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10. 充実した日々の中で…
しおりを挟む〈 渚視点 〉
自宅に隣接するカフェ『エスポワール』の開店から2年。小さなカフェだけれど、近くに手軽に入れる飲食店がないからか、それなりに繁盛しているとは思う。
開店は朝8時、閉店は午後8時だ。
働いているのは俺と大和は当然として、大和の長兄の奥さんで大和の同級生でもある朝陽、そして俺が以前働いていた児童養護施設で世話をしていた陸。
朝陽は専属パティシエとして洋菓子の提供だけをお願いしようと思ったんだけれど、彼から、
「2人だけじゃ大変じゃない? 人を雇うつもりでいるなら、僕、雇ってくんない? 設備揃ってれば早めに出勤してお店の厨房でケーキ焼くし」
と言ってくれたから、全くの他人を雇うよりは…と即採用決定。
陸は施設を出た後に番婚をしていて、婚家は開業医。彼の夫と義父は一ヶ瀬家の主治医だ。婚家が医者なら陸も毎日忙しいんだろうなぁ、と思ってたら、
「僕、看護師免許持ってないし、事務スキルも持ってないから、せいぜい朝と夜の院内の掃除くらいしか出来る事はないの。渚先生のとこなら駿祐さんも反対しないと思うから、僕も働きたい」
そう言ってくれた。で、本当に陸の旦那様は「大和と渚くんの所なら…」とあっさりOKしてくれたらしい。しかも、菓子折り持って「陸をよろしく頼むよ」と挨拶に来た。
いや、パートとして雇うだけだし、何の挨拶…?と苦笑した俺と大和だった。菓子折りはありがたくいただいたけれども。
ともあれ、陸も即採用した。
カフェは午後3時半から5時まで一旦閉めて、午後5時から8時まではディナータイムになる。朝陽と陸は子供がいるから3時半で上がるけれど、午後5時から閉店までは、高校生になった朝陽の長男の葵斗がバイトに入ってくれる。一ヶ瀬家の御曹司なんだからバイトなんかしなくても…と思うけれど、本人から「働きたい!」って言われたら断れないよね。彼の母の朝陽も働いてくれてるし。子供達の世話があるから俺も余程忙しくない限り夜は店には出ないから、俺達としては助かるし、有り難い。夜は昼営業ほど混まないし。
ほぼ…というか、完全に身内だけで回しているけれど、問題はないと思う。元々、家族経営の予定だったしね。
オープンから1年ちょっとは俺は柚來を背負って接客を中心にしていたけれど、脚は動かなくても知能は全く問題の無い柚來は、3歳から陽咲と同じ、上の3人の子供達も通った保育園で預かってもらえる事になり、陽咲と仲良く保育園に通っている。週に一回、病院にリハビリに行く為に休むけれど、それ以外は皆勤賞だ。柚來、風邪一つ引かないから。
これは柚來だけじゃなくて紡以外の子供4人全員に言える事だけれど、αって小さい頃から丈夫だよね。子供は小さい頃はよく体調崩すって聞くし、兄弟が多いと1人が熱出すと連鎖的に全員に感染るとも聞くけれど、うちの子達は風邪引いた紡の傍にいても平気だしな。親としては助かるけれども。5人が連鎖的に体調崩すとか、想像するだけで辛い。肉体的にも精神的にも。その上、俺ら親まで…だったらそれはもう混沌だよなぁ。
まあ、そんなこんなで、大変な事も多いけれど、忙しくも充実した毎日を送っていた俺達。
だけど…。
毎日が平和で、幸せで…。
考える事すら忘れていた。
彼らの親として、赦されない『罪』…。
何故…? どうして…?
油断…? 失念…? 過信…?
どんな言葉を並べ立てても、果てにあるのは『後悔』だけーーー。
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