この世界の外側で、あなたを待つ

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プロローグ

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 あるところに、小さく、地図にもほとんど載らない村がありました。

 その村に、ひとりの少女がいました。それはそれは聡明で、それはそれは美しい少女でした。
 けれど、彼女には両親がいませんでした。

 物心ついた頃から、彼女はひとりで生きてきました。畑を耕し、洗濯をし、村の人々の仕事を手伝って、日銭を稼いで暮らしていました。

 村の者たちは、彼女にやさしくはしませんでした。両親がいないこと。そして、あまりにも整いすぎたその容姿。それらは祝福ではなく、忌むべきものとして扱われました。

 少女は、理由を問いませんでした。泣き叫ぶこともありませんでした。

 ただ、自分がこの世界に存在している意味を、静かに探し続けていただけです。

――そんなある日。

 村に、一台の馬車が入ってきました。深い色の布で覆われた、立派な馬車。その後ろには、護衛と思しき数人の騎士。

 この村には不釣り合いな光景に、人々は遠巻きにそれを見つめていました。

 少女は、ちょうど井戸のそばで、水桶を抱えていました。

 そのとき。
 馬車の中から、一人の青年が外を眺めていました。

 旅の途中、退屈しのぎに景色を流し見ていただけでした。
――本当に、偶然でした。

 揺れる馬車の窓越しに、一瞬だけ、視界に映ったその姿。土埃の中に立つ、一人の少女。その瞬間、青年の心臓が、強く脈打ちました。

「……止めてくれ」
思わず、声が漏れました。

 馬車が止まり、護衛たちが驚いた顔を向けます。

 青年は、再び窓の外を見ました。そこには、間違いなく、先ほどの少女がいました。

――似ている。
 いいえ、似ている、という言葉では足りませんでした。笑ったときの口元。伏せたまつげの影。何より、その佇まい。

 かつて、彼が想い続けていた幼馴染と、あまりにもよく似ていたのです。その幼馴染は、もう、この世にはいません。二度と会えないはずの人。

 それが、まるで当然のように、目の前に立っている。
 青年は、馬車を降りました。一歩、また一歩と、無意識のうちに少女へ近づきます。

 少女は、その視線に気づき、顔を上げました。

 そして、二人の目が合いました。

 少女は、彼が誰なのかを知りませんでした。豪奢な衣装も、周囲の緊張した空気も、彼女には関係がありません。

 ただ、少しだけ疲れたような、哀しみを帯びた瞳の青年が、自分を見ている。それだけでした。

「……何か、ご用でしょうか」
少女は、そう尋ねました。

 その声を聞いた瞬間、青年の胸の奥で、何かが静かに、音を立てて崩れました。同じではない。けれど、違いすぎるわけでもない。

生きている。確かに、ここに。
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