ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

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49話 劉美さんが士官するにあたっての待遇はこのようになっています

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「これには深い訳があります」
苦笑いしながら劉美は話し始める。

いままでの六年間、劉美は官僚として王都で尚書補佐として下積みをしていた。
今年から、地方行政を調査する覆面監察官(今風にいうと潜入捜査官)として魏府魏府王国の東にある南海郡に赴任した。
しかし、着任早々に南海郡太守である陶塔に酒の席でセクハラに遭う。
それに激怒した張緋が、陶塔を小パンチからの怒涛の十連コンボでフルボッコ。
関翅が張緋を止めに入ったが、このとき陶塔が劉美と張緋を罵倒。
これに怒った関翅と張緋による息ピッタリのダブルコンボが炸裂。
挙句、陶塔を簀巻きにして、郡都の城の庭に生えていた大きな松の木に吊るしてしまったのだという。

幸いなことに、劉美が南海郡に赴任した表向き理由・・・
一年後に、陶塔が南海郡太守の任期を終えて、次の任地に向かう前に作製される引き継ぎ文書のために派遣された書記官の一人という設定だったこと。
劉美一行は、南海郡に入るために使った偽名と簡単な変装術のお陰で、陶塔からの追手から逃げ回ることに成功する。
そうして、どうにか僧操そうそうの元に逃げ込んだのが、いまから三カ月前。
ちなみに、僧操と劉美は、劉美が新人官僚のとき1年間ほど僧操の下で宮廷作法の勉強をしていた師弟関係だ。
劉美の人となりを知る僧操が、今回の事を利用して国外に逃がすことにしたらしい。
というか、劉美たちをこの地に逃がすための口実として人材派遣を言い出したようだ。

菜緒虎は、手に入れた僧操と劉美の情報を即座にアルテミスの元に送る。
劉美一行を採用するという返事はすぐに帰って来た。

「ではよろしくお願いします」
筍幾しゅんいくは、実にいい笑顔で頭を下げると、今回の取引成果を確認するために部屋を退出した。

菜緒虎は、劉美にクレの内政のための官僚組織の構築。
関翅には百五十人長たちに軍の組織的な運用を教える教官。
張緋には兵の効率的な訓練を指導する教官としての仕事を依頼する。

報酬は・・・
「報酬は月に大銀貨五枚の俸給。住宅はこの地に用意します。あと耕作用の土地を100m×100m。あと、幹部報酬としてスケルトン四体が供与されます」
「スケルトン四体?」
張緋の質問に、確か自分も困惑したなぁと菜緒虎は思わず苦笑いする。
リュウイチが配給するスケルトンは教えれば教えたことを学ぶ特異型。
身の回りの世話から、農耕、狩猟、鉱山採掘にまで従事してくれるスケルトンは今は大事な財産である。

「ソウキ領でスケルトンは、良き隣人であり労働力です。教えれば教えたことを学ぶ特異型でもありますが」
菜緒虎の言葉に劉美はポンと手を叩く。

「菜緒虎さま。スケルトンは賢くなりますか?」
「上司であるアルテミス様の配下であるスケルトンの中には鍛えられて内政に従事しているスケルトンがいます」
菜緒虎の言葉に劉美は何やら思案を始める。

「スケルトンと戦うとスケルトンは強くなるのでしょうか?」
今度は関翅が質問する。

「なりますね。稽古のため2体ほどスケルトンをスケルトンソルジャーに育てて交換したことがあります」
そして、上手く育てるとスケルトンソルジャー1体をスケルトン3体に交換してくれることがあると説明する。
菜緒虎は、護衛として死騎士デスナイトまで育てた四体に加えて、いまでは非戦闘活動に従事する三十体の家臣スケルトンの所有者だ。

「他にどんな兵種が?」
はいはいと手を上げて張緋が質問する。

「スケルトンは戦士、弓士、魔法使い、他にはゾンビとか色々と分岐するので、部下にするもよし転売するもよしですよ」
「魔法使いは育てられないぞ?」
続けて張緋が質問する。

「全方位に射程が長くなった弓士ですよ。現在、アルテミス様の元で最終訓練中でここにはまだ配属されてませんが」
必要なら、すぐにでも呼び寄せますと付け加える。

菜緒虎の言葉に三人は少し悩んでいたが、情報を他国に漏らさないことを条件に契約することを承諾する。
菜緒虎が劉美たちと契約していたころ、西のアタラカ森砦では悪韋が指揮を執るアタラカ森砦防衛隊とマッサチン国のドラド辺境伯との間で戦端が開かれようとしていた。
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