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26話 遅れて牛銅たちがジャンにやって来た
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人の顔に牛の角と牛の耳。白目の少ない大きくつぶらな瞳の牝牛人と呼ばれる種族の女性の獣人を先頭にして、灰色狼の頭に人の体をもつ男の狼人。
人間の体にネコミミ、長いネコのしっぽを持つ男女の猫人。
犬の頭に人の体をもつ二人の男の犬人といった獣人パーティの冒険者が、港湾都市ジャンに到着したのは昼過ぎの事だった。
「ここには何を?」
ジャンの南門で訪問者を審査する赤毛の番兵が、やってきた牛銅たちに向かって訪問の理由を訪ねる。
「魏府のギルド所属の冒険者です。仕事を終えて帰国する途中で、ここには休息と物資の補給のためにきました」
牛銅は魏府のギルドカードを見せながら答える。
「ではカードを持ってそこの水晶に手をかざしてください。犯罪履歴の確認の後、この街での仮の身分証明書になります」
赤毛の衛兵は、少し離れたところにあるこぶし大の透明な水晶を指さす。
牛銅はカードを持って水晶に手をかざす。
ピカッと水晶は青く輝く。
続いてイヌガミがカードを翳し4人もそれに倣う。
「過去の犯罪歴がないのを確認しました。ようこそジャンへ」
赤毛の番兵は小さく頭を下げる。
「で、それはギルドに卸されるのですか?」
赤毛の衛兵は、犬人が曳いていたリアカーに積まれた素材の数々に視線…主に数体ほど横たわる大猪の肉を見ながら尋ねる。
「ああ本当なら干し肉にしたかったんだが、加工する時間がないからこのままギルド行きだよ」
イヌガミは苦笑いしながら答える。
「へぇ・・・まあギルドに卸してもそのまま領主さま行きなんだろうなぁ、羨ましいねぇ」
赤毛の衛兵も苦笑いで応える。
「食糧事情がそこまで悪くなってんのか?」
「宿屋ではどこも固い黒パンが1つとお代わり自由の味の薄いスープが定番ですよ」
「マジか。一角兎は売らずに宿の方に持ち込むか・・・」
「え、本当ですか?念のため宿を聴いても?」
「うみどり亭だな。もしかするとお零れに預かれるかもな。がっはっはっは」
イヌガミは赤毛の番兵の肩をバンバン叩きながら豪快に笑う。
「なんだろうね、あのわざとらしい小芝居は」
少し離れていた所で牛銅たちを観察していた菜緒虎は軽く息を吐く。
「街にいる仲間に対しての合図でしょうか」
菜緒虎の真横に天城が滲むようにして姿を現す。
「まあそんなところかな…さて、牛銅たちはミストに尾行させて、某は一旦宿に戻るので何かあれば連絡を」
「了解しました。ところで菜緒虎さま。某ってなんですか?」
「侍は自分の事をそう言うらしい」
菜緒虎の答えにに天城は小さく頷く。もっとも納得しているようには見えなかった。
街に入った牛銅たちは、真っすぐギルドに直行するとリアカーに積んであった素材を売り払い、宣言した通り宿屋うみどり亭に宿をとる。
そうして夜も更けた頃、うみどり亭から牛銅とイヌガミが出てきた。
「菜緒虎さま」
天城が囁く。
「ん」
うみどり亭の屋根のうえで結跏趺坐の姿勢でいた菜緒虎はゆっくりと立ち上がる。
ミストに尾行させているので慌てたりはしない。
やがて牛銅たちは街外れにある木を十字に組んだ小さなシンボルを掲げる小さな建物の中に入っていくのを確認する。
「菜緒虎さま…あの建物、何というか不快です」
天城のほやんとした顔が苦痛に歪む。
「それは個人的なもの?」
尋ねようとしたとき菜緒虎の意識下にミスト二体の絶叫が聞こえる。
