この世界の外側で、あなたを待つ

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プロローグ

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 それから、皇子は何度も村を訪れました。理由は、誰にも告げませんでした。護衛には「通り道だから」とだけ言い、村人たちには、ただの気まぐれだと装いました。

 けれど、少女だけは知っていました。あの日、馬車の窓からこちらを見た青年が、また自分に会いに来ているのだということを。

 最初は、言葉を交わすだけでした。天気のこと。村のこと。彼が旅の途中で見た景色のこと。

 少女は、自分に向けられる視線に戸惑いました。村の誰もが、彼女を避けるか、疎むか、あるいは美しさだけを値踏みする中で。

 彼は、彼女の話を聞いたのです。笑うときも、考え込むときも、働く手の傷に気づいたときも。

「君は、ひとりで生きてきたんだね」。そう言われたとき、少女は初めて、胸の奥が温かくなるのを感じました。優しさは、彼女にとって未知のものでした。

 だからこそ、それが向けられていることに、驚き、恐れ、そして――恋をしました。

 皇子もまた、その想いを隠しませんでした。似ているから、ではない。失った幼馴染の影だから、でもない。

 彼女自身を、確かに愛しているのだと、何度も、何度も伝えました。

 二人は、互いの身分を語りませんでした。少女は、彼が高貴な人であることは分かっていました。けれど、それ以上を知ろうとはしなかった。

 そして皇子もまた、決して口にしなかったのです。

――自分には、すでに婚約者がいることを。

 その事実が、どれほど残酷な意味を持つのかを、彼は知っていたからです。


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