8 / 9
盲点
しおりを挟む「海人ぉ、もう起きないと遅刻しちゃうよ~」
「んー、あと5分」
「だめ!」
布団を引っ剥がされ、僕を揺さぶる樹。
眠いけど、こうして樹に起こされる朝を迎えられることが幸せだ。
「まだ眠いから、目覚めのキスを…」お願いしてみたが
「ふぎゃ!」
目潰しを食らい、起きるしかなくなった。
料理は苦手ながらも樹が用意してくれた朝ご飯を頬張り、手早く準備した。車で20分のF大まで、裏道使えば楽勝でたどり着ける。
「じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい、気をつけて」
何か言いたそうな樹の表情が気になった。
「樹?」
「海人が早く起きないから…目覚めのはおあずけだけど、お疲れ様…のなら」
もじもじしながら言う樹。
可愛すぎて、もう帰りたくなってしまった…
「楽しみにしてる、樹も仕事頑張って」
「海人も」
帰ったら樹がいる、ますます研修に力が入るのだった。
「橘、今日から一人、受け持ってもらうわ~」
「は、はい!」
「グループホームに入居していた104歳男性。夜間せん妄の症状で同施設の看護師からの相談。当院総合内科受診で身体的異常所見なく当科受診。」
「104歳で身体的に異常なしとはすごいですね」
「そうね、じゃ、診察よろしく~」
「よろしくって、ええー!しかも、夜間せん妄ってことはまさか…」
「今夜もお泊まりよ」
「ほぇ~」
F大医学部附属病院精神科准教授であり、樹の主治医の保志先生が僕の指導医。樹の診察に同行していた時はもっとクールな印象だった保志先生。なのだが…
指導に関しては熱血だしスパルタだ。
でも、教えてくれることは勿論、保志先生の診察を見ているだけでも勉強になる。教え子には精神科界隈の前線で活躍する医師が多いのは納得だ。
夜間対応は当直の医師や看護師に任せる先生が多いが、最低でも診断がつくまでは自分の患者さんは自分で診る、を徹底している。だからこうして、度々イレギュラーに当直になっている。
僕が受け持つ事になった菅野さんは、問診中も104歳とは思えないくらいしっかりと会話出来た。
「なーんだ、菅野さん!医師なんですねぇ!70歳まで現役だったとは…何科ですか?」
「私は、何でも科…といったらよいだろうか」
「おおー!じゃあご自身の体調も僕なんかよりお分かりになるのでは」
「それが、自分に夜間せん妄の症状があると言われても思い当たる節がないのだよ」
「そうなんすか、じゃあ、しばらくここで様子を診ましょう」
お子さん、お孫さん、更にはひ孫さんまでいて、お子さん(といっても80歳近い)は入院手続きにも嫌な顔一つせず対応してくれて、とても家庭環境には恵まれているように思えた。
『いつきー、おつかれ。今日帰れないや…』
昼休憩、LINEを送っておいた
『うん、わかった。休めるときにしっかり休んでね』
さみしーとか言って欲しい気もするが、樹は真面目だから、僕が成長するために時間を割くことには応援してくれるのだ。
『帰ったらお疲れ様の…忘れてないからね』
と送ったら、ちいかわが逃げる絵のスタンプが返ってきた。
「樹ったら…」
照れる樹の姿を思い出し、早く帰って抱きしめたいと思ったが、その望みは儚く散った。
今日で当直3日目の夜、菅野さんになかなか夜間せん妄の症状が現れない。ここに来てから毎晩、静かに寝ている。
僕の替えの服もそろそろ底がつきそうだ。
車もこっちにあると樹が乗りたいときに乗れないし、明日には帰ろう。などと考えながら菅野さんの寝姿を確認していると、突然、菅野さんの目が開いた。
「あ、起こしちゃいましたか!スミマセン…」
他の患者さんもいるから小声で謝ると、何だか菅野さんの様子がおかしい。
普段の優しい表情とは違う。その表情にはみるみると憎しみが込められ、僕の瞳を捉えていた。
「この!キチク××××が!!!」
そう叫ばれた瞬間、左目の上辺りに痛みが走った。触れると手のひらが真っ赤になった。
「返せー!!みんなを…、かえせぇ!!」
何の事だ?
