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2. ママ、3度目の出産
しおりを挟む〈 渚視点 〉
「よっこらしょ…っと…」
俺は今にもはち切れんばかりに大きくなったお腹を、右手で支えながら立ち上がり、左手で乾燥まで終わった洗濯物が入った籠を持ち、脱衣場を出た。
「ママ! だめでしょ!」
出たタイミングで、次男の紡が怒りながら駆けてくる。
見つかっちゃったなぁ…と、内心で苦笑する俺。
「渚」
今度は、紡の声を聴いてキッチンから出て来た大和が、またか…と言わんばかりの呆れ顔で俺を呼ぶ。そんな大和の横には長男の絆が立っている。
近付いて来た大和は俺の手から籠を取り上げると、同じく近付いてきた絆に渡す。
「絆、紡、2人で畳んでくれるか?」
「うん」
「はぁい」
元気良く返事をした双子が行ってしまうと、大和は俺の大きくせり出したお腹を撫でた。
「屈むような姿勢はするなって言っただろ。何もしなくて良いから座ってろって」
「少しくらい大丈夫だよ。大和は心配し過ぎ。家事くらいなら平気。それに、少しくらい動いたぼうが良いんだよ?」
「………。はあ……」
盛大に溜め息を吐く大和。
「それは単胎妊娠の場合だ。渚の腹にいるのは双子! しかも2回も腹切ってんだから、家でも極力安静にって言われてるの、知ってるんだからな?」
「……………」
返す言葉もない…。
そうなの。俺は現在妊娠中。しかも双子。4人目と5人目。3回の出産で5人の子供のママになる予定。
けれど、今回は過去2回の妊娠出産よりリスクは高いと、安定期に入る前にΩ科と産婦人科の先生、両方に言われた。元々、多胎児妊娠は単胎児妊娠よりリスクは高いのだけれど、俺の場合は既に2回帝王切開でお腹を切っていて子宮が破裂しやすいとのこと。双子で、より子宮は伸びるから、そのリスクは更に高くなる。
「多胎児妊娠に安定期はありません。安産の為に妊娠中の適度な運動は推奨されていますが、双子を妊娠中の一ヶ瀬さんは後期に入ったら自宅でも極力安静に過ごさなければなりません。自宅でそれが難しそうなら、管理入院していただくことになります」、と散々注意された俺…。
上の双子の時と違い、今回は子供が3人いるから管理入院だけは避けたくて、言われた事を守って出来るだけ安静を心掛けてはいるんだけれど、根がじっとしていれない性格なもんだから、たまにこうして家事をしようとしては怒られている。家事…というか、屈んだり、重い物…ではないけれど大きな物を抱えるようにして持ったり、立ち仕事したり…。で、そんな俺を双子達が目敏く見つけて注意する、という…。
ママ、いう事聞かない子供みたいだなぁ…。
笑い事ではないんだけれどね。
「渚、もう少しなんだから堪えてくれ…」
俺をソファーに座らせながら懇願する大和が面白い。
「笑い事じゃないんだぞ?」
あ、内心で笑ってるのバレた。
「ママ」
俺達の所に三男の芽來がやって来た。両手でカットりんごの乗ったお皿を持って。食後のデザート中だったらしい。
芽來は良く食べる。とにかく食べる。現在4歳。6歳の兄達よりも沢山食べる。だからか、ぽっちゃりさんだ。双子達はご飯でお腹いっぱいになってご馳走様をするけれど、芽來はご飯を双子と同じか少し多めに食べ、そして必ず食後に追加で果物を食べる。その大切なりんごを持って来た芽來が何をするのか見ていた俺達だけれど、ローテーブルの上にお皿を置いてりんごを一つ、ぷくぷくの手で掴むと、
「ママ、んっ!」
「……………」
俺の口の前に差し出した。食べろ、と言いたいらしい。でも、「んっ!」って…。
「くれるの? ありがとね」
「んっ!」
お礼を言うと頷く芽來。
だから、「んっ!」って…。めぐ、話そう?
芽來は話せない訳じゃないんだけれど、何かこう…なんて説明したらいいか…。話すのが面倒だと言わんばかりに首を縦横に振って応える。その時に発する言葉は「んっ!」だ。首振りが通用しない場面ではちゃんと話してるんだけどなぁ。そして何故か、4歳にして貫禄がある。一ヶ瀬のお義父様のようだ。
何度も言うけれど、まだ4歳。
それでいいのか、芽來よ…。
なんて思いながら可愛い手からいただいたりんごを咀嚼していると、今度はパパに「んっ!」と手を伸ばして抱っこを要求。大和が片腕で芽來を抱き上げて片手でりんごの皿を持って俺の隣に腰を下ろすと、パパが持つ皿からりんごを取り、芽來は残りのりんごを堪能していた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
5日後、俺は出産の為に入院した。
妊娠37週ー。
入院した2日後、俺は予定帝王切開で男女の双子を出産したー。
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