この世界の外側で、あなたを待つ

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この世界は檻でできている

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 私は生まれた瞬間から、自分の未来を知っていた。それは予言でも、神託でもない。ただ最初から、そうなると分かっていた。

 レミア・エヴェルナ。貴族エヴェルナ家の長女として生まれた私は、この国の皇子の婚約者となり、結婚式を迎える前に捨てられ、その後すべてを失う。

 地位も、家族も、名も。最後には、誰にも顧みられずに朽ちていく。それが、この世界で私に与えられた役割だった。

 だから私は泣かなかった。悲しみも怒りも、最初から用意されていなかったから。
喜びや希望と同じように、それらは私の人生には存在しない。

 それでも――
私は、その運命を変えようと何度も抵抗した。

 屋敷を抜け出し、夜の街へ逃げたことがある。だが翌朝、目を覚ますと、私は自室のベッドに横たわっていた。扉には内側から鍵がかかっており、侍女はいつも通りカーテンを開ける。

 まるで、最初からどこへも行かなかったかのように。


 母の未来も、変えようとした。母は悪天候の中、馬車の事故で命を落とす。それが決められた結末だった。

 事故の日、私はわざと高熱を出した。泣き縋り、予定を一日延ばさせた。

 救えたと思った。だが翌日、場所も時刻も違う道で、同じ事故が起きた。

 結末だけが、正確に回収される。私は理解した。この世界では、過程は揺らいでも、結末は揺らがない。どれほど足掻いても、世界は私を正しい場所へ、正しい不幸へと押し戻す。

 この世界は、私が思っている以上に、レミア・エヴェルナという存在をこの秩序から逸脱させてくれないのだ。
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