「お前たちが死ねばよかったんだ!!」
憎しみが押し寄せる。動けない。
「橘!?たちばな!しっかりしなさい!拘束よ!私が指示する!」
保志先生が暴れる菅野さんを抑えている。僕がやらなければ。
保志先生がナースコールを押し
「コードホワイト!斉藤くんか近藤くんがいたら来て!あとハロペリドール2.5mg!」
「菅野さーん!ごめんなさいね!少し苦しいけど我慢してくださいね!」
保志先生の呼びかけも聞こえないのか、宙に向かって大声を上げてもがいている。制止しなければ僕達がやられてしまいそうだ。
すぐに体格のいい近藤君を含めた数名の看護師も現れ、一時的に拘束具をつけて、鎮静も打った。
「わたしがしねば…よかったのか」
菅野さんはそうつぶやきながら意識を手放していった。
「橘の見立てではいつ拘束を解く?」
僕の怪我を手当てしながら保志先生が問う。
「明日、菅野さんが目覚める頃にICをするのが妥当かと。」
「そうね、カルテは書いとくから、明日、菅野さんとご家族にIC出来る?勿論、私も立ち会うけど。」
拘束は指定医しか出来ないが、僕の経験のためにICをさせてくれる。
「はい、ご家族には既に緊急時の説明は済んでるし、切迫性、非代替性、一時性の観点からやむを得ない状況だったと説明すれば、ご理解いただけると思います。」
しっかりやらなければ。あ、でも
「でも、菅野さん優しいから僕からICしたら気に病んでしまうかも…」
「こんな顔してたら相手が橘なのはバレバレよ」
「転んだ事にしておきますから…せめて診断が下せるまでは!お願いします!」
「じゃあ、ご本人には私がする。橘はご家族にIC終わったら一旦帰りなさい。そろそろ心配されてるでしょ。こんな顔して帰ったら小椋さんに驚かれちゃうわね…」
樹…今すぐ会いたい。
※コードホワイト…院内で暴力行為が発生した際にスタッフが集まるための合言葉。施設によって呼び方は異なる。※IC…インフォームドコンセント、患者本人と家族への説明と同意。基本的には全ての医行為には前もって必要であるが、緊急の場合は例外もある。
午前の診察も終わろうというころ、外から聞き慣れたエンジン音がした。
裏の階段を昇る足音。海人が帰ってきた、そう思ったが、目の前の患者さんに集中せねば。
午前の診察を終えて昼休憩。
「海人?いるの?」
部屋に海人がいれば飛びついてくるはずだが…
「海人!」
そこには左目の上に大きな絆創膏を貼られ、ぼんやりとソファに座る海人がいた。
「海人!?どうしたの?この怪我…」
「あ、樹…ただいま」
「うん、おかえり、この怪我…」
「ああ、うっかり棚にぶつけちゃったんだ…」
嘘をついてるのは明らかだった。海人は嘘をつくのが下手くそだから。でも、嘘をつきたいのには理由があるのだろう。
保志先生のところから帰ってきたのだ、止血や消毒は出来ていそうなことはすぐにわかった。
「辛くなければお風呂入って、ごはんも用意しておいてあるから…ひとまず休んで」
「…うん、そうする」
風呂へ向かう海人の背中が心配で、出てくるまでは見守ろうと思った。
