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盲点
しおりを挟む「海人ぉ、もう起きないと遅刻しちゃうよ~」
「んー、あと5分」
「だめ!」
布団を引っ剥がされ、僕を揺さぶる樹。
眠いけど、こうして樹に起こされる朝を迎えられることが幸せだ。
「まだ眠いから、目覚めのキスを…」お願いしてみたが
「ふぎゃ!」
目潰しを食らい、起きるしかなくなった。
料理は苦手ながらも樹が用意してくれた朝ご飯を頬張り、手早く準備した。車で20分のF大まで、裏道使えば楽勝でたどり着ける。
「じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい、気をつけて」
何か言いたそうな樹の表情が気になった。
「樹?」
「海人が早く起きないから…目覚めのはおあずけだけど、お疲れ様…のなら」
もじもじしながら言う樹。
可愛すぎて、もう帰りたくなってしまった…
「楽しみにしてる、樹も仕事頑張って」
「海人も」
帰ったら樹がいる、ますます研修に力が入るのだった。
「橘、今日から一人、受け持ってもらうわ~」
「は、はい!」
「グループホームに入居していた104歳男性。夜間せん妄の症状で同施設の看護師からの相談。当院総合内科受診で身体的異常所見なく当科受診。」
「104歳で身体的に異常なしとはすごいですね」
「そうね、じゃ、診察よろしく~」
「よろしくって、ええー!しかも、夜間せん妄ってことはまさか…」
「今夜もお泊まりよ」
「ほぇ~」
F大医学部附属病院精神科准教授であり、樹の主治医の保志先生が僕の指導医。樹の診察に同行していた時はもっとクールな印象だった保志先生。なのだが…
指導に関しては熱血だしスパルタだ。
でも、教えてくれることは勿論、保志先生の診察を見ているだけでも勉強になる。教え子には精神科界隈の前線で活躍する医師が多いのは納得だ。
夜間対応は当直の医師や看護師に任せる先生が多いが、最低でも診断がつくまでは自分の患者さんは自分で診る、を徹底している。だからこうして、度々イレギュラーに当直になっている。
僕が受け持つ事になった菅野さんは、問診中も104歳とは思えないくらいしっかりと会話出来た。
「なーんだ、菅野さん!医師なんですねぇ!70歳まで現役だったとは…何科ですか?」
「私は、何でも科…といったらよいだろうか」
「おおー!じゃあご自身の体調も僕なんかよりお分かりになるのでは」
「それが、自分に夜間せん妄の症状があると言われても思い当たる節がないのだよ」
「そうなんすか、じゃあ、しばらくここで様子を診ましょう」
お子さん、お孫さん、更にはひ孫さんまでいて、お子さん(といっても80歳近い)は入院手続きにも嫌な顔一つせず対応してくれて、とても家庭環境には恵まれているように思えた。
『いつきー、おつかれ。今日帰れないや…』
昼休憩、LINEを送っておいた
『うん、わかった。休めるときにしっかり休んでね』
さみしーとか言って欲しい気もするが、樹は真面目だから、僕が成長するために時間を割くことには応援してくれるのだ。
『帰ったらお疲れ様の…忘れてないからね』
と送ったら、ちいかわが逃げる絵のスタンプが返ってきた。
「樹ったら…」
照れる樹の姿を思い出し、早く帰って抱きしめたいと思ったが、その望みは儚く散った。
今日で当直3日目の夜、菅野さんになかなか夜間せん妄の症状が現れない。ここに来てから毎晩、静かに寝ている。
僕の替えの服もそろそろ底がつきそうだ。
車もこっちにあると樹が乗りたいときに乗れないし、明日には帰ろう。などと考えながら菅野さんの寝姿を確認していると、突然、菅野さんの目が開いた。
「あ、起こしちゃいましたか!スミマセン…」
他の患者さんもいるから小声で謝ると、何だか菅野さんの様子がおかしい。
普段の優しい表情とは違う。その表情にはみるみると憎しみが込められ、僕の瞳を捉えていた。
「この!キチク××××が!!!」
そう叫ばれた瞬間、左目の上辺りに痛みが走った。触れると手のひらが真っ赤になった。
「返せー!!みんなを…、かえせぇ!!」
何の事だ?
