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第8話 探偵 いのち 狙われる 後編
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「お、俺……狙われてるんですか?」
ぼくは車の後部座席で、鬼柳にとぼけ顔で聞いた。
「うん、狙われてるよ。お前を相当憎んでる奴にな」
鬼柳はタバコの煙を吐き出し、他人事のように言った。
「ま、頑張れや」
鬼柳と四人の部下は、ぼくを事務所の前で降ろすと、風のように去っていった。 ぼくも探偵だ。命を狙われることなんて、よくあることではない! 冷静に対応しようと努めたが、ぼくの精神に余裕など微塵もなかった。
「か! 鍵かけろ! 二重にかけろ! なんならチェーンも南京錠も全部だ!」
事務所に戻るなり、ぼくはガタガタ震えながらありったけの鍵をかけた。さらに窓のカーテンを閉め切り、隙間という隙間にガムテープを目張りした。 部屋の隅で体育座りをして震えているぼくを、葵が呆れた目で見下ろしている。
「探偵さん、震えてますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけあるか!! 俺、命狙われてるんだぞ!!」
ぼくは涙目で訴えた。
「やばいって! 俺、本当に死んじゃうよ!」
その時だった。
ドンドンドン!!
ドアを激しく叩く音が響いた。
「ひいいいい!! き、来た! 殺し屋だ!!」
「あああん、もう! 鍵なんてかけちゃって、イヤン!」
メキメキッ!
嫌な音と共に、厳重にロックしたはずのドアが豆腐のようにぶち破られた。
入ってきたのは、身長二メートルはあろうかという、岩のような巨体。
丸太のような腕。はち切れんばかりの胸筋。
そしてバッチリ決まったメイクと、煌びやかなドレス。 屈強なオネエ様だった。
「え?」
葵が思考停止して固まる。
巨人はバチコーンとウィンクを飛ばした。
「お迎えに来たわよん!! 子猫ちゃんたち!」
「誘拐だあぁぁぁぁ!!」
ぼくと葵は、その丸太のような腕で米俵のように抱えられ夜の街へと連れ去られた。
連れてこられたのは、ネオン輝く繁華街の一角。
『ニューハーフパブ・くちどけ』
という、一度入ったら溶けてなくなりそうな恐ろしい看板の店だった。
「ほら、着いたわよ」
巨人に放り出され、ぼくたちは店の中へ転がり込んだ。
「銀次さん。なんで店に連れてきたの?」
ぼくがため息混じりに尋ねると葵が驚いた。
「探偵さん、お知り合いだったんですか?」
「あ~、この人も『友達』」
ぼくは諦めたように紹介した。
この巨人の源氏名はローズ。本名は源 銀次。 ここのお店のママさんであり、ぼくの数少ない友人の一人だ。
「ここに連れて来たってことは、もしかして」
ぼくは何かに気づき、店の奥にあるVIPルームへと向かった。ドアを開けると、そこには見慣れた二人が優雅にグラスを傾けていた。
「よう、遅かったな兄弟」
「ふふ、いいリアクションね、探偵!」
そこには、ヤクザの鬼柳と、刑事の凛の姿があった。葵が状況を飲み込めずにいると、凛が爆笑した。
「あはは! ごめんね葵ちゃん。あんたたちをここに連れてくるために、朝から二人にドッキリかけていたのよ」
鬼柳が葵の顔をじろりと見て、ニヤリと笑った。
「この子が探偵の相棒か。朝は驚かしてすまねぇな」
ヤクザの若頭が、女子高生(実は19歳)に頭を下げた。
葵が呆然と立ち尽くしている横で、ぼくは脱力してソファに沈み込んだ。
「つまり、こいつらがここにいるということは、朝、俺を誘拐したのも、土に埋めたのも、全部ドッキリだったということか」
ぼくはホッと胸を撫で下ろした。
「まったく、お前らは。じゃあ、あながち『俺の命を狙ってる』ってのも、ドッキリの嘘なんだろ?」
ぼくが笑い飛ばそうとした、その時。
「いや、それは本当だぞ」
鬼柳は高級なウイスキーを一口飲み、真顔で告げた。
「お前今、花崎コンツェルンに命を狙われている」
「…………」
ぼくの視界が真っ白になった。 ドサッ。 ぼくは白目を剥いて、その場に倒れた。
そう。 ぼくは本当に、命を狙われているらしい。
ぼくは車の後部座席で、鬼柳にとぼけ顔で聞いた。
「うん、狙われてるよ。お前を相当憎んでる奴にな」
鬼柳はタバコの煙を吐き出し、他人事のように言った。
「ま、頑張れや」
鬼柳と四人の部下は、ぼくを事務所の前で降ろすと、風のように去っていった。 ぼくも探偵だ。命を狙われることなんて、よくあることではない! 冷静に対応しようと努めたが、ぼくの精神に余裕など微塵もなかった。
「か! 鍵かけろ! 二重にかけろ! なんならチェーンも南京錠も全部だ!」
事務所に戻るなり、ぼくはガタガタ震えながらありったけの鍵をかけた。さらに窓のカーテンを閉め切り、隙間という隙間にガムテープを目張りした。 部屋の隅で体育座りをして震えているぼくを、葵が呆れた目で見下ろしている。
「探偵さん、震えてますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけあるか!! 俺、命狙われてるんだぞ!!」
ぼくは涙目で訴えた。
「やばいって! 俺、本当に死んじゃうよ!」
その時だった。
ドンドンドン!!
