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65話 ソウキ国の目論見
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65話 忍び寄るモノ
ソウキ国にはいま四つの大隊が存在する。
宰相として少年王ソウキを補佐するスケルトン賢者から進化したリッチのアルテミスが率いる情報を管轄する情報大隊。
情報分析のスケルトン魔法使いを中心にゴースト系やロック鳥系、ウルフ系といった諜報やら偵察に適したモンスターを中心に編成されている。
次に菜緒虎とは同郷で日に焼けた褐色の肌をもつウッドエルフ(ダークエルフではない)のリベッチオが率いる王都の守備大隊。
次に自称、異世界転移者でゴーレムマスターという異端のジャイアントの悪韋が率いるアタラカ森砦の守備大隊。
そして菜緒虎が率いる港湾砦クレの守備大隊。
菜緒虎は配下に多くの人間がいて、自身もソロモンやジャンでも活動しているということで、今回ソウキ国を出ての活動の責任者として指名されていた。
昼前から降り出した雨は、日が傾き辺りを闇の色に染め始めていても止む気配を見せてはいない。
「小雨で済んでいるのが幸いか?」
朝から建設していた石積みの建物の一階に、唯一開けられた窓から外を眺めていた菜緒虎は小さくつぶやく。
菜緒虎が魏府王国に出発する前に、同僚である悪韋から言われたことがある。「大地震の後は地面が緩む。大雨に注意しろ」だ。
なぜか?
地盤は土や水、空気が混ざり合って形成される。
これが、地震などで大きな振動を受けると、土を篩にかけると細かい砂が下に落ちるように、地盤にある水や空気の層に細かい土が落ちる。
もし、そこそこの空間に砂が落ちれば地盤沈下が起き、そこそこの水の溜まった所に砂が落ちれば液状化という現象が起きる。
地盤強度のバランスの崩れた場所、特に山間部で大雨が降ると地滑りが起こりやすくなるのだ。
さらに、ここ数年の天候不順で、山の植生が深刻なダメージを受けているのと、人が食べ物を求めて山に深くまで分け入っているため、保水力が落ちているのも問題だった。
「菜緒虎さま。配給、終了しました」
昼過ぎから被災した街の住人に雑穀の粥を振舞っていた牛銅とイヌガミが、いまだ扉のない入口から建物に入って来て大声で報告する。
「ご苦労。休息し明日に備えてくれ」
「はっ」
ふたりは頭を下げて退出する。彼らはこのままキャラベル船に戻る予定だ。
「菜緒虎さま。警邏、終わりました」
環寧と公蓋が入れ替わるように入ってくる。
「待っていた」
窓際を離れ、積まれた俵の間にぽつんと佇む机まで移動すると、菜緒虎は机の上に羊皮紙を広げる。
昼間に町長である漫寵から手に入れたこの街の簡単な地図である。
岸壁とキャラベル船、拠点が書き込まれている。
環寧と公蓋は手に取った炭で地図の上に×や△の印しを書き込んでいく。
×が全壊で△が半壊の建物である。
「全壊した建物が思ったより少ないな。これなら早いうちに港の復興に手が付けられる」
呟きながら、菜緒虎は机の下から布袋を取り出す。
「適当に人を雇い金をばら撒いておけ・・・そうそう。飯でもいいが、子供を雇うことも忘れるなよ」
「子供ですか?」
「伝令や片付け、子供でも出来る仕事を振って恩を売っておけということだ」
環寧の問いに菜緒虎は答える。
スケルトンなどのアンデットにも忌避は少ないだろうという目論見もあった。
「5年10年先を見て、ですか。上手くいきますかな?」
「投資なんだ。上手くいけばまさに儲けモノだろ?って言われたよ」
公蓋の問いに、菜緒虎は苦笑いするしかなかった。
ソウキ国にはいま四つの大隊が存在する。
宰相として少年王ソウキを補佐するスケルトン賢者から進化したリッチのアルテミスが率いる情報を管轄する情報大隊。
情報分析のスケルトン魔法使いを中心にゴースト系やロック鳥系、ウルフ系といった諜報やら偵察に適したモンスターを中心に編成されている。
次に菜緒虎とは同郷で日に焼けた褐色の肌をもつウッドエルフ(ダークエルフではない)のリベッチオが率いる王都の守備大隊。
次に自称、異世界転移者でゴーレムマスターという異端のジャイアントの悪韋が率いるアタラカ森砦の守備大隊。
そして菜緒虎が率いる港湾砦クレの守備大隊。
菜緒虎は配下に多くの人間がいて、自身もソロモンやジャンでも活動しているということで、今回ソウキ国を出ての活動の責任者として指名されていた。
昼前から降り出した雨は、日が傾き辺りを闇の色に染め始めていても止む気配を見せてはいない。
「小雨で済んでいるのが幸いか?」
朝から建設していた石積みの建物の一階に、唯一開けられた窓から外を眺めていた菜緒虎は小さくつぶやく。
菜緒虎が魏府王国に出発する前に、同僚である悪韋から言われたことがある。「大地震の後は地面が緩む。大雨に注意しろ」だ。
なぜか?
地盤は土や水、空気が混ざり合って形成される。
これが、地震などで大きな振動を受けると、土を篩にかけると細かい砂が下に落ちるように、地盤にある水や空気の層に細かい土が落ちる。
もし、そこそこの空間に砂が落ちれば地盤沈下が起き、そこそこの水の溜まった所に砂が落ちれば液状化という現象が起きる。
地盤強度のバランスの崩れた場所、特に山間部で大雨が降ると地滑りが起こりやすくなるのだ。
さらに、ここ数年の天候不順で、山の植生が深刻なダメージを受けているのと、人が食べ物を求めて山に深くまで分け入っているため、保水力が落ちているのも問題だった。
「菜緒虎さま。配給、終了しました」
昼過ぎから被災した街の住人に雑穀の粥を振舞っていた牛銅とイヌガミが、いまだ扉のない入口から建物に入って来て大声で報告する。
「ご苦労。休息し明日に備えてくれ」
「はっ」
ふたりは頭を下げて退出する。彼らはこのままキャラベル船に戻る予定だ。
「菜緒虎さま。警邏、終わりました」
環寧と公蓋が入れ替わるように入ってくる。
「待っていた」
窓際を離れ、積まれた俵の間にぽつんと佇む机まで移動すると、菜緒虎は机の上に羊皮紙を広げる。
昼間に町長である漫寵から手に入れたこの街の簡単な地図である。
岸壁とキャラベル船、拠点が書き込まれている。
環寧と公蓋は手に取った炭で地図の上に×や△の印しを書き込んでいく。
×が全壊で△が半壊の建物である。
「全壊した建物が思ったより少ないな。これなら早いうちに港の復興に手が付けられる」
呟きながら、菜緒虎は机の下から布袋を取り出す。
「適当に人を雇い金をばら撒いておけ・・・そうそう。飯でもいいが、子供を雇うことも忘れるなよ」
「子供ですか?」
「伝令や片付け、子供でも出来る仕事を振って恩を売っておけということだ」
環寧の問いに菜緒虎は答える。
スケルトンなどのアンデットにも忌避は少ないだろうという目論見もあった。
「5年10年先を見て、ですか。上手くいきますかな?」
「投資なんだ。上手くいけばまさに儲けモノだろ?って言われたよ」
公蓋の問いに、菜緒虎は苦笑いするしかなかった。
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