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12話 トロールに中の人がいた
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「武器属性貸与」
ナオはアルテミスから教えてもらった武器に特定の属性を付与する武器属性貸与という魔法の呪文を小さくつぶやいてロングソードに蟻酸の属性を付与する。
ラージアントの蟻酸は強い酸であることに加えてかなりの腐食性を持っている。
皮膚に触れれば水泡が生じて強い痛みを与えることが可能だし、それなりの時間接触していれば革鎧程度なら穴をあけることも出る。
すっとハンドサインで背後に展開しているスケルトンソルジャー達に合図を送る。
ナオはゆっくりと木の陰から出ると、酸の属性が付与されていることを示す薄く黄色い光を湛えたロングソードを正眼に構える。
と同時にショートソードと盾を持ったスケルトンソルジャーと三体の長槍を構えたスケルトンが適度な距離を取りながらわらわらと現れる。
今回は適当にトロールを攻撃したのち麻痺毒を染み込ませた網を仕掛けた罠に誘い込み生け捕る予定だ。
ロングソードに属性付与したのは無視させないための仕込みでもある。
「やあやあ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそはリュウイチ・ソウキが家臣エルフのナオなり。我が武を恐れぬならかかってこい」
アルテミスから教わった挑発の呪文を唱える。
ただ異国の言葉らしくナオに言葉の意味は解らない。
「はあ?そこのエルフさん。あなた、いま、いまなんといいましたか?」
ナオの声を聴いたトロ-ルがゆっくりと振り返る。
そしてこの対応にナオは驚きを隠せなかった。
トロールは基本、ゴブリンやオークに次ぐ残念な知能のモンスターである。しかもヘソを曲げると感情に任せて暴れる。
それが目の前のトロールは言葉の意味を理解し、丁重な感じでしかも大陸共通語で話しかけてきている。ナオの常識からすれば明らかに異質だ。
「いまのはアルテミスという人から教わった敵を挑発するための呪文だ」
「違うな。それは俺の国の、いや俺の世界で武士と呼ばれた古い時代の剣士が古来の戦場で使われていた名乗りというもので呪文でもなんでもない」
トロールはナオの言葉をきっぱりと否定する。
「俺の世界?武士と呼ばれた剣士?古来の戦場で使われていた名乗り?」
トロールの主張にナオは首をかしげる。
トロールは否定したが、この呪文が魔力によって発動し敵を引き付ける効果があるのは間違いないことなのだ。
「ふむ。どうやらナオさんは転生者ではないようだな」
トロールは腕を組んで大きく頷く。そのしぐさはトロールというよりかなり人間臭い。
ナオは改めてトロールの姿を見る。
緑色の肌ということに気を取られていたが、上半身は裸ではなかった。
前面だけではあるが急所を覆うような革の胸当てがあった。いわゆる和弓で使われるタイプのものだ。
革は丁寧に鞣されているようでいい艶がでている。
また心臓部分には蟹らしき甲羅のようなものが糸らしきもので丁寧に縛りいや編み込まれていた。
つぎは下半身。色からして黒狼の革でつくられたズボン。そのズボンを腰で止まるよう巻き付いているのはキチンと形成された革のベルト。
股間が大きく盛り上がっているのはナニではなく急所ガードだろう。
そしてその腰には身長に見合った長さと太さの木の剣が吊ってあった。
もし考えなしに後ろから奇襲していたら、今頃は敷物のように地面にへばり付いていたことは間違いないとナオは静かに胸を撫でおろす。
「ああ、忘れていた。俺の名は阿久井悠。日本からこの世界にトロールとして転生した異世界人だ。(ハンドルネームの字でいいか・・・)悪韋と書いてあくいと呼ぶ。ナオさんに術を教えた人に会いたいのだが可能だろうか?」
