【BL】傾国の美「男」

采女

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王都騎士団

魅了の体質

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 ユリエルが団長補佐見習いになって、一週間ほどが経った。
 はじめはエルマが朝五時に出勤してきて朝食を作っていたが、勤務外だからとユリエルが朝食を準備するようになり、朝はクライブ、エルマ、アンスヘルムのうちの一人か二人が一緒に朝食を取った。
 交代で休みになるので、全員が揃うことはないが、それでもダディエとユリエルを合わせれば、毎朝三人か四人でのほどよくにぎやかな食事だ。
 その後ユリエルは紅茶を淹れてから自室に戻り、昼まで寝て、基本的にはエルマが作った昼食を食べ、昼の執務を二時間ほど手伝ってから、また夕方まで仮眠を取り、起きて一緒に夕食を食べる。
 最近では、その後ダディエと剣の手合わせをしてから風呂に入り……あのプラグは、順調に大きいものへと変わっていた。
(んんっ……抜くのが、大変……)
 そういうわけで、毎朝の本当の日課は、朝食を作る前にプラグを抜くことだった。
 プラグは、抜けにくいように入り口部分の方が細くくびれていて、中に収まっている部分はそれよりも太い。
 当然、抜くためにはその太い部分を通過させなければならない。
 今は小さい方から七本目。中に収まっている部分の大きさは、鶏の卵くらいある。
(ん……ダメ……抜けない……)
 悩んだものの、そろそろ朝食を作る時間だ。
(うう……とりあえず朝食を作って、ダディエ殿が起きてきたらこっそりお願いして抜いてもらおう……)

 そういうわけで、ユリエルはプラグを入れたままで朝食を作り始めた。
 幸い、プラグの違和感自体には少し慣れてきたので、動けないほどではない。
 ほとんど準備が終わった頃、出勤時刻より少し早めにエルマがやってきた。
「おはようございます、ユリエル殿」
 最初こそ家格の差に萎縮していたエルマだったが、貴族然としないユリエルに対してはほとんど壁を作らなくなっていた。
「おはようございます、エルマ殿」
 もうすぐできるので座っていてください、と言ったが、エルマは手伝うといってキッチンにとどまった。
 エルマは、ユリエルの後ろに立って手元を覗き込む。
「ポトフですか?」
「はい。ダディエ団長がベーコンをもらってきてくださったので一緒に入れました」
「おいしそうですね……」
 言いながら、エルマはユリエルの尻に手を置いた。
 ユリエルは、ピクリと身体を固くさせる。
「エルマ……殿……?」
「ごめん、ユリエル殿……なんか……ポトフよりもユリエル殿の方がおいしそうに見える……」
 そう言って、尻を撫でながら、唇にキスをした。
「んっ、ふっ、なん、で……」
 「ここまで一週間は大丈夫だったのに」と言おうとしたが、キスで口を塞がれて声が出ない。
 尻をまさぐる手が次第に大胆になってくる。
 と、エルマの手に何か固いものが触れた。
「……ここ、何かある……?」
「やっ、ダメ……んむっ」
 再びキスで唇を塞がれ、ベルトを外される。
(エルマ殿くらいなら、止められる、かも……)
 小柄で事務仕事中心のエルマならば、ユリエルの実力で十分制すことができたはずだった。
 だが、なぜかうまく抵抗できない。
(なん……で……?)
 その間に、エルマはズボンに手をかけ、下着まで床に落としてしまう。
 まだひんやりする朝の空気が、下半身を撫でる。
 キスをやめたエルマは、ユリエルの尻を見る。
「……ユリエル殿、これは何?」
「んっ、ふ、……」
「話には聞いたことがあったけど……実物は初めて見るな……」
「や……見ない、で……」
「すごい大きさだね。中まで丸見えだよ?」
「うう……お願……あふぅ……」
 プラグをつつかれると、余計に力が抜けてしまう。
「こんなものを入れているってことは、あながち団長とできてるっていうのも嘘じゃないのかな?」
「……え……?」
「あれ? 知らない? 新人が団長を誘惑したって、すごい噂なのに」
(そんな噂が……?)
「ああ……でも、団長のものだと……さすがに食べられないか……」
 言いながら、エルマは自分のベルトに手をかける。
「しかたないから、ユリエル殿が僕のを食べてくれる?」
「あ……や……」
 言いながらも、ふらふらと床に膝をついて、エルマの股間に顔を近づけた。

