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第二章 ルクバトにて
第三十七話 翌朝になって
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翌朝。
……うん。身体は元気そうだ……。
「はぁ~……」
またしても早朝覚醒してしまった私は深いため息を吐くと、洗面所へ向かった。顔を洗う水が気持ち良い。
****
ピピピピー!!
「ん~……ん? おお、はえぇな」
テーブルで読書をしていると、時計のアラームでオクト君が起きてきた。
本を閉じ、オクト君に視線を向け私は元気よく声をかけた。
「おはよう!」
オクト君は洗面所に行ったらしい。顔を洗ったり歯を磨く音が聞こえてくる。
この世界、ファンタジーかつ中世ヨーロッパみたいな感じのクセに、ちゃっかり歯磨き粉やら歯ブラシやら、とにかく衛生面では私がいた『前の世界』とあまり変わらないらしい。
まぁ、その方がありがたいからいいんだけどさ?
「うーし、着替えて飯食って、朝礼行くか!」
「うん、そうだね。……私、朝礼出るのはじめてだよ。緊張するな~」
「基本的にはアルベリク団長やヴァレリー副団長のお言葉なんかがあるくらいだぜ?」
「ヴァレリー……副団長さん?」
聞き慣れない名前に、首を傾げるとオクト君が困ったように返してきた。
「おいおい、本部で会ったんじゃねぇか? 団長の横に居たお方だよ!」
そう言われて、あのダンディなナイスミドルの人の事かと理解した。
「ああ、あの人か!」
「そそ。そのお方が『ヴァレリー・ブーランジェ』副団長な? ちゃんと覚えとけよな~!」
イタズラっぽく笑いながら教えてくれた。
「う、了解です……」
「うし、着替えっぞ! 早くしろよな?」
「あ、ハイ」
こうして私達は団員服に着替えると、部屋を出た。
****
「おはようございます。オクタヴィアン卿、イグナート卿」
「おはようございます!」
「おはようございます、ランベールさん!」
「ふふふ、お二人共お元気そうでなによりですよ。では、行ってらっしゃい」
ランベールさんに見送られて、私達は寮を後にした。他の団員達を歩いていて、その中に紛れて行く。
不思議な感覚だった。
****
「それでは、最後にアルベリク団長より報告があります」
司会のヴァレリー副団長がそう言うと、アルベリク団長が壇上に立つ。
ここは本部一階、奥にある広い体育館みたいな部屋だ。正式名称を訊きそびれたのは、仕方ないよね……?
思ったより朝礼は早くに終わりそうでホッとしていると、アルベリク団長からとんでもない言葉が出た。
「何人かは知っていると思うけれど、ナマルサデアの下月八日に、リュドヴィック・エアラ卿が『勇者』の可能性のある『記憶喪失者』を保護した。場所がルクバト領内であることなどから、我々ルクバト聖騎士団員としてその者を受け入れたんだ。教皇庁にも既に報告済みなので、皆にも受け入れてほしい。その者の名は『イグナート・アウストラリス』卿だ。皆、よろしく頼むよ? という訳なので、イグナート卿。前に来てもらえるかな?」
え、え、え~!?
いきなりそんなこと言われましても……って、アルベリク団長と目が合いましたね。ハイ。
私は大人しく、アルベリク団長の近くまで行く。
「彼だ。皆、顔を覚えてあげてほしい。それから、『記憶喪失』という点も含めて彼の戦闘力強化にも協力してあげて欲しい!」
騎士達の拍手が鳴り響く。なんだろう、凄く恥ずかしい……というか、視線が怖いよおおお!!
そんな私の心境なんて知る由もなく、アルベリク団長からにこやかな笑顔をイタダキマシタ。
こうして、私の朝礼デビューは終わったのだった。
……うん。身体は元気そうだ……。
「はぁ~……」
またしても早朝覚醒してしまった私は深いため息を吐くと、洗面所へ向かった。顔を洗う水が気持ち良い。
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ピピピピー!!
「ん~……ん? おお、はえぇな」
テーブルで読書をしていると、時計のアラームでオクト君が起きてきた。
本を閉じ、オクト君に視線を向け私は元気よく声をかけた。
「おはよう!」
オクト君は洗面所に行ったらしい。顔を洗ったり歯を磨く音が聞こえてくる。
この世界、ファンタジーかつ中世ヨーロッパみたいな感じのクセに、ちゃっかり歯磨き粉やら歯ブラシやら、とにかく衛生面では私がいた『前の世界』とあまり変わらないらしい。
まぁ、その方がありがたいからいいんだけどさ?
「うーし、着替えて飯食って、朝礼行くか!」
「うん、そうだね。……私、朝礼出るのはじめてだよ。緊張するな~」
「基本的にはアルベリク団長やヴァレリー副団長のお言葉なんかがあるくらいだぜ?」
「ヴァレリー……副団長さん?」
聞き慣れない名前に、首を傾げるとオクト君が困ったように返してきた。
「おいおい、本部で会ったんじゃねぇか? 団長の横に居たお方だよ!」
そう言われて、あのダンディなナイスミドルの人の事かと理解した。
「ああ、あの人か!」
「そそ。そのお方が『ヴァレリー・ブーランジェ』副団長な? ちゃんと覚えとけよな~!」
イタズラっぽく笑いながら教えてくれた。
「う、了解です……」
「うし、着替えっぞ! 早くしろよな?」
「あ、ハイ」
こうして私達は団員服に着替えると、部屋を出た。
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「おはようございます。オクタヴィアン卿、イグナート卿」
「おはようございます!」
「おはようございます、ランベールさん!」
「ふふふ、お二人共お元気そうでなによりですよ。では、行ってらっしゃい」
ランベールさんに見送られて、私達は寮を後にした。他の団員達を歩いていて、その中に紛れて行く。
不思議な感覚だった。
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「それでは、最後にアルベリク団長より報告があります」
司会のヴァレリー副団長がそう言うと、アルベリク団長が壇上に立つ。
ここは本部一階、奥にある広い体育館みたいな部屋だ。正式名称を訊きそびれたのは、仕方ないよね……?
思ったより朝礼は早くに終わりそうでホッとしていると、アルベリク団長からとんでもない言葉が出た。
「何人かは知っていると思うけれど、ナマルサデアの下月八日に、リュドヴィック・エアラ卿が『勇者』の可能性のある『記憶喪失者』を保護した。場所がルクバト領内であることなどから、我々ルクバト聖騎士団員としてその者を受け入れたんだ。教皇庁にも既に報告済みなので、皆にも受け入れてほしい。その者の名は『イグナート・アウストラリス』卿だ。皆、よろしく頼むよ? という訳なので、イグナート卿。前に来てもらえるかな?」
え、え、え~!?
いきなりそんなこと言われましても……って、アルベリク団長と目が合いましたね。ハイ。
私は大人しく、アルベリク団長の近くまで行く。
「彼だ。皆、顔を覚えてあげてほしい。それから、『記憶喪失』という点も含めて彼の戦闘力強化にも協力してあげて欲しい!」
騎士達の拍手が鳴り響く。なんだろう、凄く恥ずかしい……というか、視線が怖いよおおお!!
そんな私の心境なんて知る由もなく、アルベリク団長からにこやかな笑顔をイタダキマシタ。
こうして、私の朝礼デビューは終わったのだった。
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