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60話 菜緒虎、ゴズという名のゴブリンを配下に加える
しおりを挟む鎮圧した板屋船の船倉に菜緒虎が乗り込んで来た時、投降した36人のニーダは一人の例外もなく激昂した。
発音は聞き取れなかったが、菜緒虎に対し罵詈雑言を投げかけたのであろうということは容易に推測できる。
そうやって5分ほど騒いだ後、これまた一人の例外もなく口から泡を吹いて動かなくなった。
「見た感じ死んでますね。どうしましょう」
環寧が、横たわるニーダに胡乱げな視線を送りながら尋ねる。
「ニーダの生態は判らないが、戦場で死体のふりをして、身の安全を計るのはよくある話だ」
「普通ならこのまま海にドボンですから、偽死の可能性はありますね」
菜緒虎の懸念に環寧も同意する。
「スケルトン、骨ゴーレム。甲板に運んだあと処理は任せる」
菜緒虎の命令にリーダらしきスケルトンは静かに頷くと、ニーダの一体を抱え甲板に向かう。
それに続くようにスケルトンと骨ゴーレムがニーダを抱えて甲板に向かう姿はシュールであった。
「船底にいる奴隷は?」
「小鬼が70。どれもガリガリですな」
一足早く船底に向かっていた公蓋が二人のゴブリンを連れて上がってきた。
「奴隷頭と副頭です。奴隷頭は我々の言葉とニーダ語、ゴブリン語をしゃべれるようです」
意外な語学力に菜緒虎は少し考える。
「仲間の奴隷から5人を選びなさい。残りを上陸後に開放するための対価です」
「お、恐れながら、ゴブリンは多数で戦う種族なれば20人は」
すっと菜緒虎の目が値踏みをするようなものに変わる。
「我らがソウキ軍では、数の力はスケルトンやゾンビ。ゴーレムが担うのだよ」
口調が変わった菜緒虎の言葉に、ゴブリンは唖然となる。
この世界でもゴブリンの立ち位置は、平時では単純な労働力。戦場ではいくらでも替えの効く肉の壁だ。
数は要らないといわれるとは思ってもみない事態だ。
「某はお前の頭の良さを買う」
「頭の良さ?」
「さきほど、降伏したニーダたちが某を見て謎の言葉を叫びながら死んだのだ。原因が知りたくてな」
それを聞いたゴブリンがふむと考えこむ。
ゴブリンらしくないその姿勢に菜緒虎は薄く笑う。
ゴブリンは狡猾でズル賢いが、基本は残念な頭の持ち主である。しかし目の前のゴブリンは違う。
菜緒虎は、目の前のゴブリンが、アルテミスがいうところの名有りか変異だと推測していた。
「名前はなんと?」
「ゴズと言いますです。ええっと、ニーダは、ですね・・・」
何かを思い出すようにゴブリンのゴズはニーダの種族特徴の説明を始める。
ニーダは、見た目が魚人だが陸生で、水属性を持ち、感情で属性が一時的に炎属性となる謎の体質の種族だ。
もっとも、この感情で水属性が一時的に炎属性となる瞬間、ニーダは短時間のあいだ莫大な力を得ることができるという。
そして、簡単にオーバーヒートを起こして活動を停止する諸刃の剣でもある。
「降伏したと見せかけ、某が姿を現した瞬間に激昂。力による逆転を狙うも捕縛した縄さえ切れず燃料切れで気絶、と」
菜緒虎は目頭を押さえ小さく頭を振る。
『スケルトンの経験が上限に達したためスケルトンソルジャーに進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
『骨ゴーレムの経験が上限に達したため生きた鉄像に進化します』
「ですよねー」
ニーダの始末を任せた配下モンスターが次々と進化したことを告げるメッセージの連続表示に苦笑する菜緒虎だった。
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