その推理、死者が「違う」と言ってます。~崖っぷち探偵の相棒は、イタコでした~

ズボンハクオ

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第16話 探偵 作戦会議 前編

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車は市街地を抜け、ひとけのない深い森の中へと滑り込んだ。  木々を抜けた先に現れたのは、ツタに覆われた古びた洋館だった。

「着いたぞ! 葵ちゃん、心の準備はいいかい?」  

鬼柳がリモコンを操作すると、重く固い扉から「カチッ」と電子ロックが開く音が聞こえた。 

「も、もしかしてここが!」  

葵が車から降り、目を輝かせて館の中へ飛び込んだ。

 しかし。  中に入ると、そこは外観からは想像がつかないほど「普通」だった。  コンクリート打ちっぱなしの壁はオシャレだが、置いてあるのはソファーにテレビ、そして家庭用の冷蔵庫。  まるで、独身男性の殺風景なワンルームだ。

「あれ?」  

葵の動きが止まった。 

「ここって本当にARROWSの基地なんですか? 銃とか、巨大モニターとか想像してたより、随分と生活感があるというか」  

葵は期待が大きかった分、肩を落としてガッカリしていた。

「ククッ。葵ちゃん、ここはあくまでダミーの『休憩室』さ」

 鬼柳はニヤリと笑い、キッチンの冷蔵庫に手をかけた。 

「本当の入り口は、こっちだ」

 鬼柳が冷蔵庫の扉を開けるとなんと、そこには食材ではなく、地下深くへと続く螺旋階段が現れたのだ!

「冷蔵庫が入り口!? これ、映画で見た!!」

 葵のテンションがV字回復した。  階段を降りていくと、そこには想像を遥かに超える空間が広がっていた。  壁一面の武器庫、スーパーコンピューターのサーバー、そして見たこともない改造車の数々。

「ええええええ!!! 地下にこんな施設が! 推しの組織の裏側を見れて眼福ですぅぅ!!」  

葵が目を輝かせてはしゃぎ回る隣で、ぼくは呆れ顔で溜息をついた。 「全く。遠足じゃないんだぞ……」

「久しいのぅ! 今は『探偵』と呼んだほうがいいか?」

 部屋の奥、司令官席のような椅子に座っていたのは、70代くらいの小柄な老人だった。  仙人のように白くて長い髭を生やしているが、対照的に頭頂部の髪の毛は完全に死滅し、ツルリと輝いている。

「お! 霧夢ゆむじーさんか。久しぶりだな、まだ生きていたか!」 

「フォッフォッフォ。まだしぶとく生きておったわい。お主もまた大事件に巻き込まれて、人生楽しそうじゃの!」

 老人は探偵の皮肉を、さらに上乗せした皮肉で返した。

「探偵さん、このおじいちゃんはどなたですか?」 

「この人ね。このハゲはね、この人はARROWSの創設者、斎藤 霧夢さいとう りむじーちゃんだよ!」

 葵の思考が停止した。 

「えええ!!!!! このツルツルのおじいちゃんが創設者!?」  

あまりの衝撃と興奮(と失礼さ)で、葵は白目を剥いてその場に失神してしまった。 

「あ、葵くん!?」

「ほぅ、この娘さんが、あの『イタコ』の孫かえ?」

 じーさんは倒れた葵を興味深そうに覗き込んだ。 

「じーさん、葵のお婆さんの事を知ってたのか?」

 「まぁ、昔色々あってな」  

じーさんは遠い目をしながら、しみじみと語り始めた。 

「実はな、この子はワシの孫なんじゃよ!」

「はぁぁぁ!?」  

探偵は驚きで言葉が出なかった。まさかの血縁関係!? 

「まぁ、嘘じゃがな」 

「嘘かよ!! 紛らわしいんだよこのクソジジイ!」  

探偵はじーさんに向かい、全力でツッコミを入れた。

 そんな漫才のようなやり取りをしていると、背後の階段から聞き馴染みのある声が聞こえた。

「相変わらず、緊張感のない人たちね」

 「あらん、いつもの漫才じゃない」

 降りてきたのは、ローズと凛だった。  

 「ここがARROWSの基地なのね。初めて来たわ」  

凛は物珍しそうに周囲を見渡してから、床に転がっている葵に気づいた。 

「で、なんで葵ちゃんは倒れているの?」 

「大丈夫。ただの『興奮による失神』だ。放っておけば治る」  

ぼくは適当に説明した。

「よし。役者は揃ったようじゃな」  

じーさんが指で机を突くと、部屋中の巨大モニターが一斉に起動した。  映し出されたのは、花崎コンツェルンの本社ビル『ハナザキ・タワー』の設計図だ。

「それでは、反撃の作戦会議を始めようかの!」

 じーさんの号令が響く。  しかし、肝心の「相棒」である葵は、まだ幸せそうな顔で気絶したままだった。
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