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9. αとΩの子供を育てるということ
しおりを挟む〈 渚視点 〉
10歳になった上の双子…絆と紡は、病院で受けた第二性確定検査で改めて、絆はα、紡はΩと診断された。今後、この結果が覆る可能性は極めて少ない。
結果は検査した2週間後に郵送で知らされたんだけれど、封筒の中には検査結果の用紙と一緒に、大事な話があるから夫夫だけで来院してほしい旨が記された紙が入っていた。親だけで…という文言に大和と2人して首を傾げたものの、行ってみなければ判らないので、病院に予約を取り来院したのが5日前のこと。
医師 『今後はより一層、絆くんと紡くんの距離感を、注意して見てあげてください』
大和 『距離感…ですか?』
医師 『これまでも折を見て話をしてきましたが、α性とΩ性の子供を同じ家で育てるのには、とても大変な事なんです』
俺 『でも、まだ10歳ですよ? それに、遺伝子上の繋がりのある家族同士なら、Ωフェロモンへの耐性はあるって…』
医師 『確かにそういった研究結果があります。ただ、絶対ではありません。発情ピーク時のΩから発せられるフェロモン量は、αの理性を焼き切る程の脅威になる。普段のフェロモンには耐性があっても、発情期に大丈夫とは限らない。番同士のお二人ならお解りになりますよね?』
俺&大和 『『……………』』
医師 『何も2人を引き離せと言っている訳ではありません。貴方がたは、下のお子さん達を含め、第二性関係なく大切に育てている。それは一見、我が子なのだから当たり前の事のようにみえて、実は難しい事なんですよ。αとΩの子供を同時に育てるということは。
話を戻しますが、10歳を過ぎると第一性、第二性ともに、一歩ずつ大人へと近付いていきます。体付きが変わるだけでなく、男子なら精通、女子なら初潮を迎え、αはΩの項を噛む為の犬歯が発達し、Ωなら発情期を迎えます。だからこその提案です。紡くんがいつ発情期を迎えるかは判りません。ですから、特に無防備になるお風呂と寝室は分けたほうがいいと思います。強制ではありません。あくまでも提案として受け止めていただけると助かります』
病院で医師に『提案』されてから5日。
夜、子供達が寝た後に俺と大和は毎晩話し合い、結果、医師の提案通りにする事にした。
正直、そこまで心配する必要が?と思わなくもない。絆と紡は兄弟だ。双子で、お腹の中にいる時から一緒に育った。他所様の双子や兄弟よりは確かに、過剰な仲の良さだなぁ…と思った事もあったが、年齢が上がっていくにつれ、それも落ち着いてきた、外では。家の中では相変わらずべったりな2人だが、下の3人の事も溺愛気味だから、こうして改めて言われてみるまで、2人の第二性を意識した事は無かった。
けれど、俺はかつて『Ω男子専門養護施設』で働いていたから、Ω性の子供が親に育児放棄される理由が上の子がαだから、もしくは2人目がαだったからという、子供にとっては理不尽で身勝手なものが多かった事を知っていた。Ωだからという理由で血を分けた我が子すら簡単に手離してしまえるほど、αとΩの子供を同じ家の中で育てる事を忌避する親が多いという事だと思う。
俺達は絶対にしないけどな! ってか、絆と紡がαとΩとして生まれた時から、どちらかを手離すなんて考えた事もない。差別なんてした事もない。強いて言うなら、体調を崩しやすい紡を優先してしまう事がままあるくらいか。紡大好きな絆は全くもって気にしていないようだけれど。
でも、医師の杞憂も尤もだとも思う。誰もがそうだけれど、いつまでも子供のままではいられない。男の子と女の子の兄弟だって年頃になれば部屋を分けたり、お風呂だって一緒に入ったりはしない。それと同じものだと思えば…。2人とも男の子だけれど…。
切ないなぁ…。
俺と大和はお互いの思いを確認しあい、大和が絆に、俺が紡に話す事にした。2人一緒に…と思ったけれど、別々のほうが話す方も聞く方も落ち着いて話が出来ると思ったから。
話す前には大和と話す内容の擦り合せをした。話す俺達に互いの見解に相違があってはならない。
そうして、絆と紡に話した俺達。
寂しそうな顔をしながらも頷いてくれた双子達。
ごめんね…。不甲斐ないパパとママで…。
心の中で思いながら俺は…俺達は、これで双子達は同じ家で健やかに暮らし、兄弟仲良く育っていけるんだと安心していた。
けれど……。
2年後、その過信が最悪の事態を招くー。
俺達がもっと注意して見ていたら…。
医師の言葉の意味をもっと重く受け止めていたら…。
ううん、もっと前に…。
あの子達が『αとΩの双子』として生まれた意味を深く考える事が出来ていたら…。
何かが変わったのだろうかーーー。
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