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第二章 ルクバトにて

第二十七話 寮の食堂にて

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 部屋に入って思ったが、ここに住むことへの抵抗感は不思議となかった。
 これも、オクト君の人柄だからだろうか? というか、部屋今更だけど綺麗にしてるなぁ。

「さて、飯どうするよ? あ、お前の持ちスペース左側な?」

 オクト君に言われて、とりあえず団員服を自分の棚にしまう。

「えっと……お腹空いたなぁ。でも、私、まだお金が……」

 恥ずかしいが本当のことなので仕方なじゃないか!
 そんな事を思っていると、オクト君があっさりととんでもない事を教えてくれた。

「ん? ああ、それならリュドヴィック卿がお前の分の金渡して来たぜ?」

「えっ?」

 リュドヴィックさんが? どういうこと? てかいつの間に!?

「リュドヴィック卿曰く、『出世払い』だってよ? 面と向かって渡すの恥ずかしかったんかな? とにかく、500カウス渡すかんな!」

 そう言って、お金を渡される。何で出来ているのか、私には判断がつかないが鈍色に輝く、弓が刻印された硬貨だった。
 ちなみに、この世界の通貨単位は『カウス』らしい。なんでカウスなのかも、換算単位がいくらなのかも私にはわからないけど……。こういう貸し借り、苦手なのだ。

「んじゃ、食堂まで行っか!」

「う、うん……」

 ****

 寮の食堂は、本部のよりは小さいけれどやはり立派で、つい気遅れしてしまいそうだった。

「さてと、何食う? 俺、今日は魚の気分なんだよなぁ~!」

「私はなんでもいいかな……」

 他愛もないやりとりをしながら、食事を購入する。
 私は結局、この世界で口馴染んだシチューとパンにした。オクト君は宣言通り、魚のソテーに野菜いっぱいのサラダを頼んでいた。

 二人して、適当な丸テーブルにトレーを置き、椅子に座る。
 そして、いつもの祈りの言葉を述べて私達は食べだした。

 今日のシチューはなんだか、格段に美味しい。たっぷりの野菜も、ゴロッとしたお肉も、もう食べ慣れたはずなのに新鮮に感じられた。

 あまりの美味しさについ顔が綻んでしまう。すると、オクト君の表情がおかしいことに気づく。

「ん? 何かあった?」

「あ、いや……なんでもねぇよ。それよか、早く食っちまおうぜ?」

 心なしか赤い顔をしているオクト君を不思議に思いながらも、私は食事を再開した。
 しばらくして食べ終わると、オクト君がのんびりくつろぎながら話始める。

「ふ~食った食った! ……なぁ、イグナート」

「なに?」

「気になってたんだけどさ、お前、騎士団の階級とかわかってるか?」

 そう問われ、私は小首を傾げてしまう。言われてみれば……知らない。

 顔に出ていたのだろう。オクト君は優しい目で私を見ながら、口を開いた。

「やっぱりな! んじゃ、部屋戻ったら教えてやるよ!」

「あ、ありがとう?」

 困惑しながらお礼を言うと、オクト君が照れくさそうにする。

 そんなこんなで、私達は食べ終わった食器をトレーごと返却すると、部屋へと戻ることにした。
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