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第二章 ルクバトにて
第三十五話 『聖女ゼナイドの啓示』
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広場に着くと、たくさんの人で賑わっていた。
やっぱり黒レンガ造りだったけど、楕円形になっていて北側? 方面にステージが置かれていた。
『前世の私』だったら背伸びしないと見えなかっただろう。それくらい、人々が密集していて、案の定、ベルちゃんの背丈では見えそうになかった。
「見えないよ~、リュド兄~」
そうベルちゃんが言うと、リュドヴィックさんが無言で肩車をする。
仲良いな! てかその羽根で飛ばないんだね!
そんなことを思いながら二人を見ていると、視線に気づいたのか、リュドヴィックさんが睨んでくる。
「なんだ?」
「イエ、ナンデモナイデス」
怖いけど、もしかして照れ隠しですか?
リュドヴィックさんにもこんな一面があるとは……。
そんな失礼なことを考えていると、オクト君が声をかけてきた。
「なにしてんんだ? そろそろはじまるぜ?」
そう言われ、私達はステージを観る。すると、ステージ上にモブっぽい格好をした男の人が現れた。
「え~、それではこれより『聖女ゼナイドの啓示』を開演したいと思います! 皆様、お楽しみ下さい!」
そう言って挨拶をする。あ、挨拶の仕方はリュドヴィックさん達と同じなのね。
もしかして、この世界……またはルクバトでの挨拶なのかな?
そう疑問に思ったのもつかの間、私はすぐに劇に目を奪われた。
――司書であったゼナイドは。
質素な服装が逆に『ゼナイド』役の女性の美しさを際立たせる。
――聖書に導かれ。
本を持った役者達が舞う。
――『サジタリウス』様のお声を聴き。
半人半馬の姿をした男性の役者が現れる。
――啓示を授かり。
舞う聖女ゼナイドの姿。
――人々に危機を伝える。
困惑する人々の様子。
――啓示を信じない人々へ。
ゼナイドを批難する人々。
――雲が割れ、光がゼナイドを照らす。
光のベールに包まれるゼナイド。
――人々は啓示を信じ……。
怯えながら逃げ惑う人々の様子。
――災厄が都市などを襲う。
呆然とする人々と、神に祈るゼナイド。
そして、演劇はゼナイドを聖女として迎え入れ人々が舞う描写で終わった。終演とともに、四方八方から拍手喝采が鳴り響く。私も、全霊を込めた拍手を送った。
なんて美しいんだ! 魅入っちゃったよ!
感動していると、横からオクト君が私に視線をやる。
「ん? どうかした?」
「あ、いや。楽しかったならよかったけどよ……」
なんだろう? 少し複雑そうな顔をしているけど……。
そんなことを思っていると、リュドヴィックさんの肩から降りたベルちゃんが私達に声をかけてきた。
「凄かったですね! ワタシ、もう感動です!」
目を輝かせながら言うベルちゃんと対称的に、ずっと肩車をしていたからか、両肩をグルグルしているリュドヴィックさんが目に入る。
あ、シスコンでも辛いものは辛いんですね……。
余程辛かったのか、リュドヴィックさんがベルちゃんに声をかけた。
「ベル。今度からは早めに良い席を取ろう。その方が……もっと近くで観られるしな?」
「そうだね、リュド兄!」
本当に微笑ましいな……。
****
「じゃあ、ワタシ達はこっちなので! 今日はありがとうございました!」
そう言って挨拶をしてくれるベルちゃんに、私とオクト君も挨拶で返すと、リュドヴィックさんが私達の方へ視線をやる。
「明日からはまた鍛錬だ。気を引き締めるようにな? それでは失礼する」
そう言い残して、ベルちゃんと手を繋いで去っていった。
……あそこまで仲良いと、嫉妬心すらなくなるよね……。
「んじゃ、案内はもういいだろ。寮でゆっくりしようぜ?」
オクト君に声をかけられ、私は慌てて答えた。
「う、うん!」
……さっき、ちょっとだけリュドヴィックさん達とわかれるのが寂しかったのは、内緒だ。
やっぱり黒レンガ造りだったけど、楕円形になっていて北側? 方面にステージが置かれていた。
『前世の私』だったら背伸びしないと見えなかっただろう。それくらい、人々が密集していて、案の定、ベルちゃんの背丈では見えそうになかった。
「見えないよ~、リュド兄~」
そうベルちゃんが言うと、リュドヴィックさんが無言で肩車をする。
仲良いな! てかその羽根で飛ばないんだね!