ドアを激しく叩く音が響いた。
「ひいいいい!! き、来た! 殺し屋だ!!」
「あああん、もう! 鍵なんてかけちゃって、イヤン!」
メキメキッ!
嫌な音と共に、厳重にロックしたはずのドアが豆腐のようにぶち破られた。
入ってきたのは、身長二メートルはあろうかという、岩のような巨体。
丸太のような腕。はち切れんばかりの胸筋。
そしてバッチリ決まったメイクと、煌びやかなドレス。 屈強なオネエ様だった。
「え?」
葵が思考停止して固まる。
巨人はバチコーンとウィンクを飛ばした。
「お迎えに来たわよん!! 子猫ちゃんたち!」
「誘拐だあぁぁぁぁ!!」
ぼくと葵は、その丸太のような腕で米俵のように抱えられ夜の街へと連れ去られた。
連れてこられたのは、ネオン輝く繁華街の一角。
『ニューハーフパブ・くちどけ』
という、一度入ったら溶けてなくなりそうな恐ろしい看板の店だった。
「ほら、着いたわよ」
巨人に放り出され、ぼくたちは店の中へ転がり込んだ。
「銀次さん。なんで店に連れてきたの?」
ぼくがため息混じりに尋ねると葵が驚いた。
「探偵さん、お知り合いだったんですか?」
「あ~、この人も『友達』」
ぼくは諦めたように紹介した。
この巨人の源氏名はローズ。本名は源 銀次。 ここのお店のママさんであり、ぼくの数少ない友人の一人だ。
「ここに連れて来たってことは、もしかして」
ぼくは何かに気づき、店の奥にあるVIPルームへと向かった。ドアを開けると、そこには見慣れた二人が優雅にグラスを傾けていた。
「よう、遅かったな兄弟」
「ふふ、いいリアクションね、探偵!」
そこには、ヤクザの鬼柳と、刑事の凛の姿があった。葵が状況を飲み込めずにいると、凛が爆笑した。
「あはは! ごめんね葵ちゃん。あんたたちをここに連れてくるために、朝から二人にドッキリかけていたのよ」
鬼柳が葵の顔をじろりと見て、ニヤリと笑った。
「この子が探偵の相棒か。朝は驚かしてすまねぇな」
ヤクザの若頭が、女子高生(実は19歳)に頭を下げた。
葵が呆然と立ち尽くしている横で、ぼくは脱力してソファに沈み込んだ。
「つまり、こいつらがここにいるということは、朝、俺を誘拐したのも、土に埋めたのも、全部ドッキリだったということか」
ぼくはホッと胸を撫で下ろした。
「まったく、お前らは。じゃあ、あながち『俺の命を狙ってる』ってのも、ドッキリの嘘なんだろ?」
ぼくが笑い飛ばそうとした、その時。
「いや、それは本当だぞ」
鬼柳は高級なウイスキーを一口飲み、真顔で告げた。
「お前今、花崎コンツェルンに命を狙われている」
「…………」
ぼくの視界が真っ白になった。 ドサッ。 ぼくは白目を剥いて、その場に倒れた。
そう。 ぼくは本当に、命を狙われているらしい。
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