いつかの箱庭

田中@SALL4477

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いつかの箱庭の過去話

大っきい方と小っさい方

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201X年

「お前、何大や?」
「G大です!」
「そかそか、よろしくな」

初期研修医の初回ミーティングに今年度の30名が集められた。
何だ、あのやかましい奴。出身大とか気にする奴、めんどくさいから関わらないようにしとこ。


「おう、何大や?」
なんか顔色の悪い小っちゃい眼鏡の人が餌食になった。
「B大です」
途端にやかましい奴の顔色が変わった。
「マジか、知らんかった、何高?」

一瞬躊躇しながらも「安坂あさかって言っても知らないよね…」
どっかで聞いたことがある、確か東北地方の進学校だ。

「知らねぇな」
「うん、そうだよね、よろしく」
小っちゃい眼鏡の人が差し出した手を無視してこっちに面倒くさい奴が来た。

「どこ大?」
「なにが?」
「なにが、って、何大卒だって聞いてんよ」
「だったらそう言えよ、B大だよ」
あからさまに更に嫌な顔になった。
「知らねぇな、お前なんか。」
「ん、俺もあんたのこと知らんから気にするな。」

なんか言いたそうだったけど、興味ない。こういう奴は話すだけ時間の無駄。


それより…「安坂って、東北じゃね?」
目の前の小っちゃい眼鏡の人が、少しだけ明るい表情になった。
「うん、知ってるの?」
「なんか聞いたことある。俺、浦北うらきた。ってわからないか…」
「知ってるよ!特進コースもすごいけど、確か声楽科もあるよね!」
「そう、それそれ。声楽科は俺には関係なかったが…」

なんだかこの華奢な眼鏡の人が気になった。

小椋こぐれっていいます、よろしく」
「俺、江崎えざき。よろしく」

なんとなく、この人とは馬が合いそうだと思いながら、差し出された細い手を握り返した。




研修も1カ月が過ぎた。小椋とはローテが全く違い、たまに廊下で会うくらいだ。
昼休憩、今日は少し時間があったから食堂に行き、帰りに小椋を見つけた。

「あ、小椋」
「…江崎君」

いつも顔色が良くないが、今日は一層悪い。
「小椋、どうした?いつもより顔色が悪いぞ?」
「へへ…、そうかなぁ…だいじょう…ぶ…」
その場に崩れ落ちる前に小椋を抱えた。

「やっぱり、全然大丈夫じゃないな。救急行くか?」
「いつものだから…だいじょうぶ」
貧血持ちらしく、倒れることにも慣れているらしい。

「じゃあ、今内科だろ?内科の医局で寝かせてもらえ」
「ありがとう、そーする」

小椋を背負って内科の医局にくると、あの面倒くさい奴しかいなかった。
今、小椋と同じローテのようだ。


「小椋が倒れた。貧血だからここで少し寝かせてやって欲しい。指導医に伝えてくれないか?」
面倒くさい奴は一瞬何か文句でもいいたそうだったが、笑顔になり、
「ああ、分かったよ!大変だな!ホントに大丈夫か?」
「自分で大丈夫っていってるから多分大丈夫。」

といったものの、もう意識は無さそうでぐったりと横たわっている。
だか、指導医に伝われば様子を見に来てくれるだろう。



翌日、指導医長に呼び出された。部屋に入ると小椋もいる。

「君達、昨日は昼休憩の後どこにいたんだい?」
「「??」」
「小椋君が江崎君と一緒にサボってたと聞いたのだが…」

事態が飲み込めた。
あいつ!指導医に伝えてくれなかったばかりか、ありもしない事言いやがったな…

事情を全て説明し、指導医長は信じてくれたようだ。
「よかった、君達二人は今年度の期待の星だからね、サボったりしてなくて安心したよ」


「江崎君、ごめん。僕のせいで…」
「小椋のせいじゃない、あの…あいつのせいだ」
串田くしだ君?」
「だっけ、覚えてない」
「でも、忙しくて伝えそびれちゃった、とか、休憩中に僕達が一緒にいるのを見たと誰かが言っただけかもしれないし…」
「小椋はお人好しだな」
「自分の目で確認してないことは真実ではないと思ってるだけだよ、それに…」
「それに?」
「どんな相手でも今はチームなんだ。患者さんのためには僕達はいがみ合ってる場合じゃない。」「ぐぬぬ」
「冷静な江崎君なら同じ思いだと思ってたけど」
「むむ」

