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28話 菜緒虎、成り行きでイヌガミたちを救出する
しおりを挟む「死ね」
火候は、青龍刀を抜くとイヌガミに斬りかかる。
「だ、旦那!」
イヌガミは即座に仰け反って躱すが、完全には躱せなかった。
イヌガミの顔に、横一文字の切り傷が走る。
火候は盛大に舌打ちして、再び斬りかかる。
「何の冗談ですかぁ旦那」
イヌガミも即座にショートソードを抜いて火候の青龍刀を受け止める。
「何の冗談だと?呪いをかけられた上に、間者まで引っ張てきた無能を始末するだけだ」
火候は上段から青龍刀を振り下ろしイヌガミはそれをショートソードで上手く流す。
ガキッ、シャ、ガキッ
二撃、三撃と剣がぶつかる甲高い音が響く。
「きゃあ」
牛銅が悲鳴を上げる。
「どうした牛銅」
イヌガミが悲鳴の上がった方に少し身体を捻って見る。
そこには、数珠を拳に巻いて牛銅のダガーを受け止める狸人と、腹部からショートソードの刃先を生やした牛銅。
そして牛銅の背後にぴったり身を寄せる狐人の姿があった。
がふっ
牛銅の顔が歪み口から大量の血が噴き出る。
「ち、畜生てめぇ」
イヌガミは狸人に向かってショートソードを振り下ろす。
ガキッ
ショートソードはあっさりの狸人の数珠に受け止められる。
「ばかな。なんで斬れねぇ」
「儂の数珠はワ国製で珠は鋼糸で繋いでおるからの」
狸人の顔が笑いで緩む。
「ワ国の体術使いかよ」
イヌガミは大きく舌打ちする。
「俺と戦ってる最中によそ見とか、馬鹿かお前。罰だ苦しんで死ね」
ゴキャという音と共にイヌガミの肩に激痛が走る。
見るとイヌガミの肩に青龍刀が峰からめり込んでいた。
どがっ
不意に、派手な音を立てて教会のドアが蹴り破られる。
「何者だって、問われて名乗るほど馬鹿じゃか」
火候は青龍刀を構えなおし、侵入者に対峙する。
侵入者は菜緒虎だ。
シュ
菜緒虎は、太腿のベルトに差していた短剣を狸人に向かって投げる。
ガキ
いつの間にか狸人の前に立ち塞がっていた狐人が、苦無と呼ばれる短剣で短剣を弾く。
「すまぬな嘉辰。嘉辰?」
狸人の問いかけに答えることなく、狐人はぐらりと崩れる。
狐人の喉には、苦無で弾いたはずの短剣が刺さっていた。
「光よ集え極大」
闇の中に一瞬の閃光が走る。
「目が目がぁ」
火候と狸人が目を押さえてよろめく。
獣人は夜目が効くので、暗闇からの閃光の威力は抜群である。
どごっ
一気に間合いを詰め、菜緒虎は狸人の脳天に木刀を叩き込む。
木刀に直撃を受けた狸人の脳天が大きく凹む。
容赦ない一撃である。
「おい。逃げる気があるなら手を貸すぞ?」
菜緒虎は救いの手を差し出す。
「頼む。それで俺の仲間は」
「既に死んでる可能性は高いぞ?蘇生のアテでもあるのか」
「ある」
菜緒虎の問いに、イヌガミはそう断言する。
「判った」
菜緒虎は即座にスケルトンソルジャーを召喚し、牛銅を担いでくるように指示を出す。
「逃がすかぁ」
火候が目を押さえたまま青龍刀をぶん回す。
「沈んどけ」
菜緒虎は力を込めて火候の鳩尾に木刀を突き入れると、イヌガミの手を引いて教会を飛び出した。
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