風呂から上がった海人のおでこの絆創膏を替えようとソファに座らせた。剥がすとこれは…事故ではなく故意のもの。引っかき傷であることは明らかだった。
もう一度洗浄し、湿潤療法に切り替えた。
「お風呂入ってからちゃんと処置した方が良いだろうって、保志先生が言ってた」
「うん、確かに」
それに、この傷を僕に見せたかった、そんな意図も感じられる。
ぼんやりとしているような何か考えているような、どちらともつかない海人の表情が気になるが、午後の診察に戻らなければ。だけど、約束は守らせてもらおう。
「海人、お疲れさま」
口付けをするも、どこか反応の薄い海人が心配だった。
翌日、僕が保志先生のところで受診する日だ。
「行ってきます」
「気をつけて、行ってらっしゃい」
ぼんやりと言う海人。昨日の傷が痛々しいが、昨日よりは元気そうにみえた。
昨晩も僕を抱きしめながらも何だかんだ眠れてない海人がいた。海人が眠れないのが分かって僕も眠れなかった。自身で患者を受け持ち、真正面から向かい合うときの気持ちは分からないでもない。糸口が見つからないとずっと考えてしまう。
精神科医としての海人を育てるのは保志先生。僕は海人が無理をしないように見守ることしかできない。
呼び出しのベルが鳴り、診察室に入る。
「小椋さん…」
いつもの冷静な表情とは違う、保志先生の表情が気になった。
「どうされました?」
「ごめんなさい!」
深々と頭を下げられ、こちらの方が恐縮してしまった。
「えっ!えー、そんな!何か謝られるようなことがありましたか?」
「橘君、私がついていながら…監督不行き届きです。本当に申し訳ない…」
「怪我のことは…精神科医を目指すからには本人も分かっていることだと思います。大丈夫ですよ。」
「相当心配されたかと思って」
「怪我よりどちらかというと、何とかいうか…入り込み過ぎているような気がして心配ではあります。」
「溺れる人を助けるときに…」
真剣な表情で保志先生が話し始めた
「外から道具を使って助けようとする人もいれば、直接飛び込んで助けようとする人もいる」
「溺れる人が助かればどちらも間違いではない。だけど、後者は助ける側の人間のリスクもある。それと似たような事ですね」
「精神科医にもよくあることで、寄り添うことは間違いではないしベストなことなのだけど…、それで自分自身を壊してしまう子も見てきました。」
「橘君は根が優しいので、経験の浅い今は直球勝負を挑んでしまいがちですが、ああ見えて賢いのでどちらもバランスよく出来る子だと思ってます。良い方向に導きたいと思ってます…」
優しい表情になった保志先生。海人が大事にされていることが窺えてこちらまで笑顔になってしまう。
「でも…」
保志先生の表情がまた暗くなった。なんだろう…
「万が一、彼が溺れて沈んだ時は…」
想像だけで怖くなる。
「小椋さん、貴方が助けられる唯一の存在…かもしれませんね」
しばしの沈黙の後、「あら、いけない!今日は小椋さんの診察でしたね」
そう言っていつもの診察に戻った。
漠然とした不安が押し寄せる。僕は重要な何かを忘れているような気がしてきた。
菅野さんはあの時、何と言った?
