【第2章開始】俺とお前は親友のはずだろ!? ~姉の代わりに見合いした子爵令息、親友の聖騎士に溺愛される~

田鹿結月

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第1章

第28話 離れる時まで撫でてほしい(R)

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 舌先を絡め合うキスをしながら、エディはレイを抱き上げた。自分の足の上に座らせ、指先をまた二人の昂りへと絡め上下に扱き必死になってしまうレイに甘く、優しく囁く。

「レイ、気持ちいい……?」
「んっ、ぅ、んん……っ」

 好きじゃない相手とこうして触れ合っていることに、疑問を抱く余裕もないほど乱される。
 気持ち良い。もっと触られたい。毎日生きることだけに必死になっていて、今日なんて命の危機も味わったレイは生存本能のためか湧き上がる性欲を止められない。
 ただ、子孫を残したいと身体が想っていたとして男同士では無理な話だ。自分には子供を孕む胎もないのに、エディは自分を抱きたい、女役にしたいと思っている。
 互いに湧き上がらせているこの情欲は、全部全部無駄なもの。

「え、でぃ」
「なに?」

 優しく答えてくれるそれだって、自分じゃなくて女相手じゃないと意味がないのに。今自分に触れている手も欲も全部、女に向けないと『普通』じゃない。
 そう思ってしまうけれど、思うからこそ背徳感がレイの思考を甘く痺れさせる。
 全部無駄にしてしまうとわかっている、無益で無意味で無価値な行為を、二人で。
 何にも残らないのは、互いにわかっているはずなのに。

「えでぃ、手」
「手がどうかした?」
「あつい、おまえの手」

 腿を撫でる手に指を這わせ、指先を握る。エディを見上げ、レイは吐息混じりに告げた。

「でっかい手で、なでられんのすき……」

 学生時代から、時々自分の頭を撫でてくるのが好きだった。今まで言ったことはないけれど、掌から伝わる温もりが心地良くて、家族にも撫でられたことがなかったからこそ嬉しかった。
 だからこそ、自分もよくエディを撫でていた。撫でられる分、この嬉しさを返してやりたくて。

「っ」
「ぁ、あっ、やだ、えでぃ……っ」
「流石に、煽ってないとは言わせないよ」

 エディに勢いよくまた押し倒され、足を閉じさせ横向きに寝かされる。
 にゅるり、と内腿の間から挿入り込んできたエディの熱く硬い昂りが、肌を刺激した。
 まるで、本当にセックスしてしまっているかのよう。自分の上に覆い被さってきたエディが腰を振り、滑るような水音と荒い吐息だけがレイの耳に届く。
 こんなことをしても、男同士だから。レイは喘ぎながらエディに問う。

「こどもの種、無駄撃ちだな? っん、ぁ」
「別にいらないよ、レイさえいれば」
「ん、ふは、ばぁか」

 エディがいくら望んだところで、結局はエディ一人の意思では結婚については決められない。
 レイは抱き締めてくるエディの首に腕を回し、キスをする距離で囁く。

「お前が王女と婚約すんの、知ってんだけど?」

 こんな行為をしていても、いずれエディは隣国の王女と結婚するんだ。降嫁になるか王配となるかは決まっていないだろうけれど、レイと離れるのは確実。
 噂通りならレイと一緒になることは許されない。だから、こんなにもエディを求めて、親友じゃない別の何かになったとしていずれは元の同性の友達に戻ってしまう。
 レイさえいればいい、なんて到底無理な話だ。王女と結婚したら、今レイに向けている全てを王女のために捧げなければいけないのだから。
 その言葉を聞くなりエディは益々抱き締める腕に力を入れ、強く穿った。どうせ中に注ぐことも孕ませることもできないのに、一層行為は激しくなる。

「っ、は、ぁ、んんっ」
「しないよ、もう断ってる。……俺のことを拒まなかったのは、それを知って思い出づくりでもさせてあげようって?」

 そんなこと思ってない。レイは思ってもいなかったエディの怒りに面食らう。
 ただ、エディが求めるなら拒めないと思っただけだ。再会するたびボロボロの姿でエディを傷つけてばかりで、今回こそは本当に死んでしまうかもしれなくて、だから。
 身体に触れてレイが生きていることを実感できるのであれば、今日は流石に許してやるかと思った。抱かれるのは無理だけれど、それまでなら。
 まさか、こんなに触れ合うことが気持ち良いなんて知らなくて、知ってしまったから思ったより先まで受け入れてしまって。
 レイが何を言ってもきっとエディは納得しない。どちらにせよ、憐れんで触れることを許したと思われるだけだ。
 激昂した様子のエディは、レイに激しくくちづける。息もできないほど深く求められ、レイが咽せても止めることなく、何度も。

「っふ、……んん」
「レイは知らないだろうけど、神殿には古代の魔法がたくさんあってね」
「えでぃ、胸さわんな……っ」
「性別を変える魔法もあるんだよ。……それ、かけられたい?」
「っ、やだ、や、やだっ」
「じゃあもう二度と他の誰かの話を言わないで。俺は男のレイと一緒にいたいんだ。同情もされたくない。……思い出づくりに付き合ってやったと思うならもうやめてもいいけど、レイはここでやめてもいい?」

 膝を掴んで足を開かせ、べっとりと二人分の体液で汚れている腿や下腹部を撫でながらエディは笑う。
 指先で擽り、必死で息を整えるレイの呼吸を乱すように昂りを撫で、上下に扱きながら弄んだ。

「俺の手で撫でられるの好きなんだろ?」
「ぁ、あ、だめ、えでぃ、いくから……っ」
「だめならここで止めようか」

 譫言のように呟けば、エディはぱっと簡単に手を離してしまう。
 情けなくも芯を持ったそれは勃ち上がったまま、早く達してしまいたいとぴくぴくと反応を示している。
 こんな生殺しの状態でおしまいなんて無理だ。レイはエディに縋った。

「えでぃ、まだ」
「俺の願望に無理して付き合ってくれなくていいよ。もうやめよう」
「やだ、ここでやめんなばか、えでぃ」
「でもだめなんだろ?」
「だめじゃない、いきたい、えでぃなでて」

 エディが与えてくれる快感がほしい。大きな掌で撫でて、擦って、自分でするより気持ち良くなりたい。

「えでぃがさわんのがいい……」
「……付き合ってもいない男に言うことじゃないよ。応えなくていいって言ったのは俺だけど」

 付き合っているとかいないとか、気にする余裕なんてない。
 この快楽が今はほしくてたまらない。相手が信頼している男だからこそ、安心して身体を委ねられるから。
 レイは、抱き締めてくるエディの肩に唇を押し付け縋った。
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