ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

文字の大きさ
23 / 81

20話 悪韋、魔の荒野に出向く

しおりを挟む
菜緒虎が魏府王国の冒険者を追って魔の荒野に出発したその日、悪韋もまた魔の荒野に来ていた。
耕作地を拡大するなら、遠からずこの魔の荒野も開拓する必要があると考えたからだ。

「ふむ」

悪韋は足元の土塊を指で潰す。
土塊はサラサラと砂の粒となって空中に飛散する。
魔の荒野と普通の平野を区別するのは簡単だ。
眼前のように、線を引いたかのように地面と植生が変わる。

「鑑定」

比較大きな土塊を手に取り、鑑定スキルを発動させる。

魔の荒野の土塊。
植物の育成を阻害し、動物に異変をもたらす瘴気を放つ塊を含む土。

「これは、あれかね?」

悪韋は、転移する前にいた世界の知識から、魔の荒野が放射線を放つ物質によって広域汚染されているのではないかと予想する。
恐らく、魔法の発動触媒に濃縮ウランかプルトニウムを使ったのだろう。
自分のユニークスキルかそれに類する魔法を使えば、濃縮ウランとかを作ることは難しくない。
濃縮ウランを一気に作ったことで臨界を越えて核爆発といったところか・・・

ただ、ウランやプルトニウムなどの核分裂で生成されるストロンチウム90や135、セシウム137といった放射性物質の半減期は約30年
とっくに別の核種に変化しているハズである。

ざっくりと地面に手を差し込み「岩石創成」とスキルを発動させる。
悪韋の手のひらに、岩石と黄色の粉が生成される。

「鑑定・・・」

イエローケーキ
植物の育成を阻害し、動物に異変をもたらす瘴気を放つ塊。

「って核分裂生成物ではないだと・・・」

育成された黄色の粉を鑑定した悪韋は、眉をひそめる。
イエローケーキは、ウラン鉱石を破砕機でパルプ状に粉砕し、濃酸、アルカリまたは過酸化物溶液で処理。
乾燥、濾過した後に残ったものの総称で、原子炉用のウラン燃料を作るのに用いられる物質だ。
ただ、悪韋のいた世界のイエローケーキは放射性は非常に低く放射線を放出する速度が非常に遅い。
しかしこの世界のイエローケーキは、少なくとも4000年近く経っても毒・・・放射性物質を放っている。
魔法が暴走した際に、イエローケーキに何らかの細工をしたのかもしれない。

「菜緒虎殿に、魔の荒野の砂塵をあまり吸い込まないよう、また半日に一度は服についた砂を払うよう進言した方がいいですね」

とりあえずステータス画面を呼び出し、アルテミスに理由を添え、菜緒虎に進言するようにメールを送る。
真夜中の指輪リングオブミッドナイトには、指輪を装備した人間同士の手紙交換メール機能がある。
今は、リュウイチ←→アルテミス←→悪韋もしくはリュウイチ←→アルテミス←→菜緒虎とアルテミスをハブにしての通信しかできないのが目下改良の課題だ。

『すぐに対応する』

という返事がアルテミスから返って来たのはそれから10分後のことである。

緊急を要する事態に一応の手を打った悪韋は、アイテムボックスから厚めの布を取り出すと口に装着してマスクとし、皮の手袋を装着、シャベルを取り出し魔の荒野の土を掘り始める。

「ふむふむ。雨で地中にも浸食しているかと思いましたが、その心配は無さそうですね・・・」

何か所か地面を掘り返し、そのどの地点でも、同じ深度で採れた土塊の鑑定結果が変わらないことを確認した悪韋は、最近地に入れたスキルを発動させる。

「スキル。コンダラゴーレム作成」

悪韋が呟くのと同時に、悪韋の足元の地面が盛り上がり、土人形・・・ゴーレムが3体ほど育成される。

「岩石創成で深さ2メートルまで掘り下げろ。岩石とイエローケーキは分離。イエローケーキは1キロごとに排出」

悪韋の命令を聞いたコンダラゴーレムは、悪意に小さく敬礼すると土を掘り返し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい

有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。 ※食事の描写は普通の日本のお料理になっています

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

「お前の代わりはいくらでもいる」と笑った婚約者が、翌日から報告書一枚書けなくなった件

歩人
ファンタジー
子爵令嬢リーゼロッテの取り柄は、文章を書くことだけ。 華やかさのかけらもない彼女は、婚約者アルベルトの政務報告、外交書簡、 演説原稿——その全てを代筆していた。 「お前の代わりはいくらでもいる」 社交界の花形令嬢に乗り換えたアルベルトは、笑ってそう言った。 翌日から、彼の机の上には白紙の報告書だけが積み上がっていく。 ——代わりは、いなかった。

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しい私の話

あんど もあ
ファンタジー
王太子が真実の愛とか言って婚約破棄を宣言。廃太子と決まりました。おかげで妹の私に王太子になれと言われたのですが、不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて政略結婚の役にも立たないと言われていた私がですか?

処理中です...