その推理、死者が「違う」と言ってます。~崖っぷち探偵の相棒は、イタコでした~

ズボンハクオ

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第11話 探偵 初めての推理ショー 中編

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女性がバッグから取り出した古い紙。  そこには、達筆な文字でこう書かれていた。

『少女達の血を全て飲み干すとき  解放された亡霊たちの  歌声が響くであろう』

「ひぃ!!」

  文面を読んだ葵が、青ざめて悲鳴をあげた。 

「しょ、少女達の血!? まさか本当に、女の子たちが生贄に!?」  

葵がガタガタ震えている隣で、探偵もまた、小刻みに震えていた。  ただし、それは武者震いだった。

「こ、これだよ! 葵くん! 俺が求めていたものはこれだ!」

 探偵は紙を見るやいなやニヤけ出し、依頼人の手を取った。 

「すぐ現場に連れて行ってください! 謎が俺を呼んでいる!」

 探偵は依頼人と葵の手を引き、事務所の外へと飛び出した。

 現場の別荘に到着したのは、午後4時を回った頃だった。  辺りは深い森に囲まれ、カラスが不吉に鳴き始め、空が赤黒い夕焼けへと変わっていく時間帯だ。そこはまるで中世ヨーロッパに存在してそうなお城のようだった。

「探偵さん、怖いです、ここ」  

葵はガタガタ震えながら、ぼくの背中に隠れた。 

「何を言ってるんだい葵くん。推理だよ、推理! これをやらなくて何が探偵だい! それに君、幽霊が見えるんだから、今更怖いものなんてないでしょ!」

探偵は遠足に来た子供のように目をキラキラさせていた。

「おっと、肝心なことを聞くのを忘れてた。お姉さん、この紙は誰が書いたんですか?」

 「今さらかよ!」  

葵は的確なツッコミを入れた。

 女性はきょとんとした後、静かに語り始めた。 

「はい。これは祖父が亡くなる前に、家族に渡した最後の手紙です。祖父はこの別荘が大好きで、最期までここで過ごしていました。それを知っていた親族たちが遺産を狙って探しに来たのですが、誰も見つけられず」

 「お姉さんは、遺産が欲しいのですか?」

  葵が少しこわばった表情で尋ねた。 

「いいえ。私は遺産よりも、祖父が何を残したのかが気になって、なぜこんな難しい暗号を書いたのか、知りたいんです」

  依頼人は僕たちに深く頭を下げた。

 「お願いします。この謎を解いて、祖父の想いが知りたいです。」

その目には涙が浮かんでいた。

「わかりました。頭を上げて下さい。一緒におじいさんの想いを見つけましょう」

探偵はキリッとした顔で依頼人を慰め、館の中へと足を踏み入れた。

 しかし、一歩中に入った瞬間、僕たちは絶句した。  別荘の中は、一面「女の子の人形」で埋め尽くされていたのだ。 

和風な日本人形から、洋風なビスクドールまで。数百体の人形が、虚ろな瞳でこちらを見つめていた。

「ぎゃああーー!!」  

探偵と葵の悲鳴が重なった。

「せ、生前、祖父は人形と音楽が大好きで色んな時代の人形を集めては、ここで親族に披露していたんです」

 依頼人が冷静に説明する横で、探偵はすっかり腰が引けていた。 

「あ、葵くんこ、ここからは現場を詳しく調べる時間だよ」

 さっきまでの威勢はどこへやら、探偵は葵を盾にして進んだ。

 大広間、音楽室、寝室、中庭、客間。  くまなく探してみたが、それらしいものは何一つ見つからなかった。

「この中に文の示す何かがあるのかい? もしかしたら違う場所じゃないか?」

 探偵は半ば諦めムードで窓の外を眺めた。 

「そうかもしれませんね、すみません、無駄な仕事をさせてしまって」

 依頼人は申し訳なさそうな表情でうつむいた。 

「しかし、あったとしてそれが何に、あっ!」

 探偵の視線が、窓の外にある「噴水」に釘付けになった。  夕日に照らされた噴水には、少女の石像が立っている。

「わかったぞ! 謎が解けた!」

探偵は思わず飛び跳ねた。 

「本当ですか!?」 

依頼人は喜びを隠せない。探偵はビシッと窓の外を指差した。

「いいですか。今回の謎、あの噴水の中にあります! 『少女が血を飲み干す』、つまり夕日が反射して赤く染まった噴水の水を、全て抜いて『飲み干す』と遺産が出るという意味です! そして『亡霊の歌声』とは、あそこで鳴いているカラスのこと。『七つの子』という歌もありますからね!」


 探偵が得意満面で推理を披露していると、隣で葵が冷めた声で呟いた。

「探偵さん。その推理、間違ってますよ」

 「なに? なぜだ葵くん。完璧な推理だろ? どこが間違ってる?」

探偵が不満げに問い詰めると、葵は何もない空間を見つめながら言った。

「間違ってるって、ここにいるおじいちゃんの霊が言ってます」

「え!? ご本人が?」
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