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第五章 旅は続く
第六十七話 船での夜と夢
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食事を終えた私達は、船内を船員さん達の邪魔にならない範囲で、交代で巡回したり、休憩したりして過ごしあっという間に夜になった。
ちなみに、ブリアック卿だけは馬達の様子を確認しに行くのもあるので、巡回の回数は少なめだ。
「よし、イグナート達はもう休んでくれ。オレはアンドレアス殿と少し話してから休む」
「了解です! リュドヴィック卿! ではお言葉に甘えてお先です! さ、行こうぜ、イグナートとブリアック卿!」
「う、うん。お休みなさい、リュドヴィックさんにアンドレアスさん!」
リュドヴィックさんの指示に従い、オクト君と私は挨拶をする。すると、ブリアック卿が静かに答えた。
「承知」
「ではな」
そう言って、リュドヴィックさんとわかれて、私達は客室へと向かった。
****
「ふぅ……」
私はあてがわれた部屋に着くなり、息を吐いた。寮生活に慣れてきていたためか、個室であることへ妙な気分になる。
そう個室。個室なのだ。なんだか、寂しいな……。
私は首を横にぶんぶんと振ると、備え付けのベッドにダイブした。
室内は二等客室だからかちょっと狭くて、ベッドに小さなサイドテーブルがあるくらいだった。
まぁ、なんか……よくわかんない絵も壁にかかっているけどね!
慣れない船で疲れたのか……いや、多分昨日の分も含めてか……疲れた私はすぐ眠りそうになったので、無理やり身体を起こし、持ってきた寝間着に着替えて備え付けの洗面台で歯を磨いて寝た。
****
その夜、夢を見た。
なんでもない夢ではなく、あのサジタリウス様との会話とかでもない、夢。
それは……『前世』の私の家族の様子だった。
無愛想なお父さんに、元気のない顔をしたお母さん。二人は、仏壇に手を合わせている。
その仏壇に置かれている写真は、父方のおじいちゃんとおばあちゃんに、母方のおじいちゃん、そして……『前世の私』。
それも、つい最近じゃなくて成人式で無理やり撮らされた時の写真だ。
貼り付けたような笑顔が、辛い。
……なんで、もっといい写真撮ってなかったんだろう?
……なんで、もっとお父さんやお母さんと話さなかったんだろう?
そんな思いが、ここに来て初めて湧き上がってくる。あれ?
なんで私、今までそんなこと考えなかったんだろう?
なんで……。
そこまで考えた時、別の夢に場面が変わった。
そこは、森の中。小さな集落の入り口で、茫然とする――俺。故郷を失った時の記憶。
……記憶?
違和感を覚えて起き上がった時には、私は……。
「あれ……? なんの夢見てたんだっけ?」
すっかり、見た夢のすべてを――忘れていた。
ちなみに、ブリアック卿だけは馬達の様子を確認しに行くのもあるので、巡回の回数は少なめだ。
「よし、イグナート達はもう休んでくれ。オレはアンドレアス殿と少し話してから休む」
「了解です! リュドヴィック卿! ではお言葉に甘えてお先です! さ、行こうぜ、イグナートとブリアック卿!」
「う、うん。お休みなさい、リュドヴィックさんにアンドレアスさん!」
リュドヴィックさんの指示に従い、オクト君と私は挨拶をする。すると、ブリアック卿が静かに答えた。
「承知」
「ではな」
そう言って、リュドヴィックさんとわかれて、私達は客室へと向かった。
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「ふぅ……」
私はあてがわれた部屋に着くなり、息を吐いた。寮生活に慣れてきていたためか、個室であることへ妙な気分になる。
そう個室。個室なのだ。なんだか、寂しいな……。
私は首を横にぶんぶんと振ると、備え付けのベッドにダイブした。
室内は二等客室だからかちょっと狭くて、ベッドに小さなサイドテーブルがあるくらいだった。
まぁ、なんか……よくわかんない絵も壁にかかっているけどね!
慣れない船で疲れたのか……いや、多分昨日の分も含めてか……疲れた私はすぐ眠りそうになったので、無理やり身体を起こし、持ってきた寝間着に着替えて備え付けの洗面台で歯を磨いて寝た。
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その夜、夢を見た。
なんでもない夢ではなく、あのサジタリウス様との会話とかでもない、夢。
それは……『前世』の私の家族の様子だった。
無愛想なお父さんに、元気のない顔をしたお母さん。二人は、仏壇に手を合わせている。
その仏壇に置かれている写真は、父方のおじいちゃんとおばあちゃんに、母方のおじいちゃん、そして……『前世の私』。
それも、つい最近じゃなくて成人式で無理やり撮らされた時の写真だ。
貼り付けたような笑顔が、辛い。
……なんで、もっといい写真撮ってなかったんだろう?
……なんで、もっとお父さんやお母さんと話さなかったんだろう?
そんな思いが、ここに来て初めて湧き上がってくる。あれ?
なんで私、今までそんなこと考えなかったんだろう?
なんで……。
そこまで考えた時、別の夢に場面が変わった。
そこは、森の中。小さな集落の入り口で、茫然とする――俺。故郷を失った時の記憶。
……記憶?
違和感を覚えて起き上がった時には、私は……。
「あれ……? なんの夢見てたんだっけ?」
すっかり、見た夢のすべてを――忘れていた。
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