キチク…何とか…キチクは鬼畜だろうけど、その先はよく聞き取れなかったし聞いたことのある言葉か定かでない。
表情を思い出す。憎しみのこもった瞳は怖い。最後は”い”?のような気がする。
あまり期待していないが、そんな言葉、あるだろうか。検索をかけてみる。
検索に引っかかった言葉とその意味を読み、息を飲んだ。全てのピースが菅野さんに当てはまる。
答えが見えた気がする。
保志先生が意図して僕の最初の患者さんに菅野さんをあてたのではないか…そんな気すらしてきた。
「…ただいま」
夕方、樹が診察の後、ちょっとした買い出しを済ませて帰ってきた。
「おかえり、ちょっと…行ってくるから車の鍵貸して」
「行ってくるって?!どこへ?」
「F大」
そう言うと樹の表情が曇り
「待って!」僕の顔を覗き込む。
「今じゃなきゃダメなの?明日朝一じゃダメな程の急患?」
「分かったんだ…、診断がついた」
「告知は一刻も争うもの?」樹の視線が僕を刺す。
「僕は一緒にいて欲しい…というのもあるけど、今は医師として訊いてる。」
樹の真剣な表情に、心配をかけていたことに気がついた。
「落ち着かないとは思うけど今日は休んで、明日に備えて…」
そっと抱きしめられ、頭を撫でられた。
「ごめん、樹…」
翌朝、樹はいつもと変わらず送り出してくれた。僕のことを気にかけてくれている。だけど、過剰になりすぎないように。
「保志先生、菅野さんの診断なんですが…」
「何かわかった?言ってごらんなさい」
「晩発性PTSD。恐らく、過去の戦争体験からくるものではないかと…ご本人は語られていませんが」
「根拠は?」
「年齢とあの時僕に投げかけられた言葉です。全部聞き取れた訳ではないのですが、口の形などから推察して、”鬼畜米英”と叫んだんです。その後”みんなを返せ””お前達が死ねばよかった”と言っています。夜間に夢で戦時中の追体験をしているのではと考えました。」
「そうね、私も同じ考えよ。じゃあ、診察進めて」
菅野さんは診察室に入るなり、僕に深々と頭を下げた。
「やはり、私が傷つけたのは橘先生だったのだね…覚えていないとはいえ申し訳ない」
身体拘束のICをとる際、保志先生は僕への暴力であったことは伏せていたのだが、察しの良い菅野さんは気がついていたようだ。
「へへ、これは棚に頭ぶつけちゃっただけですよ、それより今日は菅野さんの昔の話を聞かせてください」
「昔の…?」
第二次大戦が激化した1941年頃、菅野さんは医学校を繰り上げ卒業し軍医予備員となった。
親族や友人らを戦争で失う中、特攻隊訓練場の軍医となり、そこでの経験が現在の症状のきっかけとなったようだ。命を賭して戦地へ向かう若者と戦地へは行かない自分と…戦後、結婚し子どもを授かり、その後の人生は貧しさの苦労はあったものの家族寄り添い、幸せな生活を送ってきたという。時に医師として非人道的な行為もしたと語られ、この年齢まで生存している事に罪の意識を感じていたらしい。
晩発性PTSD、戦争体験をした高齢者に多く、菅野さんはこれに合致した。診断もつき、今後の治療方針も決まり、ひとまず安心する自分がいる。
だけど同時に、涙に流しながら語る菅野さんの細い肩に見えた歴史の闇が、僕の心の片隅の何かと絡みついて張り付いて離れない。
※鬼畜米英(きちくべいえい)...太平洋戦争中、日本でアメリカとイギリス(米英)を「鬼畜」と呼び蔑視し、敵愾心を煽るために使われたスローガンやプロパガンダ用語。
※晩発性PTSD...トラウマ体験から数十年を経過してから症状が現れるPTSD。
20
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
王弟の恋
結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。
戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。
しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。
そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。
再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。
――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・
孤独な王子は影に恋をする
結衣可
BL
王国の第一王子リオネル・ヴァルハイトは、
「光」と称えられるほど完璧な存在だった。
民からも廷臣からも賞賛され、非の打ち所がない理想の王子。
しかしその仮面の裏には、孤独と重圧に押し潰されそうな本音が隠されていた。
弱音を吐きたい。誰かに甘えたい。
だが、その願いを叶えてくれる相手はいない。
――ただ一人、いつも傍に気配を寄せていた“影”に恋をするまでは。
影、王族直属の密偵として顔も名も隠し、感情を持たぬよう育てられた存在。
常に平等であれと叩き込まれ、ただ「王子を守る影」として仕えてきた。
完璧を求められる王子と、感情を禁じられてきた影。
光と影が惹かれ合い、やがて互いの鎖を断ち切ってゆく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる



