ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

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61話 菜緒虎、魏府国東呉州沛郡にある沛郡最大の港町犬連の港に入港する

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ソウキ国の骸骨の龍が意匠化された旗をたなびかせ、3本のマストのキャラベル船が魏府国東呉州沛郡にある沛郡最大の港町犬連の港に入港する

事前にロック鳥で先触れを出しているので、国籍不明の板屋船を曳航していても騒ぎは起きていない。
ちなみに、板屋船に乗船していたゴブリンは奴隷頭を務めていたゴブリンとその部下5人以外は適当なところで自身の奴隷契約書と食糧を渡して解放していた。

「菜緒虎殿。ご無沙汰しております」
狐人ワーフォックス筍幾しゅんいくが船から降りてきた菜緒虎の手を取る。

「ご無沙汰しております筍幾しゅんいく殿。早速ですがお納めください」
菜緒虎が甲板にいた環寧かんねいに合図を送ると、キャラベル船から青銅色の人形・・・生きた鉄像リビングスタチューが俵を担いで降りてくる。
ギクシャクとした上半身の動きと、しっかりとした足取りで一俵30キロある俵を運ぶという姿は遠めに見ても不自然さが目立つ。

もっとも、筍幾しゅんいくからするとそれなりに興味ある光景らしい。
用意された台車に黙々と俵を積んでゆく生きた鉄像リビングスタチューの姿を、側で俵の集計している文官とともに評価していた。

「主であるソウキより沛郡州へ、支援物資として米300キロ。小麦300キロ。粟600キロ。サツマイモ540キロ。ハトムギ300キロです」
全ての俵を降ろし終わったのを見て、菜緒虎は二枚の羊皮紙を渡す。現代風に言うなら納品書と受領書。

「感謝いたします」
筍幾しゅんいくは羊皮紙を受け取り深く頭を下げる。
ちなみに提供されたサツマイモとハトムギの半分は沛郡での救荒植物の種子となる予定。
サツマイモを焼酎にハトムギを茶の材料にするべく大量に栽培、保管していた悪韋が緊急事態として大半を召し上げられ、半泣きだったのは別の話である。

「まずはこれを」
食糧の引き渡しが終わり、簡単な食事会となった席で筍幾しゅんいくが、菜緒虎に一枚の羊皮紙と旗を引き渡す。
羊皮紙は、さきほど菜緒虎から受け取った受領書。
菜緒虎が、間違いなく物資を僧操に引き渡したという証。

旗は緑地に黒で「僧」の字が描かれており、沛郡州でこれを掲げている限り最大限の便宜を図ってもらえる印籠のようなもの。
菜緒虎だけなら不要だが、ゴーレムやスケルトンを連れて行動する以上は無用なトラブルを避ける為の必要な措置でもある。

犬連ここから建業州の州境に向かうとして、建業州に一番近い港がある町は清皇です」
筍幾しゅんいくは机のうえに置いてある地図の犬連と書かれた場所から北西に、海を越えたところにある場所を指で差す。
陸伝いに徒歩でここに向かう場合は、湾に沿って反時計回りにかなりの距離を歩く事になる。

「後ほど引き合わせますが、我が軍の張僚ちょうりょうを軍目付として同行させます。こきつかってください」
「了解しました」
菜緒虎は小さく頷く。同盟を締結しているとはいえ、他国の軍隊を好きに動かせる統治者はいないのだ。


張僚雷頼ちょうりょうらいらいと申します」
出港準備をしていた菜緒虎のもとに筍幾しゅんいくと共にやってきたのは人間に猫耳や尻尾があるタイプの猫人ワーキャット
瞳の彩光と髪がキジトラ柄なのが猫らしいといえば猫らしいが、顔は彫りの深いかなり渋いおっさんである。
しかも武官らしい鱗鎧と腰にゴツイ青龍刀を佩いていて、完全に萌えは無い。

「同行されるのは、張僚ちょうりょう殿だけか?」
筍幾しゅんいくの後ろにはそれらしい護衛が二人控えているが、張僚ちょうりょうの後ろには誰もいない。

「私だけなら大抵の危険は対処できます」
「しかし、実力は船で見せて貰いますよ?」
「望むところですな」
張僚ちょうりょうは渋く野太い笑みを浮かべた。
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