ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

文字の大きさ
81 / 81

78話 建業城の戦い終結

しおりを挟む

「攻撃開始!」

建業城の城壁目掛けて簡易投石機カタパルトから石が放たれる。
投石機カタパルトの石は放物線を描いて飛んでいき城壁を崩す。

「衝車!」

公蓋こうがいの命令のもと、大きな丸太を抱えた生きた鉄像リビングスタチューが城壁門に突撃する。
全身が鉄なので、防御にあまり手間をかけなくていいのは大きい。
かんかんと矢の当たる音、熱湯だか熱油だかが湯気を上げて降りそそぐが、どれも効果はない。

どごん

何度目かの丸太の突撃が決まったところで門が半壊する。
鬨の声が、同時に城壁内から怒号と黒煙があがる。
張僚ちょうりょうが内部の不満勢力を煽って反旗を翻させたのだ。


「コンダラゴーレム。城壁門排除だ」

環寧の掛け声とともにコンダラゴーレムが城壁門に向かって歩き出す。
そして、目に見える手伝いは城壁門の破壊以上のことはしないというのが取り決めだ。

コンダラゴーレムが歪んだ城門壁に手をかけ、引き剥がす。

「突撃!」

僧操の命令のもと、騎兵が城壁内へとなだれ込み、それに歩兵が続く。
一時間もすると、城壁内の黒煙の柱が一本三本と増えていく。
戦いの趨勢は決していた。

「孫蚊、討ち取ったり!」

城壁内を大声で走る者が出始めるころ、菜緒虎がワ国鎧の意思を持つ鎧インテリジェンスアーマーを引き連れて環寧たちの元に帰還する。

「お勤めご苦労さまです」

環寧と公蓋が菜緒虎に向かって深々と頭を下げる。

「げぼ、仲間が増えた。意思を持つ鎧インテリジェンスアーマーという魔物だからそのつもりで」

「飛虎音と申す今後ともよろしく」

飛虎音は深々と頭を下げる。

「「はっ」」

環寧も公蓋も動じることなく、再び菜緒虎に向かって深々と頭を下げた。

「此度の助力、感謝する」

そういって僧操は深く頭を下げる。
それに倣い他の僧操の部下も頭を下げた。

「こちらこそ、ありがとうございます。またお会いしましょう」

菜緒虎と環寧が応じるように頭を下げる。
そして菜緒虎たちは船に乗り込む。

また、帰国に合わせ、新たに猫耳人顔の猫人ワーキャットの少年を仲間に加えていた。
彼の名は張寅ちょうこ13歳。張僚の次男。名目はソウキ国への留学。
彼が菜緒虎に会ったときの第一声が、「コンダラゴーレムが手に入るまで国には戻らぬ覚悟です」だったという。

大陸歴3187年。魏府国の東呉州の元州牧である孫蚊が起こした反乱は、首魁である孫蚊が討たれたことで終結した。
孫蚊に恭順した東呉州の会景郡の太守劉鉦りゅうしょう、南晩州公止郡の太守厳舜げんしゅんと武領郡の太守歩執ほしつは僧操配下の火候、張僚が率いる軍によって鎮圧。
三人は処刑された。
そして後任の太守として任命されたのは、僧操の対抗派閥で猿人ワーエイプ猿紹えんしょう配下の役人だった。
この人事に僧操派閥の人間は大いに憤ったが、僧操は、この人事が王家による自分を討伐するための餌撒きであることに気付いていた。
いまは生き残るため地力を貯める。
魏府国崩壊の芽が芽吹いた瞬間でもある。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

仮面王の花嫁〜婚約破棄された薄幸令嬢は仮面の王に愛される〜

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

「お前の代わりはいくらでもいる」と笑った婚約者が、翌日から報告書一枚書けなくなった件

歩人
ファンタジー
子爵令嬢リーゼロッテの取り柄は、文章を書くことだけ。 華やかさのかけらもない彼女は、婚約者アルベルトの政務報告、外交書簡、 演説原稿——その全てを代筆していた。 「お前の代わりはいくらでもいる」 社交界の花形令嬢に乗り換えたアルベルトは、笑ってそう言った。 翌日から、彼の机の上には白紙の報告書だけが積み上がっていく。 ——代わりは、いなかった。

追放先で気づいた。この世界の精霊使いは全員、聞き方を間違えている~最安もふもふ白狐と始めた、問いかけの冒険~

Lihito
ファンタジー
精霊と暮らす世界で、ノエルはギルドを追い出された。処理ミスは誰より少ない。でも「やりづらい」の一言で、理由には足りた。 手元に残ったのは、最安で契約した手のひらサイズの白い子狐だけ。言葉はたどたどしいし、力もない。誰が見ても「使えない」と笑う精霊だ。 たどり着いた町では疫病が広がっていた。高額な精霊が三度探して見つからない薬草。ノエルは最弱の白狐と半日で見つけ出す。 力で勝ったんじゃない。聞く範囲を絞り、段階を分け、小さな鼻に合った問いを重ねただけ。 ——なぜこの世界では、誰も精霊への「聞き方」を知らないのか。 その違和感が、ノエルの旅を動かしていく。

処理中です...