「お前たちが死ねばよかったんだ!!」
憎しみが押し寄せる。動けない。
「橘!?たちばな!しっかりしなさい!拘束よ!私が指示する!」
保志先生が暴れる菅野さんを抑えている。僕がやらなければ。
保志先生がナースコールを押し
「コードホワイト!斉藤くんか近藤くんがいたら来て!あとハロペリドール2.5mg!」
「菅野さーん!ごめんなさいね!少し苦しいけど我慢してくださいね!」
保志先生の呼びかけも聞こえないのか、宙に向かって大声を上げてもがいている。制止しなければ僕達がやられてしまいそうだ。
すぐに体格のいい近藤君を含めた数名の看護師も現れ、一時的に拘束具をつけて、鎮静も打った。
「わたしがしねば…よかったのか」
菅野さんはそうつぶやきながら意識を手放していった。
「橘の見立てではいつ拘束を解く?」
僕の怪我を手当てしながら保志先生が問う。
「明日、菅野さんが目覚める頃にICをするのが妥当かと。」
「そうね、カルテは書いとくから、明日、菅野さんとご家族にIC出来る?勿論、私も立ち会うけど。」
拘束は指定医しか出来ないが、僕の経験のためにICをさせてくれる。
「はい、ご家族には既に緊急時の説明は済んでるし、切迫性、非代替性、一時性の観点からやむを得ない状況だったと説明すれば、ご理解いただけると思います。」
しっかりやらなければ。あ、でも
「でも、菅野さん優しいから僕からICしたら気に病んでしまうかも…」
「こんな顔してたら相手が橘なのはバレバレよ」
「転んだ事にしておきますから…せめて診断が下せるまでは!お願いします!」
「じゃあ、ご本人には私がする。橘はご家族にIC終わったら一旦帰りなさい。そろそろ心配されてるでしょ。こんな顔して帰ったら小椋さんに驚かれちゃうわね…」
樹…今すぐ会いたい。
※コードホワイト…院内で暴力行為が発生した際にスタッフが集まるための合言葉。施設によって呼び方は異なる。※IC…インフォームドコンセント、患者本人と家族への説明と同意。基本的には全ての医行為には前もって必要であるが、緊急の場合は例外もある。
午前の診察も終わろうというころ、外から聞き慣れたエンジン音がした。
裏の階段を昇る足音。海人が帰ってきた、そう思ったが、目の前の患者さんに集中せねば。
午前の診察を終えて昼休憩。
「海人?いるの?」
部屋に海人がいれば飛びついてくるはずだが…
「海人!」
そこには左目の上に大きな絆創膏を貼られ、ぼんやりとソファに座る海人がいた。
「海人!?どうしたの?この怪我…」
「あ、樹…ただいま」
「うん、おかえり、この怪我…」
「ああ、うっかり棚にぶつけちゃったんだ…」
嘘をついてるのは明らかだった。海人は嘘をつくのが下手くそだから。でも、嘘をつきたいのには理由があるのだろう。
保志先生のところから帰ってきたのだ、止血や消毒は出来ていそうなことはすぐにわかった。
「辛くなければお風呂入って、ごはんも用意しておいてあるから…ひとまず休んで」
「…うん、そうする」
風呂へ向かう海人の背中が心配で、出てくるまでは見守ろうと思った。
風呂から上がった海人のおでこの絆創膏を替えようとソファに座らせた。剥がすとこれは…事故ではなく故意のもの。引っかき傷であることは明らかだった。
もう一度洗浄し、湿潤療法に切り替えた。
「お風呂入ってからちゃんと処置した方が良いだろうって、保志先生が言ってた」
「うん、確かに」
それに、この傷を僕に見せたかった、そんな意図も感じられる。
ぼんやりとしているような何か考えているような、どちらともつかない海人の表情が気になるが、午後の診察に戻らなければ。だけど、約束は守らせてもらおう。
「海人、お疲れさま」
口付けをするも、どこか反応の薄い海人が心配だった。
翌日、僕が保志先生のところで受診する日だ。
「行ってきます」
「気をつけて、行ってらっしゃい」
ぼんやりと言う海人。昨日の傷が痛々しいが、昨日よりは元気そうにみえた。
昨晩も僕を抱きしめながらも何だかんだ眠れてない海人がいた。海人が眠れないのが分かって僕も眠れなかった。自身で患者を受け持ち、真正面から向かい合うときの気持ちは分からないでもない。糸口が見つからないとずっと考えてしまう。
精神科医としての海人を育てるのは保志先生。僕は海人が無理をしないように見守ることしかできない。
呼び出しのベルが鳴り、診察室に入る。
「小椋さん…」
いつもの冷静な表情とは違う、保志先生の表情が気になった。
「どうされました?」
「ごめんなさい!」
深々と頭を下げられ、こちらの方が恐縮してしまった。
「えっ!えー、そんな!何か謝られるようなことがありましたか?」
「橘君、私がついていながら…監督不行き届きです。本当に申し訳ない…」
「怪我のことは…精神科医を目指すからには本人も分かっていることだと思います。大丈夫ですよ。」
「相当心配されたかと思って」
「怪我よりどちらかというと、何とかいうか…入り込み過ぎているような気がして心配ではあります。」
「溺れる人を助けるときに…」
真剣な表情で保志先生が話し始めた
「外から道具を使って助けようとする人もいれば、直接飛び込んで助けようとする人もいる」
「溺れる人が助かればどちらも間違いではない。だけど、後者は助ける側の人間のリスクもある。それと似たような事ですね」
「精神科医にもよくあることで、寄り添うことは間違いではないしベストなことなのだけど…、それで自分自身を壊してしまう子も見てきました。」
「橘君は根が優しいので、経験の浅い今は直球勝負を挑んでしまいがちですが、ああ見えて賢いのでどちらもバランスよく出来る子だと思ってます。良い方向に導きたいと思ってます…」
優しい表情になった保志先生。海人が大事にされていることが窺えてこちらまで笑顔になってしまう。
「でも…」
保志先生の表情がまた暗くなった。なんだろう…
「万が一、彼が溺れて沈んだ時は…」
想像だけで怖くなる。
「小椋さん、貴方が助けられる唯一の存在…かもしれませんね」
しばしの沈黙の後、「あら、いけない!今日は小椋さんの診察でしたね」
そう言っていつもの診察に戻った。
漠然とした不安が押し寄せる。僕は重要な何かを忘れているような気がしてきた。
菅野さんはあの時、何と言った?