俺だってそんなことはわかっているが、何だかあの串田という奴は小椋を馬鹿にしているようでムカつくのだ。

「でも…」
「?」
「ありがとう、助けてくれて」
ちょっと頬を赤らめながら言う小椋に、俺まで照れてしまう。
「じゃ、戻るか」
「うん、またね」

華奢な小椋の後ろ姿に一抹の不安を覚えながら、仕事に戻った。数日後、その不安は的中した。




「同期会?」
「そう、初期研修医のみんなに声をかけてるんだけど、研修にも少し慣れてきた頃だし、みんなで交流を深めようって串田君が」

遠くの方で小椋と串田と仲の良い同期が話していた。
小椋、飲み会とか苦手だろうし、行かないだろ…俺も行くつもりはないが。
少し考えた小椋が
「わかった、参加させてもらうよ」
なにぃ!小椋行くのか!

「同期会なんだけど、江崎君は来る?」
俺も別の同期に聞かれ、「行く」としか言い様がなくなった。


初期研修医30名中20名が集まり、思ったより大きな会だ。

「まさか、小椋が来るとは思わなかった」
「僕も江崎君が来るとは思わなかった」
「それは小椋が…いや、何でも無い」
「僕は端っこでひっそりと過ごしてるから、江崎君は楽しんでおいでよ」
「いや、俺も端っこが好きだ。」
「ふふ、そんな大っきいのに、端っこが好きなんて」

結局、俺らは賑やかな奴らとは離れるように端っこの席に着いた。すると

「やぁ、江崎君、小椋君、ここ座ってええか?」
串田が現れた。正直一番見たくない奴だったが…

「どうぞ」
「この前はすまんかった、忙しなってお前さんのこと忘れてしもた」
「平気だよ、大丈夫」
「どないした、江崎君、怖い顔して?」
「いつも通りだ。」
「確かにそやな!」
いつも無表情で怖いと言われる顔でよかった。

それぞれ注文した飲み物が届いた。
「ほい、これお前さんの」
「ありがとう」

乾杯して、しばらく串田の自慢話やそれを盛り上げる周りの同期に付き合わされうんざりしてきた頃だった。
「ちょっとお手洗に…」
「おう」

小椋がいなくなったところで
「そういやこれ、なんかうっすいと思たらウーロン茶やないかい!さっき小椋君のと間違えてもうた!俺のはウーロンハイや」

嫌な予感がした。

「小椋、飲めないって言ってなかったっけ?大丈夫かよ?」
「まあ、飲まれへんなら、全部飲むんはあり得へんやろ!どっちもウーロン茶やったのかもな」「そ、そうだな」
ゲラゲラと笑う声に頭が真っ白になった。

「串田、お前、わざとか?」
「ど、どうしたん?江崎君、わざとちゃうで」
「ってことは間違えたのは認めるんだな。なのに、ゲラゲラ笑ってんのか?」

串田の胸ぐらを掴んだが、小椋の言葉を思い出した。
「飲めない奴に酒飲ませて平気な顔してるお前に…医者になる資格ねぇよ。帰る。」


自分の荷物と小椋の荷物を持ってトイレに行くと、個室が一個閉まっていた。
「小椋!大丈夫か!?」
「ん、…だい…じょうぶ」
泣いてるような声が聞こえ、居たたまれなくなった。

「落ち着いたら帰るぞ、外で待ってる」

トイレの外には他の同期が何人か、気にして来てくれたが礼を言って戻ってもらった。なかなか出てこないから心配で、もう一度声をかけに行こうとしたら、いつも以上に青白い顔をした小椋が出てきた。

「…江崎君」
真っ赤な目をして少し虚ろな表情をしている。
「歩けるか?」
「うん」

力の無い返事の小椋を支えながら、ひとまず店を出て、近くの小さな公園まで来た。
「ん」
「…ありがとう」

買ってきた水を渡すと小椋は一口飲んだ。
「何で酒ってわかって全部飲んだんだ?俺に言えばよかったのに…」
「江崎君に迷惑かけたくない」
「迷惑じゃない。飲めないのに、無理して飲むな。」

すると小椋は涙目になり、でも泣くのを我慢しながら
「それに…悔しかったんだもん」
いつも笑顔の小椋からは想像出来ない悔しさと怒りに満ちた表情だった。でも、それは小椋自身に向けられているようにみえた。冷静沈着な小椋にもこういう感情がちゃんとあったのか。

またいつもの表情に戻った小椋は
「でも、そうだよね…ごめんなさい」
「小椋は頭が良いかと思っていたが、意外と無謀な奴だな。」
「えへへ、そうかなぁ」
「今の褒め言葉じゃないぞ。」
「え~、そんなぁ~」

