコがかわいい』とか、『作者の熱量がすごい』とか、『なんかリアルで抜ける』と評判で、編集者は大喜びだった。鷹城の元にはお祝いの品がじゃんじゃん送られてきて、もう部屋に置く場所がないくらいだ。
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