キチク…何とか…キチクは鬼畜だろうけど、その先はよく聞き取れなかったし聞いたことのある言葉か定かでない。
表情を思い出す。憎しみのこもった瞳は怖い。最後は”い”?のような気がする。
あまり期待していないが、そんな言葉、あるだろうか。検索をかけてみる。
検索に引っかかった言葉とその意味を読み、息を飲んだ。全てのピースが菅野さんに当てはまる。
答えが見えた気がする。
保志先生が意図して僕の最初の患者さんに菅野さんをあてたのではないか…そんな気すらしてきた。
「…ただいま」
夕方、樹が診察の後、ちょっとした買い出しを済ませて帰ってきた。
「おかえり、ちょっと…行ってくるから車の鍵貸して」
「行ってくるって?!どこへ?」
「F大」
そう言うと樹の表情が曇り
「待って!」僕の顔を覗き込む。
「今じゃなきゃダメなの?明日朝一じゃダメな程の急患?」
「分かったんだ…、診断がついた」
「告知は一刻も争うもの?」樹の視線が僕を刺す。
「僕は一緒にいて欲しい…というのもあるけど、今は医師として訊いてる。」
樹の真剣な表情に、心配をかけていたことに気がついた。
「落ち着かないとは思うけど今日は休んで、明日に備えて…」
そっと抱きしめられ、頭を撫でられた。
「ごめん、樹…」
翌朝、樹はいつもと変わらず送り出してくれた。僕のことを気にかけてくれている。だけど、過剰になりすぎないように。
「保志先生、菅野さんの診断なんですが…」
「何かわかった?言ってごらんなさい」
「晩発性PTSD。恐らく、過去の戦争体験からくるものではないかと…ご本人は語られていませんが」
「根拠は?」
「年齢とあの時僕に投げかけられた言葉です。全部聞き取れた訳ではないのですが、口の形などから推察して、”鬼畜米英”と叫んだんです。その後”みんなを返せ””お前達が死ねばよかった”と言っています。夜間に夢で戦時中の追体験をしているのではと考えました。」
「そうね、私も同じ考えよ。じゃあ、診察進めて」
菅野さんは診察室に入るなり、僕に深々と頭を下げた。
「やはり、私が傷つけたのは橘先生だったのだね…覚えていないとはいえ申し訳ない」
身体拘束のICをとる際、保志先生は僕への暴力であったことは伏せていたのだが、察しの良い菅野さんは気がついていたようだ。
「へへ、これは棚に頭ぶつけちゃっただけですよ、それより今日は菅野さんの昔の話を聞かせてください」
「昔の…?」
第二次大戦が激化した1941年頃、菅野さんは医学校を繰り上げ卒業し軍医予備員となった。
親族や友人らを戦争で失う中、特攻隊訓練場の軍医となり、そこでの経験が現在の症状のきっかけとなったようだ。命を賭して戦地へ向かう若者と戦地へは行かない自分と…戦後、結婚し子どもを授かり、その後の人生は貧しさの苦労はあったものの家族寄り添い、幸せな生活を送ってきたという。時に医師として非人道的な行為もしたと語られ、この年齢まで生存している事に罪の意識を感じていたらしい。
晩発性PTSD、戦争体験をした高齢者に多く、菅野さんはこれに合致した。診断もつき、今後の治療方針も決まり、ひとまず安心する自分がいる。
だけど同時に、涙に流しながら語る菅野さんの細い肩に見えた歴史の闇が、僕の心の片隅の何かと絡みついて張り付いて離れない。
※鬼畜米英(きちくべいえい)...太平洋戦争中、日本でアメリカとイギリス(米英)を「鬼畜」と呼び蔑視し、敵愾心を煽るために使われたスローガンやプロパガンダ用語。
※晩発性PTSD...トラウマ体験から数十年を経過してから症状が現れるPTSD。
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