酒のせいかちょっと陽気な小椋と話していたら、結局朝を迎えてしまった。




休み明け、また指導医長に呼び出された。

「流石に病院の外で喧嘩しちゃダメだよ」
「喧嘩は病院の中でもダメです。」
「あ、確かに…」

また串田か。最近聞いたのだが、どうやらあいつは理事長の甥っ子だそうだ…医学部時代からこうして問題を起こしては権力をちらつかせてもみ消したり他人のせいにしていたらしい。

「でも理不尽に売られた喧嘩は返しますよ。特に相手が返してこないと思ってやっていることは喧嘩というよりはいじめです。」
「まさかまた小椋君か?」
「小椋はなにもしてません。」


すると突然ドアが開き、白衣の数名が入ってきた。

「君達!」
あの日、小椋を心配して来てくれた同期の数名だった。みんな矢継ぎ早に事の顛末や、普段の串田の小椋に対する態度など、他にも色々訴え、俺一人より数と客観性で指導医長を納得させた。

後日、指導医会議で全指導医に串田の行動に注意するよう通達され、更には残りのローテが串田と小椋が重ならないよう微妙に変更された。



これで少しは安心出来るかと思っていたが…

「よう、小椋」
「あ、江崎君」
「相変わらず顔色悪いな」
「うん、大丈夫…急ぐから、ごめんね、また」
「お、おう…」
というような感じで、たまに会ってもろくに話しも出来ない日々が続く。それに元々華奢な体がますます痩せ細っていくようにもみえる。



お互いに忙しくなり、ローテも違うしなかなか会わなくなり初期研修も残すところ2ヶ月近くになった。小椋は残りの2ヶ月を地域医療の分野に充てたようで、地元に帰っているらしい。

小椋は以前、B大で内科を専攻すると言っていたから、またしばらくして落ち着いたら会えるだろう。そう思っていた。

「江崎、知ってたか?小椋、地元帰ったらしいぞ!」
「は?地元??」
「なんだよ、江崎なら聞いてるかと思ってたのに。B大には戻ってこないらしい。F大で内科専攻するんだって。」

聞いてないぞ、そんなこと。

「優秀な小っさい方がいなくなると寂しいな…」
「?」
「江崎と小椋、どっちも優秀で見た目も似てるから実は同期の間で大っきい方と小っさい方って呼ばれてたんだぞ。」
「そーなのか」
あいつはLINEをやってないからメールしか手段が無い。帰ったらメールでも送ってみるか。


考えながら歩いていると、指導医長と会った。
「江崎君」
「小椋、F大行くって…」
「うん、それが…本人の体調の問題でね。住み慣れた町の方が良いそうだ」
「教えてくれなかった、そんなこと」
「他の同期の子には勿論、江崎君には特に知られたくなかったようだよ」
「何でですか!って聞いても分からないですよね…」
「そりゃ、私には彼のホントの気持ちはわからないけど、私がそういう事をするなら君のことを考えて…じゃないかな」
「…俺の?」

何で…俺の事を考えてなら相談してくれれば体調のことだって一緒に考えたのに。

もやもやした気持ちで家に着き、寝る前に落ち着いてからメールを打った。
俺に言わなかった事には、意味があるのだろう。
何で、とは思うが今はそこを指摘している場合ではない。体調は?地元戻ったら研修続けられそうなのか?とか…
そんなことを書き連ね、あと一つ、これは小椋に話したい事があったのだが…


翌日、返信が来た。突然の別れに対する詫びと、これからのこと。今までの感謝。
そして最後に、
お互いに医師であり続ければ、またどこかで会える気がするから、優秀な外科医の江崎君との再会を楽しみにしてる。と




202X年
昼過ぎ外勤先からA大に戻るため上野に着いた。平日のこの時間は比較的空いてるのだが、今日は何だかラッシュ時より混んでいる。

人を避けながら歩いていたが、華奢な男性がよろめいて俺にぶつかってきて、その場に膝をついてしまった。

「すみません、大丈夫ですか?」
「こ、…こちらこそすみません」
なんか具合悪そうだな…
「立てますか?ちょっと移動しましょうか」
人が少ない壁際まで男性を抱えて移動した。
「水でも買ってきましょうか?」と言ってみて、見覚えのある顔に驚いた。昔と全然変わらない。


「もしかして、小椋?」
しばらく?と言った表情の小椋だったが、
「B大の、江崎君?!」やっと気がついた。

やっと会えた。もう後悔はしたくない。今度は俺に出来ることをさせてくれ。

俺は優秀な外科医にはなってない。

あの日、メールで話さなくてよかった。小椋を驚かす良いネタになった。
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