 ――バン!
 大きな音を立てて、扉が開く。
 そこには、まだ室内着姿のダディエが立っていた。
 音にビクリと反応したエルマは、ダディエの顔を見てさっと青ざめる。
「…………団長殿……! これは、その、」
「エルマ、正気か?」
「…………はい。申し訳ありません」
「ああ、いい。……こいつの体質が発動したんだな?」
 エルマは青くなって震えながら、こくり、と頷く。
「わかった。服を着て、部屋に行ってろ」
 エルマが出ていったのを確認して、ユリエルに手を伸ばす。
「大丈夫か?」
「ダディエ、殿……」
 ユリエルは、ぽろぽろと涙をこぼした。
「ああもう、泣くな。いいから服を着ろ」
 ぽんぽんと頭を撫でて胸に抱くと、ユリエルは手を回してぎゅっと掴まってきた。
「なんか、ちから、はいらなく、て、ぬけ、なく、て、」
 泣きながら話すので、ちっとも要領を得ない。
「入らないのか抜けないのかどっちだよ……」
「これ、抜けなくて、後で、抜いてもらおうと思ってたら、エルマ殿、が……」
 ダディエは、そこでようやくプラグが入ったままなことに気付く。
「ああ……なるほど、それでエルマがああなったわけか……。わかったわかった。抜いてやるから、後ろ向け」
 ユリエルは素直に後ろを向き、床に四つん這いになる。
 ダディエはプラグに指を引っ掛けると、ぐっと力を入れた。
「んんっ」
「そんなに咥え込むな……って無理か……」
 ダディエは服の裾から胸に手を差し入れると、ユリエルの乳首に触れた。
「あっ、やっ、ああっ」
 強めに刺激をしてやると、甘い声が漏れる。
「そっちに集中してろよ」
 そう言って、一気にプラグを抜いた。
 抜いた後も、ぱっくりと口を開けている穴がかなりエロい。
(やべぇ……今はダメだ!)
 ダディエは慌てて目を逸し、距離を取った。
「ユリエル、早く服を着ろ。……でないと、襲いそうだ」
 まだ床に四つん這いになっていたユリエルは、赤くなって服を引き寄せた。
「俺はエルマのところに行ってくるから、服を着たら自室に戻ってろ」

 ダディエがエルマのところへ行くと、顔面蒼白になって部屋の隅でガタガタと震えていた。
「私は……なんてことを……」
 ひとりでブツブツと猛省しているようだ。
「エルマ、大丈夫だからこっちへ来て座れ」
 そこで初めてダディエが入室していたことに気付いた様子で、震えたまま立ち上がって敬礼した。
「あー……、いいから、こっちに来て椅子に座れ」
 ガシガシと頭を掻きながら、ダディエは一つしかない椅子をエルマに勧めて、自分はベッドにどかりと座った。
 エルマがなんとか椅子に座るのを待って、口を開く。
「別にエルマを責めるつもりはない。ユリエルの体質については最初に話したとおりだし、今回は俺に責がある」
「……しかし……」
 エルマは、膝の上でぎゅっと拳を握る。
「私は、ユリエル殿の体質について伺っていましたし、もしもの場合には団長殿を呼ぶよう命を受けておりました。……ですから、ユリエル殿への行為に咎がないと言われても、これは命令違反であると考えます」
(こいつも真面目が過ぎる……)
 ダディエは、またも頭をガシガシと掻きながら考える。
 頭を悩ませる時に頭を掻くというのはダディエの癖だったが、最近は抜け毛が増えるんじゃないかと思うくらいだ。
「……エルマの言い分はわかった。だがその……お前、見たんだろう?」
「…………はい」
「あれが原因だと思うんだ、今回は」
「………………」
(そりゃ無言になるわな……)
 上司が部下のケツにプラグ入れてるとか引かないわけがない、と思う。
 しかし、エルマに辞められるとかなり困る。
 生活や備品関連の管理は、ほとんどエルマに任せきりなのだ。
「団長殿の……」
 無言だったエルマが口を開いた。
「団長殿のものとは知らなかったのです! いや、知ったときにはもう止まることもできず……」
「いやいやいやいや! 違うから!」
「隠さなくても大丈夫です! どのような処罰でも受ける覚悟で」
「だから違うんだって! 別に俺のとかじゃないし、付き合ったりもしてない!」
「…………違うんですか?」
「俺はノーマル、普通に女が好きだ!」
「……じゃあ、あれはユリエル殿の趣味……?」
「…………いや、それはユリエルが気の毒だからやめてやってくれ」
「団長殿……もう意味がわかりません……」
「ああ、俺もわからん」