トロールこと阿久井悠は地面に「悪韋」というワ国文字を書いて、野太い下の犬歯を覗かせて怖い笑顔を見せた。
ナオはアルテミスから教えてもらった武器に特定の属性を付与する武器属性貸与という魔法の呪文を小さくつぶやいてロングソードに蟻酸の属性を付与する。
ラージアントの蟻酸は強い酸であることに加えてかなりの腐食性を持っている。
皮膚に触れれば水泡が生じて強い痛みを与えることが可能だし、それなりの時間接触していれば革鎧程度なら穴をあけることも出る。
すっとハンドサインで背後に展開しているスケルトンソルジャー達に合図を送る。
ナオはゆっくりと木の陰から出ると、酸の属性が付与されていることを示す薄く黄色い光を湛えたロングソードを正眼に構える。
と同時にショートソードと盾を持ったスケルトンソルジャーと三体の長槍を構えたスケルトンが適度な距離を取りながらわらわらと現れる。
今回は適当にトロールを攻撃したのち麻痺毒を染み込ませた網を仕掛けた罠に誘い込み生け捕る予定だ。
ロングソードに属性付与したのは無視させないための仕込みでもある。
「やあやあ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそはリュウイチ・ソウキが家臣エルフのナオなり。我が武を恐れぬならかかってこい」
アルテミスから教わった挑発の呪文を唱える。
ただ異国の言葉らしくナオに言葉の意味は解らない。
「はあ?そこのエルフさん。あなた、いま、いまなんといいましたか?」
ナオの声を聴いたトロ-ルがゆっくりと振り返る。
そしてこの対応にナオは驚きを隠せなかった。
トロールは基本、ゴブリンやオークに次ぐ残念な知能のモンスターである。しかもヘソを曲げると感情に任せて暴れる。
それが目の前のトロールは言葉の意味を理解し、丁重な感じでしかも大陸共通語で話しかけてきている。ナオの常識からすれば明らかに異質だ。
「いまのはアルテミスという人から教わった敵を挑発するための呪文だ」
「違うな。それは俺の国の、いや俺の世界で武士と呼ばれた古い時代の剣士が古来の戦場で使われていた名乗りというもので呪文でもなんでもない」
トロールはナオの言葉をきっぱりと否定する。
「俺の世界?武士と呼ばれた剣士?古来の戦場で使われていた名乗り?」
トロールの主張にナオは首をかしげる。
トロールは否定したが、この呪文が魔力によって発動し敵を引き付ける効果があるのは間違いないことなのだ。
「ふむ。どうやらナオさんは転生者ではないようだな」
トロールは腕を組んで大きく頷く。そのしぐさはトロールというよりかなり人間臭い。
ナオは改めてトロールの姿を見る。
緑色の肌ということに気を取られていたが、上半身は裸ではなかった。
前面だけではあるが急所を覆うような革の胸当てがあった。いわゆる和弓で使われるタイプのものだ。
革は丁寧に鞣されているようでいい艶がでている。
また心臓部分には蟹らしき甲羅のようなものが糸らしきもので丁寧に縛りいや編み込まれていた。
つぎは下半身。色からして黒狼の革でつくられたズボン。そのズボンを腰で止まるよう巻き付いているのはキチンと形成された革のベルト。
股間が大きく盛り上がっているのはナニではなく急所ガードだろう。
そしてその腰には身長に見合った長さと太さの木の剣が吊ってあった。
もし考えなしに後ろから奇襲していたら、今頃は敷物のように地面にへばり付いていたことは間違いないとナオは静かに胸を撫でおろす。
「ああ、忘れていた。俺の名は阿久井悠。日本からこの世界にトロールとして転生した異世界人だ。(ハンドルネームの字でいいか・・・)悪韋と書いてあくいと呼ぶ。ナオさんに術を教えた人に会いたいのだが可能だろうか?」
トロールこと阿久井悠は地面に「悪韋」というワ国文字を書いて、野太い下の犬歯を覗かせて怖い笑顔を見せた。
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