【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade

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《本編》

58. 琳の希望(彰宏side(22)

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  琳の希望は『離婚』と『番の解消』ー。

  息を呑むと同時に、頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。

『離婚』と『番の解消』は、決別という意味では同じ様に思われがちだが、実質的にはが全く違う。
  離婚は紙切れ1枚にそれぞれがサインをして役所に提出すれば、簡単に夫夫ふうふ関係は解消される。多少は心の痛みを感じるかも知れないが、だ。
  対して番の解消は、番契約がαがΩのうなじを噛むという体を使った契約を破棄する行為。α側からしか出来ず、たとえ互いに納得済みの解消であっても、Ω多大な影響を与える。果てしないに精神を病むΩも多く、その上、再びαと番う事は出来ず、それでもやって来る辛い発情期を1人で耐え、やがて疲弊し……。

「……っ……!!」

  思い浮かべただけで身震いした。一瞬でもを想像した事を後悔した。けれど、その想像を脳裏から振り払ったところで、唐突に、琳が入院した次の日にお義兄さんに…瑠偉さんに言われたを思い出した。

『お前は琳を虐待したのか?』

  問われた時は心外だと思った。俺が大切な琳を虐待なんかするわけがない。疑われた事に少なからず憤りすら覚えた。
  だが、本当にそうなのだろうか?  暴力を加えるばかりが虐待じゃない。精神的に追い詰める事も虐待なのではないか…。
  俺は発情期の琳を…Ωを放置した。琳は番だ。番のαである俺しか一緒に過ごしてやる事が出来ないのに、俺は2も。抑制剤を飲んでいても辛かっただろう。琳の事を忘れていた訳じゃない。発情期の周期だって把握していた。それでも俺は。それが2年も続き、心身共に擦り減らした琳は……。
  ……………。
  内心で自嘲する。
  番解消がΩにとって及ぼすかも知れない影響を、琳が知らない筈がない。知っていて琳は……。
  君は離婚だけではなく『番の解消』を望むのか…。
  俺は、君が俺とのを全て断とうとするくらい君を追い詰めていたのか…。
  ……………。
  ごめん、琳。それでも…それでも俺は……。

「離婚はしません。番の解消もしません」
 
  俺の答えだった。

「……………。はあ……」

  じっと俺を見ていた瑠偉さんは、大きな溜息を吐いた。

がいるんだろう? もう一人の番との間に。お前にとってはが家族じゃないのか? 生活の殆どをで過ごしていたんだろう?」
「俺の家族は琳だけです」
「琳はそうは思ってない。自分は邪魔者。自分がいる限り、お前の子供は父親のいない子のままだ。子供には罪はない、と。自分がいなければ、お前は子供を番と結婚できる。そう言っていた」
「……………。そっ…それでも俺は…っ…」

  祐斗との結婚など考えた事もない。考えるだけで虫唾が走る。望んだ番じゃない。望んだ子供じゃない。宏斗が可愛くないといえば嘘になるが、琳と別れてまで手に入れたいものじゃない。

「琳をないがしろにしてまで共に生活していたもう一人の番愛人だろう?」
「っ…。蔑ろになんかっ…」

  最後まで言わずに口を噤んだ。
  してないとは言い切れない。蔑ろにしているつもりはなかった。琳なら後からでも話せば解ってくれると勝手に思い、信じていた。俺が祐斗や宏斗といる時、独りの琳がどうしていたかなど考えなかった。

「琳はお前の子供が欲しかった。お前と子供とのが欲しかった。それなのに、お前の子供を愛人が産んだ。自分ではなく。絶望しただろうな。それに追い打ちをかける様に、、とまで言われた琳の気持ちがお前に解るか?」
「……………」
「結局、お前の言う『愛』とはその程度だ。いつも屈託なく幸せそうに笑っていた琳からを奪ったのはお前達彰宏と愛人だよ」

  瑠偉さんの言葉が氷の刃となって胸に突き刺さる。
  でも…それでも俺は別れたくない。愛してるんだ。
  そして、結果として俺が出した答えは…。

「…琳と子供を作ります。俺が欲しいのは琳が産んでくれた子供です。琳とは3年経ったら…としてたんです。結婚して3年経ちました。だから…」

ドンっ!!!

  瑠偉さんが拳でテーブルを叩く。流石に分厚い天板のテーブルにはヒビは入らないが、室内の空気が震えた…気がした。
  瑠偉さんのに睨まれ、その鋭い眼光に身が竦む。

「今更っ…! 今更、お前が! を言うのか!」
「…っ…!!」
「……………。…彰宏、琳がお前の子供を産む事はない。妊娠出来ない体だそうだ」
「…え……」
「退院前の検査で診断された」
「え…。そ…そんな訳…。結婚前の検査では問題ないと…」

  琳が自主的に受けた検査では生殖機能には異常は見当たらなかったと言っていたし、実際に検査結果の用紙を見せてもらったのだから間違いない。

はな。少なくとも1年前までは問題なかったのだろう」
「1年前…」
「そうだ。お前が素直に離婚に応じさえすれば言うつもりはなかった。琳がそう言っていた。お前に…とな。だが、応じてくれなければ話してほしい…とも言っていた。この事を知れば別れてくれると思うから…と」

  そう言って瑠偉さんが語ったに、俺は言葉を失った。自分の存在を消したくなる程の後悔とともにー。

  
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