 なんとかエルマを落ち着けて、万が一自分がユリエルの体質に抗えなくなった場合に備えてプラグで拡張していると説明をしたが、どこまでエルマが納得してくれたかはわからなかった。
 ただ、あの強烈な魅了体質を体感したエルマは、「団長でも抗えない可能性」については理解してくれたようだ。
(でもたぶん、ユリエルとできてるんじゃないか疑惑は払拭できてない気がする……)

 気を取り直して、今度はユリエルの部屋へ向かう。
「ユリエル? 入るぞ?」
 ノックしても返事が聞こえないのでドアを開けると、どうやら布団に潜っているようだった。
「ユリエル?」
 ベッドの端に座って声を掛けると、ユリエルはそろそろと布団から目だけを出して、ダディエの様子を窺った。
 ダディエは、出てきた頭を優しく撫でる。
「すまなかった」
 ダディエの言葉に、ユリエルはふるふると頭を振った。
「ダディエ殿が、謝ることは何も。最近はこういうことがなくて油断していたし、そもそもダディエ殿には、ちゃんと朝は抜いておくように言われていたのに、僕が……」
「まあ、それについてはなぜ頼ってくれなかったのかと多少怒ってはいるが」
 そう答えると、ユリエルはガバリと布団から出て、ベッドに額がつくほど頭を下げた。
 頭は下げたものの、うまく言葉は出てこない様子で、代わりにぎゅっとシーツを握っている。
「いや、助けてやれなかったのは俺だし、無理をさせたのも俺だ。怒っているといっても、どちらかというと配慮の足りなかった自分に対して怒っている感じだ」
 だから気にするな、と優しく頭を撫でる。
 それでも、ユリエルの顔はなかなか上がらない。
 しばらく沈黙があって、ダディエが口を開いた。
「もう、やめるか?」
 ユリエルが、やっと顔をあげてダディエを見た。
 その顔は、可愛そうなくらいに歪んでいる。
「…………や、です……」
 ユリエルが、泣きそうな顔で絞り出す。
(まあ、たかが二週間で騎士団退団なんてことになれば、いくら男爵家でも外聞が悪いか……)
 ダディエがそう納得したところで、ユリエルが口を開く。
「まだ……あと三本なのに、途中で投げ出せません……」
(ん?)
 話が噛み合っていない気がする。
(あと三本って……プラグの話か?)
「ダディエ殿が言ったんじゃないですか……剣の稽古と同じだ、毎日続けろ、って」
 恥ずかしいのか、顔は真っ赤で、目は泳いでいるが、はっきりと「毎晩プラグを入れます宣言」をしている。
「お前……それ、わかってんのか?」
「何をですか?」
「十番目が入るようになるってことは、俺のを挿れてもいいってことだぞ?」
 すでに真っ赤だった顔が、さらにぶわっと赤くなった。
 顔を隠そうとするのを押さえて、キスをする。
「んっ、あっ、んんっ、ふぅ」
(男に興味はないし、女がいいが……こいつだけは、別だ)

「明日からは、抜くのも俺の仕事な」
 ダディエの言葉に、ユリエルは幸せそうに頷いた。
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