その推理、死者が「違う」と言ってます。~崖っぷち探偵の相棒は、イタコでした~

ズボンハクオ

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第6話 探偵 帰省する 中編

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新青森駅に降り立つと、そこはぼくたちが住んでいる場所とは別世界だった。 

「さむっ!! 相変わらず、青森の気温は『しばれる』なぁ……」

 「大袈裟ね。まだ十一月よ」

  凛は平気な顔をしているが、ぼくは寒くてガタガタ震えていた。  ここからは葵と別行動になる。

 「では、私はおばあちゃんが住んでいる弘前市に向かいます。……探偵さん、生きてまた会いましょう!!」 

 葵は戦場に向かう兵士のような敬礼をして、改札の向こうへと消えていった。

 「不謹慎な! 俺は酒とマグロのために死なないぞ!!」

  ぼくは改札越しの葵にガッツポーズを見せた。

 「やめなさい、恥ずかしいでしょ」

  凛にペシッと頭を叩かれ、ぼくたちはタクシーに乗り込んだ。

 凛の実家は、県内でも有数の立派な日本家屋だった。
門をくぐると、手入れの行き届いた日本庭園が広がる。 

「あ~……ぼくは生きて帰れるのか……」

自分の安否を気にする中、庭の奥から、ドスドスと地響きのような足音が聞こえた。

「凛! 帰ってきたか!」

現れたのは、熊のような大男。凛の父親だ。海外映画のアクションスターにも引けを取らない筋肉。いつでも獲物を仕留められそうな鋭い眼光。ぼくの生存本能アラートが鳴り止まない。

「久々だな! 小僧! 今日こそお前の命日にしてやる!」

ぼくは今日死ぬのであろうか。  だが、酒とマグロのために、ぼくは震える膝を抑え必死に虚勢を張った。

 「お、お久しぶりです! 今日も僕にご指導をお願いします!」

頑張って虚勢を張ったぼくの隣で、凛が突然、ぼくの腕にギュッと抱きついた。
そして、爆弾を投下した。

「お父さん! 私、この人と結婚するから」

「えっ!?」  

ぼくは驚きのあまり変な声が出た。 

「り……りん、凛さん!? えっ!?」 

 あまりの衝撃に「え!?」と「ん!?」の単語しか出てこない。  対するお父さんの反応は、劇的だった。

「結婚だとぉぉぉ!! 許さん! 許さんぞぉぉぉ!!」

熊のようなお父さんは、みるみるうちにタコのように顔を真っ赤に染めた。

 「坊主!! お前はガキの頃から気に入らなかったんだ! 今日こそはお前を殺す!!」
茹でダコ状態のお父さんは、庭にあった、自分より大きな岩を持ち上げた。 
あ、終わった。今日はぼくの命日だと思ったその瞬間。

「……あなた? 庭で何を騒いでいるの?」

玄関から、優しげな声が聞こえた。凛の母親だ。ニコニコと上品に微笑んでいるお方だが、その背後からは不動明王ごとき修羅のオーラが立ち上っている。このオーラを葵が見たら、恐怖で腰を抜かすのではないか。 

「お客様の前で、何を騒いでいるのかしら?」

お母さんは首をコテンと傾げた。

 「……静かにならないと、仕留めますよ?」
 
ニコニコとしているが、目は笑っていない。

「ひっ! ご、ごめんなさい!」

茹でダコお父さんは、岩をそっと地面に置くなり、狂暴なタコから従順な柴犬へと変貌した。

「た、ただいま……お母様……」 

「ええ。久しぶりですね、凛。……それから〇〇くんも。遠くからわざわざお越しいただいて。ささ、冷えるので中にお入りください」

 お母さんに促され、家の廊下を歩きながら、ぼくは悟った。  この家族では、お母様だけには絶対に逆らわないでおこう、と。
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