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19話 魏府国の冒険者の追跡を開始する
しおりを挟む『牛銅たち速報:すべての俵と荷物が牛銅の前で空中に消えました』
牛銅たちを追跡していた天城からのメッセージが入る。
菜緒虎は、そのメッセージをそのままアルテミスに転送し報告。
暫くするとアルテミスから、牛銅を捕獲対象に格上げというメッセージが届く。
悪韋から、牛銅はアイテムボックス持ちの可能性があるから捕獲するようにと進言があったからだ。
アイテムボックスは、真夜中の指輪を作成する際に参考にした、荷物を異空間に仕舞い込む魔法か能力か魔法道具の能力である。
真夜中の指輪は生物が収納できるが生物以外は生物が装備しているアイテムぐらいしか収納できない。
一方アイテムボックスは、生物以外のものしか収納できない。
ただ、アイテムボックスがあれば、踏破は不可能といわれる魔の荒野を抜けることができたのは、荷物の心配がないからかと菜緒虎は一人納得する。
そしてその能力を持つ牛銅を捕獲する価値があることも。
「さて」
菜緒虎はくるりと辺りを見回し適当な高さの木を見つけるとその木の上に上り寝袋のようなモノを取り付ける。
アルテミスが調査した結果として、魔の荒野は日の出前後の2時間と日の入り前後の2時間がは魔物が跋扈する危険な時間だということが判った。
もっともそれ以外の時間は、陽があれば酷暑が陽が無ければ極寒が生物を過酷に攻めたてるのだが。
菜緒虎はぶら下げた寝袋のようなモノにもそもそと身体を滑り込ませると…
「スキル隠匿発動。行使者に対し常時を行使」
呪文と共に寝袋は周囲からは認識されないようになる。
菜緒虎は、魔物と戦うリスクを避け、過酷な環境下で魔の荒野を走破することを選んだ。
天城という確実な追跡者がいるので、彼らの先を行っても問題ないと判断したのだ。
あと一時間で数十メートル先に広がる荒野は魔物の荒野となるので、やり過ごすため休息をとることにする。
かさっ
何かが木の下で音を立てる。
菜緒虎は目を覚まし音の正体を探る。
木の下には灰色の体毛に長い耳、額に角を持つ一角兎がいた。
一角兎の角は、毒を分泌するため薬剤として、毛皮は防寒着の内張りとして良い値で売れる優良物件だ。ただし肉はあまり良くない。
菜緒虎は、太腿のダガーベルトに差している投擲ナイフを抜き、寝袋から取り出すと一角兎目掛けて投げる。
ぴぃ
一角兎が気配に気づいたときには既に投擲ナイフは首の後ろを深く貫いていた。
ぴろん
菜緒虎の目の前にステータス画面が現れ、短剣術Lv.4→Lv.5と表示されると思わず笑みが零れる。
寝袋から這い出し、木から降りると一角兎の解体を始める。
肉は食用ではないので血抜きはしない。
角を切断し素早く皮をはぐ。
肉の塊は、本来この兎を襲うはずだった数メートル先の草むらに潜んでいるモノのために、その場に放置。
「水よ集え」
呪文を唱えると菜緒虎の手に水が僅かに浮かび、散霧する。そしてパンパンと手を払うと菜緒虎の手についていた兎の血がサラサラと粉になって散る。
水よ集えは水魔法レベル1の術者が任意の場所から水を集める呪文である。
菜緒虎は自分の掌に着いた兎の血から水分を飛ばし残ったものを払い落としたのだ。
ついでに一角兎の毛皮の内側にも軽くアクアをかけて水分を飛ばして異物を払い袋の中に入れる。
木の上に戻って寝袋を回収すると魔の荒野に踏み込む。
菜緒虎が立ち去って暫くして、茂みから一頭の茶褐色の毛並みの若い狼が出てきた。
若狼は何度か菜緒虎が放置した一角兎の肉を嗅いでいたが、おもむろに食べ始める。
肉を食べ終わった若狼はすんすんと地面を嗅ぐと菜緒虎が立ち去っていった方へと歩き出した。
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