「天城は待機」
「了」
顔色の悪い天城をその場において奈緒虎は建物に近づく。
「お前らつけられたな」
建物の中から野太い男の声が聞こえてきた。
人間の体にネコミミ、長いネコのしっぽを持つ男女の猫人。
犬の頭に人の体をもつ二人の男の犬人といった獣人パーティの冒険者が、港湾都市ジャンに到着したのは昼過ぎの事だった。
「ここには何を?」
ジャンの南門で訪問者を審査する赤毛の番兵が、やってきた牛銅たちに向かって訪問の理由を訪ねる。
「魏府のギルド所属の冒険者です。仕事を終えて帰国する途中で、ここには休息と物資の補給のためにきました」
牛銅は魏府のギルドカードを見せながら答える。
「ではカードを持ってそこの水晶に手をかざしてください。犯罪履歴の確認の後、この街での仮の身分証明書になります」
赤毛の衛兵は、少し離れたところにあるこぶし大の透明な水晶を指さす。
牛銅はカードを持って水晶に手をかざす。
ピカッと水晶は青く輝く。
続いてイヌガミがカードを翳し4人もそれに倣う。
「過去の犯罪歴がないのを確認しました。ようこそジャンへ」
赤毛の番兵は小さく頭を下げる。
「で、それはギルドに卸されるのですか?」
赤毛の衛兵は、犬人が曳いていたリアカーに積まれた素材の数々に視線…主に数体ほど横たわる大猪の肉を見ながら尋ねる。
「ああ本当なら干し肉にしたかったんだが、加工する時間がないからこのままギルド行きだよ」
イヌガミは苦笑いしながら答える。
「へぇ・・・まあギルドに卸してもそのまま領主さま行きなんだろうなぁ、羨ましいねぇ」
赤毛の衛兵も苦笑いで応える。
「食糧事情がそこまで悪くなってんのか?」
「宿屋ではどこも固い黒パンが1つとお代わり自由の味の薄いスープが定番ですよ」
「マジか。一角兎は売らずに宿の方に持ち込むか・・・」
「え、本当ですか?念のため宿を聴いても?」
「うみどり亭だな。もしかするとお零れに預かれるかもな。がっはっはっは」
イヌガミは赤毛の番兵の肩をバンバン叩きながら豪快に笑う。
「なんだろうね、あのわざとらしい小芝居は」
少し離れていた所で牛銅たちを観察していた菜緒虎は軽く息を吐く。
「街にいる仲間に対しての合図でしょうか」
菜緒虎の真横に天城が滲むようにして姿を現す。
「まあそんなところかな…さて、牛銅たちはミストに尾行させて、某は一旦宿に戻るので何かあれば連絡を」
「了解しました。ところで菜緒虎さま。某ってなんですか?」
「侍は自分の事をそう言うらしい」
菜緒虎の答えにに天城は小さく頷く。もっとも納得しているようには見えなかった。
街に入った牛銅たちは、真っすぐギルドに直行するとリアカーに積んであった素材を売り払い、宣言した通り宿屋うみどり亭に宿をとる。
そうして夜も更けた頃、うみどり亭から牛銅とイヌガミが出てきた。
「菜緒虎さま」
天城が囁く。
「ん」
うみどり亭の屋根のうえで結跏趺坐の姿勢でいた菜緒虎はゆっくりと立ち上がる。
ミストに尾行させているので慌てたりはしない。
やがて牛銅たちは街外れにある木を十字に組んだ小さなシンボルを掲げる小さな建物の中に入っていくのを確認する。
「菜緒虎さま…あの建物、何というか不快です」
天城のほやんとした顔が苦痛に歪む。
「それは個人的なもの?」
尋ねようとしたとき菜緒虎の意識下にミスト二体の絶叫が聞こえる。
「天城は待機」
「了」
顔色の悪い天城をその場において奈緒虎は建物に近づく。
「お前らつけられたな」
建物の中から野太い男の声が聞こえてきた。
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