上 下
8 / 9

まさかの、探し求めていた人物

しおりを挟む
「ふう、やっと一人になれた」

私は庭園の死角に辿り着くとようやく一息ついた。
多分、二人がくっくつならば、私はそれでもいい。

それならば、私がやるべき事は他にあるのだ。
カルロスルートのバッドエンドへの道は、落とし穴が何度もある。それは第三王子であるカルロスを亡きものにしようとする勢力ーー第一王子だ。

まだ立太子していないため、同じく貴い血筋を持ち、その才を皆から認められているカルロスに醜く嫉妬している醜男。

それが公式の第一王子、フェルナンドだ。

スチルも一応あったが、バッドエンドの絵だけだ。
しかもプレイヤーの誰もがこのキャラは隠しキャラでは無いと断言出来るほどの…うん。まあいわゆるヒキニートのデブオタク的な。アレ。

ここまで似せない!?と私も驚いたものだ。
確か、私たちより三才年上だから、今年学園を卒業するはず。

今から、ゲームが始まる前のこの期間からフェルナンドに会って、何か行動を起こせば…もしくは私のゲーム知識を使ってフェルナンドの弱点を付いて再起不能にさせれば、ミモザは助かる確率が上がるはずだ。


小走りで庭園を駆け抜けて、王宮の中へ入る。第三王子の婚約者である私はある程度顔パスだ。ここらへんを歩いていても不振がられることもない。

「第一王子の部屋はどのへんかしら」

まさか、誰かに聞くわけにも行かないし。
困ったなぁ。これ以上いると迷子になりかねないから一旦帰ろう。

そう思って来た道を戻ろうとしたのだけど…ま、まったく道がわからない。
オロオロと立ち尽くす私の後ろに影が立つ。

「迷子になったのかい?」
「あ、はい…」

優しい問いかけに、焦りが消えて私はその影の方に振り向いて、息をのみこんだ。

「フェルナンド殿下…」

まさかの、探し求めていた人物そのものだった。
王族の証である銀の髪は見事だけれど、太めの体に吹き出物の多い顔。猫背が酷い背中。

みまちがう筈がない。
間違いなく、あのスチルで見たフェルナンドだ。


でも、目の前のこの人は、あんな非道なことをするようには見えない。自信は無さげではあるけれど、高慢な男には見えない。


ここから三年で何かあるのだろうか。
今からそれを変えたら、どうにか、ならないだろうか。

私もミモザもカルロスも、そして目の前の彼も。

初めて会うし、ゲーム内の印象は最低なのに、私は目の前で私に見つめられて頬を染めて、視線をはずしているこのフェルナンドを可愛いと思ってしまったのだ。



しおりを挟む

処理中です...