そんなことを思いながら二人を見ていると、視線に気づいたのか、リュドヴィックさんが睨んでくる。
「なんだ?」
「イエ、ナンデモナイデス」
怖いけど、もしかして照れ隠しですか?
リュドヴィックさんにもこんな一面があるとは……。
そんな失礼なことを考えていると、オクト君が声をかけてきた。
「なにしてんんだ? そろそろはじまるぜ?」
そう言われ、私達はステージを観る。すると、ステージ上にモブっぽい格好をした男の人が現れた。
「え~、それではこれより『聖女ゼナイドの啓示』を開演したいと思います! 皆様、お楽しみ下さい!」
そう言って挨拶をする。あ、挨拶の仕方はリュドヴィックさん達と同じなのね。
もしかして、この世界……またはルクバトでの挨拶なのかな?
そう疑問に思ったのもつかの間、私はすぐに劇に目を奪われた。
――司書であったゼナイドは。
質素な服装が逆に『ゼナイド』役の女性の美しさを際立たせる。
――聖書に導かれ。
本を持った役者達が舞う。
――『サジタリウス』様のお声を聴き。
半人半馬の姿をした男性の役者が現れる。
――啓示を授かり。
舞う聖女ゼナイドの姿。
――人々に危機を伝える。
困惑する人々の様子。
――啓示を信じない人々へ。
ゼナイドを批難する人々。
――雲が割れ、光がゼナイドを照らす。
光のベールに包まれるゼナイド。
――人々は啓示を信じ……。
怯えながら逃げ惑う人々の様子。
――災厄が都市などを襲う。
呆然とする人々と、神に祈るゼナイド。
そして、演劇はゼナイドを聖女として迎え入れ人々が舞う描写で終わった。終演とともに、四方八方から拍手喝采が鳴り響く。私も、全霊を込めた拍手を送った。
なんて美しいんだ! 魅入っちゃったよ!
感動していると、横からオクト君が私に視線をやる。
「ん? どうかした?」
「あ、いや。楽しかったならよかったけどよ……」
なんだろう? 少し複雑そうな顔をしているけど……。
そんなことを思っていると、リュドヴィックさんの肩から降りたベルちゃんが私達に声をかけてきた。
「凄かったですね! ワタシ、もう感動です!」
目を輝かせながら言うベルちゃんと対称的に、ずっと肩車をしていたからか、両肩をグルグルしているリュドヴィックさんが目に入る。
あ、シスコンでも辛いものは辛いんですね……。
余程辛かったのか、リュドヴィックさんがベルちゃんに声をかけた。
「ベル。今度からは早めに良い席を取ろう。その方が……もっと近くで観られるしな?」
「そうだね、リュド兄!」
本当に微笑ましいな……。
****
「じゃあ、ワタシ達はこっちなので! 今日はありがとうございました!」
そう言って挨拶をしてくれるベルちゃんに、私とオクト君も挨拶で返すと、リュドヴィックさんが私達の方へ視線をやる。
「明日からはまた鍛錬だ。気を引き締めるようにな? それでは失礼する」
そう言い残して、ベルちゃんと手を繋いで去っていった。
……あそこまで仲良いと、嫉妬心すらなくなるよね……。
「んじゃ、案内はもういいだろ。寮でゆっくりしようぜ?」
オクト君に声をかけられ、私は慌てて答えた。
「う、うん!」
……さっき、ちょっとだけリュドヴィックさん達とわかれるのが寂しかったのは、内緒だ。
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