26 / 53
第11話 探偵 初めての推理ショー 中編
しおりを挟む
女性がバッグから取り出した古い紙。 そこには、達筆な文字でこう書かれていた。
『少女達の血を全て飲み干すとき 解放された亡霊たちの 歌声が響くであろう』
「ひぃ!!」
文面を読んだ葵が、青ざめて悲鳴をあげた。
「しょ、少女達の血!? まさか本当に、女の子たちが生贄に!?」
葵がガタガタ震えている隣で、探偵もまた、小刻みに震えていた。 ただし、それは武者震いだった。
「こ、これだよ! 葵くん! 俺が求めていたものはこれだ!」
探偵は紙を見るやいなやニヤけ出し、依頼人の手を取った。
「すぐ現場に連れて行ってください! 謎が俺を呼んでいる!」
探偵は依頼人と葵の手を引き、事務所の外へと飛び出した。
現場の別荘に到着したのは、午後4時を回った頃だった。 辺りは深い森に囲まれ、カラスが不吉に鳴き始め、空が赤黒い夕焼けへと変わっていく時間帯だ。そこはまるで中世ヨーロッパに存在してそうなお城のようだった。
「探偵さん、怖いです、ここ」
葵はガタガタ震えながら、ぼくの背中に隠れた。
「何を言ってるんだい葵くん。推理だよ、推理! これをやらなくて何が探偵だい! それに君、幽霊が見えるんだから、今更怖いものなんてないでしょ!」
探偵は遠足に来た子供のように目をキラキラさせていた。
「おっと、肝心なことを聞くのを忘れてた。お姉さん、この紙は誰が書いたんですか?」
「今さらかよ!」
葵は的確なツッコミを入れた。
女性はきょとんとした後、静かに語り始めた。
「はい。これは祖父が亡くなる前に、家族に渡した最後の手紙です。祖父はこの別荘が大好きで、最期までここで過ごしていました。それを知っていた親族たちが遺産を狙って探しに来たのですが、誰も見つけられず」
「お姉さんは、遺産が欲しいのですか?」
葵が少しこわばった表情で尋ねた。
「いいえ。私は遺産よりも、祖父が何を残したのかが気になって、なぜこんな難しい暗号を書いたのか、知りたいんです」
依頼人は僕たちに深く頭を下げた。
「お願いします。この謎を解いて、祖父の想いが知りたいです。」
その目には涙が浮かんでいた。
「わかりました。頭を上げて下さい。一緒におじいさんの想いを見つけましょう」
探偵はキリッとした顔で依頼人を慰め、館の中へと足を踏み入れた。
しかし、一歩中に入った瞬間、僕たちは絶句した。 別荘の中は、一面「女の子の人形」で埋め尽くされていたのだ。
和風な日本人形から、洋風なビスクドールまで。数百体の人形が、虚ろな瞳でこちらを見つめていた。
「ぎゃああーー!!」
探偵と葵の悲鳴が重なった。
「せ、生前、祖父は人形と音楽が大好きで色んな時代の人形を集めては、ここで親族に披露していたんです」
依頼人が冷静に説明する横で、探偵はすっかり腰が引けていた。
「あ、葵くんこ、ここからは現場を詳しく調べる時間だよ」
さっきまでの威勢はどこへやら、探偵は葵を盾にして進んだ。
大広間、音楽室、寝室、中庭、客間。 くまなく探してみたが、それらしいものは何一つ見つからなかった。
「この中に文の示す何かがあるのかい? もしかしたら違う場所じゃないか?」
探偵は半ば諦めムードで窓の外を眺めた。
「そうかもしれませんね、すみません、無駄な仕事をさせてしまって」
依頼人は申し訳なさそうな表情でうつむいた。
「しかし、あったとしてそれが何に、あっ!」
探偵の視線が、窓の外にある「噴水」に釘付けになった。 夕日に照らされた噴水には、少女の石像が立っている。
「わかったぞ! 謎が解けた!」
探偵は思わず飛び跳ねた。
「本当ですか!?」
依頼人は喜びを隠せない。探偵はビシッと窓の外を指差した。
「いいですか。今回の謎、あの噴水の中にあります! 『少女が血を飲み干す』、つまり夕日が反射して赤く染まった噴水の水を、全て抜いて『飲み干す』と遺産が出るという意味です! そして『亡霊の歌声』とは、あそこで鳴いているカラスのこと。『七つの子』という歌もありますからね!」
探偵が得意満面で推理を披露していると、隣で葵が冷めた声で呟いた。
「探偵さん。その推理、間違ってますよ」
「なに? なぜだ葵くん。完璧な推理だろ? どこが間違ってる?」
探偵が不満げに問い詰めると、葵は何もない空間を見つめながら言った。
「間違ってるって、ここにいるおじいちゃんの霊が言ってます」
