溶けだす頃に

羅刹十鬼

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執着

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次の日、俺はなんでかはるかと一緒に登校してきていた。
しかし昨日のニコニコと笑っていた可愛いはるかはどこにいったのか。
「早く歩けないんすか?」
今までと同じく無愛想で少し毒舌気味に戻っていた。
きっと、馬鹿な自分と頭良い自分をうまく使いこなす人は感情のオンオフが激しいのだろう。
そういうことで勝手に納得した。
「はいはい」
「その返事、なんだかムカつくっす」
あれ、今まで以上に気を遣う関係になってね?
それから学校に着いて、はるかと別れた後教室に入る。
景加はまだ登校してきていないようだ。
あいつ、ギリギリに来るからな。
危機的状況なのに朝は今まで通りなのかよ。
呆れながら自席に座った。



最近あいつに呼び出されることが増えた。
「じゃあ日直号令してー」
そう日直に指示した戸川を睨みつける。
しかし相手は気づいていないようだ。
「今日の居残り、学級委員と古典の補講がある奴。学級委員は4階の1番奥の会議室に集まるように。古典の補講の対象者は赤点とった奴な。ちゃんと残れよー」
俺の方を見た気がした。
古典って戸川の担当教科だけど、あいつが補講するのか?
ってか対象者何人いるんだろう。
それから1時間目が始まるまで京介と話していた。
「よっ」
珍しく俺から話しかけてみた。
ま、久しぶりだしな。
「おー!景加!久しぶりだな!」
「久しぶり」
近くにあった適当な席に腰を下ろした。
「お前さ、最近戸川からの呼び出し増えたけど何もされてないか?」
「ん?何も?あいつはそこらへんにいるようなただのうざい教師だよ」
俺の言葉に興味なさそうに話を流す。
聞いといてそれはねーだろ。
「噂は嘘ってことかよー」
「当たり前だろ。大体そんな噂が立つほどの被害者がいるんだったら訴えられてんだろ」
ってかなんで残念そうなんだ?
「でも景加が無事で良かったわ~」
「無事ってなんだよ」
笑って流そうとすれば、
「変な関係になってないかなってさ」
と言われる。
「は?あいつと俺が?勘弁してくれよ。冗談でもきついぞ」
気持ち悪い。
なんで大体男同士なんだよ。
もうこいつと話してても戸川のことばかり聞かれたりしてつまらない。
せっかく久しぶりに話せたと思ったらこんなことばっか聞かれるのも正直だるい。
トイレ、とだけ告げて廊下に出た。
まだ話途中だったが、いい加減に気分が悪くなってくる。
ふと、隣のクラスの方に目がいった。
隣のクラスの教室の前では、戸川と男子生徒が話していた。
へー、あいつ他の人と話してる時あんな感じなんだ。
よく分からないが、プリントをその生徒に渡していた。
あ、笑った。
俺と話してる時より、よく笑ってねーか?
ん?俺は何を気にしているんだ?
そもそも先生と生徒が話すことなんて普通じゃね?何でこんなこといちいち気にしてんの、自分きも。
京介が変なこと言って来るから俺も影響されかけてる。
あー!もう気持ち悪い!
頭をかき乱す。
「先生ありがとうございます」
「あぁ。1時間目遅れんなよー」
2人の会話で我に返る。
生徒がこっちに近づいてきて、横を通って階段を下っていった。
戸川と、結構な距離をあけて目が合った。
お互い何もアクションを起こすことなくただ時間だけが過ぎていった。
何これ......
俺は急に恥ずかしくなって自分の教室に逃げるように戻った。
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