「え!? ご本人が?」
『少女達の血を全て飲み干すとき 解放された亡霊たちの 歌声が響くであろう』
「ひぃ!!」
文面を読んだ葵が、青ざめて悲鳴をあげた。
「しょ、少女達の血!? まさか本当に、女の子たちが生贄に!?」
葵がガタガタ震えている隣で、探偵もまた、小刻みに震えていた。 ただし、それは武者震いだった。
「こ、これだよ! 葵くん! 俺が求めていたものはこれだ!」
探偵は紙を見るやいなやニヤけ出し、依頼人の手を取った。
「すぐ現場に連れて行ってください! 謎が俺を呼んでいる!」
探偵は依頼人と葵の手を引き、事務所の外へと飛び出した。
現場の別荘に到着したのは、午後4時を回った頃だった。 辺りは深い森に囲まれ、カラスが不吉に鳴き始め、空が赤黒い夕焼けへと変わっていく時間帯だ。そこはまるで中世ヨーロッパに存在してそうなお城のようだった。
「探偵さん、怖いです、ここ」
葵はガタガタ震えながら、ぼくの背中に隠れた。
「何を言ってるんだい葵くん。推理だよ、推理! これをやらなくて何が探偵だい! それに君、幽霊が見えるんだから、今更怖いものなんてないでしょ!」
探偵は遠足に来た子供のように目をキラキラさせていた。
「おっと、肝心なことを聞くのを忘れてた。お姉さん、この紙は誰が書いたんですか?」
「今さらかよ!」
葵は的確なツッコミを入れた。
女性はきょとんとした後、静かに語り始めた。
「はい。これは祖父が亡くなる前に、家族に渡した最後の手紙です。祖父はこの別荘が大好きで、最期までここで過ごしていました。それを知っていた親族たちが遺産を狙って探しに来たのですが、誰も見つけられず」
「お姉さんは、遺産が欲しいのですか?」
葵が少しこわばった表情で尋ねた。
「いいえ。私は遺産よりも、祖父が何を残したのかが気になって、なぜこんな難しい暗号を書いたのか、知りたいんです」
依頼人は僕たちに深く頭を下げた。
「お願いします。この謎を解いて、祖父の想いが知りたいです。」
その目には涙が浮かんでいた。
「わかりました。頭を上げて下さい。一緒におじいさんの想いを見つけましょう」
探偵はキリッとした顔で依頼人を慰め、館の中へと足を踏み入れた。
しかし、一歩中に入った瞬間、僕たちは絶句した。 別荘の中は、一面「女の子の人形」で埋め尽くされていたのだ。
和風な日本人形から、洋風なビスクドールまで。数百体の人形が、虚ろな瞳でこちらを見つめていた。
「ぎゃああーー!!」
探偵と葵の悲鳴が重なった。
「せ、生前、祖父は人形と音楽が大好きで色んな時代の人形を集めては、ここで親族に披露していたんです」
依頼人が冷静に説明する横で、探偵はすっかり腰が引けていた。
「あ、葵くんこ、ここからは現場を詳しく調べる時間だよ」
さっきまでの威勢はどこへやら、探偵は葵を盾にして進んだ。
大広間、音楽室、寝室、中庭、客間。 くまなく探してみたが、それらしいものは何一つ見つからなかった。
「この中に文の示す何かがあるのかい? もしかしたら違う場所じゃないか?」
探偵は半ば諦めムードで窓の外を眺めた。
「そうかもしれませんね、すみません、無駄な仕事をさせてしまって」
依頼人は申し訳なさそうな表情でうつむいた。
「しかし、あったとしてそれが何に、あっ!」
探偵の視線が、窓の外にある「噴水」に釘付けになった。 夕日に照らされた噴水には、少女の石像が立っている。
「わかったぞ! 謎が解けた!」
探偵は思わず飛び跳ねた。
「本当ですか!?」
依頼人は喜びを隠せない。探偵はビシッと窓の外を指差した。
「いいですか。今回の謎、あの噴水の中にあります! 『少女が血を飲み干す』、つまり夕日が反射して赤く染まった噴水の水を、全て抜いて『飲み干す』と遺産が出るという意味です! そして『亡霊の歌声』とは、あそこで鳴いているカラスのこと。『七つの子』という歌もありますからね!」
探偵が得意満面で推理を披露していると、隣で葵が冷めた声で呟いた。
「探偵さん。その推理、間違ってますよ」
「なに? なぜだ葵くん。完璧な推理だろ? どこが間違ってる?」
探偵が不満げに問い詰めると、葵は何もない空間を見つめながら言った。
「間違ってるって、ここにいるおじいちゃんの霊が言ってます」
「え!? ご本人が?」
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる